青い炎の刺客
「なあベルティネ、もし良かったらみんなで僕たちの国に旅行しないかい?」
エリオットはベルティネにそう提案してみた。
この日、ベルティネの舎弟たちに多くのケガ人がでてしまったのだ。
理由は二カ所でケンカ沙汰が同時発生したことだった。
一方はベルティネが活躍して圧勝。
しかしもう一方は敗北してしまったのだ。
戦いに百戦百勝なんてことはあり得ない。
まして戦場が複数になれば戦力はどうしたって分散してしまう。
ベルティネがいつでもどこでも参加するというわけにはいかないのだった。
「アタシらにケツまくって逃げろっていうのかよ」
「そうじゃないよ、旅行さ。ケンカばかりしている今の里はちょっとおかしい。
もっと楽しいことをして見聞を広めたほうがいいと思うんだ」
「フンッ」
建設的な良案のつもりで言ったのだが、ベルティネは不満そうに鼻を鳴らしてどこかへ行ってしまった。
「失敗か……」
エリオットも腕を組んで鼻を鳴らす。
目の前に複数のケガ人がいた。
幸い治らないレベルのケガはしていない、だが致命傷を負う者もいつかは出てくるだろう。
ベルティネは強い。
だが彼女が率いる他の者たちは寄せ集めのチンピラ集団で、その強さはまちまちだった。
「まるで野戦病院だ」
傷の痛みにうめいているケガ人たちを、シャーロットやエレンシアたちが介抱していた。
軍人でもないのに軍人みたいなことをさせられている彼ら『緋炎』の氏族たち。
このままだと彼らだけではなく氏族全体が大変なことになる。
早いうちにこの内乱を鎮める手だてがあれば良いのだが。
しかし、せめて目の前にいる人たちだけでもとベルティネに提案してみても、あっさり却下されてしまう。
社会に対して個人でできることなんてたかが知れている。
分かってはいたものの無力感を抱かずにはいられない。
「イテテ……姐さんは優しいから……」
舎弟の一人が話しかけてきた。
「自分がみんなを守ってやるんだって、そんなこと思ってるんだ、たぶん」
「みんなというと、氏族のみんなという意味かい?」
「ああ。姐さんならやれるんじゃねえかって、みんなそう思ってる」
傷が痛むらしく、その男はそれっきり黙ってしまう。
「根がいい人なのは分かるよ」
あまりに若すぎるが、そばに支えてくれる存在がいれば大した問題にはならない。
強い力と真っ直ぐな心。得難いそれを持っていることが重要だ。
そんなこんなで時を過ごしていると、ふいに来客が訪れた。
「フン、小娘は留守か?」
超高温の青い炎を連想させる、うすい青髪の妖精。
目のまわりに陰険そうな隈のある、危険な匂いのする男性だった。
「出直すとしよう。運が良かったな貴様ら」
「なんだぁテメエ? スカしてんじゃねえぞコラ」
よせばいいのに舎弟の一人がからんでいった。
「テメエも姐さんをやって名前を売ろうってチンピラだなあ?」
「違う」
青髪の男は舎弟のノドをつかみ上げると、青い炎で燃え上がらせた。
「ギャアアアア!!」
「復讐に来たんだよ。大事な大事な族長を半殺しにされた復讐にね」
復讐を口にしながら、男は楽しそうな笑みを浮かべていた。




