暗闇に没す
『緑翆』の警備員たちに連行された四人。
城の裏口から内部へ。
武器を取り上げられ、 問答無用で投獄されてしまった。
エリオットは地下のせまい牢屋に閉じ込められてしまう。
他の三人がどうなったか分からない。
「まいったな。大人しい氏族が聞いてあきれる」
ひとり言をつぶやき、エリオットは牢の構造をチェックした。
木造、というか例の蔓植物を育てた部屋なのだろう。
人が作った家のように板と板の継ぎ目みたいなものがなく、壁も床も天井も一つの木でできている。
瓢箪の中で暮らしたらこんな雰囲気だろうかと感じた。
牢屋の頑丈な出入口まではさすがに再現できないようで、他の木で作ったぶ厚い木戸でふさがれている。
木戸には枝が格子状にはめ込まれていて、これが通気口と監視窓を兼用していた。
ここから出るためには木戸を破るか、あるいは壁を破壊するか。
どちらにせよ明るいうちに行動するのは無理がある。
動くなら深夜だ。
閉じ込められている間に仲間三人がひどい目にあう可能性もある。
だがこの状態ではどうにもならない。
無事を祈ることしかできなかった。
それより今はどうやって脱出するか、そこに知恵と力を使おう。
エリオットはまず壁と木戸を調べた。
魔法を使えば破壊はできるかもしれない。
だが大音を出せばあっという間に城兵があつまってくるだろう。
それは良くない。
次に木戸の格子を調べた。
タテとヨコに組み合わされたたくさんの木の枝。
隙間の幅はおよそ10センチメートル四方しかない。
「……もしかして、アレならいけるかも?」
エリオットは古くて汚れたベッドに横たわり、魔法の練習をはじめた。
偶然身につけた『アレ』をもっと上手に使えば、目立たずに脱出できるかもしれない。
なにはともあれ実験だ。
『蒼天』の族長エレオノーラも言っていた、常識にとらわれるなと。
エレオノーラは竜や火の鳥に変身してみせた。
エリオットの心を常識の鎖から解放するため、命を危険にさらしてまで見せてくれたのだ。
きっと自分にだってできる。やってみせる。
エリオットは眠るような姿勢で瞑想をつづけた。
彼をつつむ空色の魔力が少しずつ変化していく……。
やがて日が没し、牢内は完全な暗闇となる。
自分の手足すら見えないような真の暗闇。
そこに不審な客が訪れた。
人数は三人。
覆面で顔をかくしており、正体は不明。
三人は静かに木戸をあけ侵入してくる。
狭い部屋だ、侵入者たちはすぐ横たわるエリオットの前に立った。
エリオットは眠っているようだ。
侵入者たちは無言で両手をかざし、三人同時に魔法でエリオットを攻撃した。
ズドッ! ズドッ! ズドッ!
黄金色の魔力がエリオットの頭や胸を簡単に貫く。
不意をつかれたエリオットは、まったく抵抗できずに死亡した。




