表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

序章

 近年、〝メモリアルトラベラー〟という仕事が注文を浴びている。

 過去の記憶を上書きすることを手伝う仕事だ。


 現在25歳の野田悠介のだゆうすけも、大学卒業後、メモリアルトラベラー養成講座を受講し、一年間の臨床研修の後、この春、独立した。



 人間には二種類の記憶保存の仕方がある。これは人によって異なる。


 1.記憶を一つのフォルダに保存し、順次上書きをしていくもの。

 2.事柄ごとにフォルダが存在し、記憶を選別して各フォルダに保存していくもの。


 後者の場合、過去の記憶が何年経っても鮮明に思い出せる。そのため、楽しい記憶も色褪せないが、トラウマも残りやすい。そして「あの時、こうしていれば……」とか「何であんなことしたんだろう……」と、後悔することもしばしばだ。


 後悔に苛まれる人の人生を支える職業として、メモリアルトラベラーは生まれた。

 メモリアルトラベラーができることは一つだけ。

 催眠術のようなメモリアル術を用いて、記憶を過去の後悔に繋がっている時点に戻すこと。


 メモリアルトラベラー参加者は、その戻った記憶の中で、やり直しを試みることができる。

 現在に戻った時、現状に影響や変化が見られるか否かは人によって異なる。それでもメモリアルトラベラーに参加したいという人は、右肩上がりに増えている。


 今日の参加者はどんな過去に戻りたいのだろう。

 悠介はそう思いながら制服に着替える。医療や鍼灸のような施術を施す訳ではないが、メモリアルトラベラーの制服は、どこか医療関係者が身につける、スクラブに似ている。

 

 メモリアル術を行う部屋の窓を開ける。

 今日もいい天気だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ