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女装の達人 ~姫騎士エリオットの㊙報告書~  作者: 卯月
熱戦! 仮面武闘会!

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144/282

優勝を祝して

 意識不明で寝込んでいたオスカーが無事目覚めた。

 それで延期になっていた優勝者をたたえるイベントをようやく実行できる運びとなる。


 本来は仮面武闘会の会場ですぐさま素顔をさらして喝采かっさいを浴びる予定だったが今さらそうもいかないので、代わりといっては何だが謁見えっけんで国王陛下に素顔を見せることとなった。

 見せる人数は大きく減ったが、名誉そのものは大幅おおはばに上がったことになる。


 ……まあ実のところ以前国王がお忍びで城を抜け出した時、一緒に行動をしたことがあるので、すでに知っている間柄あいだがらなのだが。

 ともかくオスカーが優勝したことで国王派は権威をしめすことに成功し、公爵派の勢力拡大を阻止そしすることに成功した。

 貴族や豪商といった有力者集団は誰もが強いほうになびく浮気性の集団なので、力強さをアピールできたことは喜ばしい。


 ここでもう一つ、列席する貴族たちに向けて王国派からサプライズを用意することにした。

 王国派にも妖精族の友人がいるところを見せてやろうというものだ。

 妖精族とつながりがあるのは公爵家だけではない。

 国王とその側近たちも繋がりを持っているのだと知らしめてやる。

 政治的パワーバランスをたもつための配慮はいりょだ。




 吉日を選んで祝勝式はとりおこなわれた。

 絢爛豪華けんらんごうか謁見えっけん

 その最奥の玉座に座るのはもちろんグレイスタン王国国王ヴィクトル・グレイウッド二世だ。

 左右に貴族と武官・文官たちがならぶ。

 一番上位にはドルトネイ公爵の姿もあった。彼は苦虫をかみつぶしたような表情で不快感をあらわにしている。

 中央の赤い絨毯じゅうたんの上にはただ一人、狼の仮面をつけたオスカー・プレストンが片膝かたひざをついてひざまずいていた。


 大会執行委員長であり、実は上司でもあるハワード・ファルセット侯爵がオスカーに声をかける。


「狼の仮面の者よ、その仮面をとるがいい。

 王に拝謁はいえつする栄誉をあたえる」


 オスカーは言われるまま仮面をとる。

 精悍せいかんな若者の顔があらわになった。


「名乗りたまえ。優勝者の特権である」

「はっ! 私は王国騎士団情報部所属の騎士、オスカー・プレストンであります!」


 ザワッ。


 居並いならぶ諸侯がざわめいた。

 情報部といえば国王派のスパイ組織である。

 コソコソとした小細工こざいくが得意な連中で、戦闘は不得意というのが世間の評価であった。

 今、その悪評が優勝という一番わかりやすい実績によってくつがえったのである。


「大義であった!」


 国王が持ち前の大声で賞賛しょうさんする。

 

恐悦至極きょうえつしごくに存じます」


 オスカーは再び深々と頭を下げた。

 これで退席すれば無事終わりなのだが、国王が余計なことを言ってしまう。


「んん? 貴様なんだか見覚えがあるぞ? そうだ城を抜け出してマルカムをぶった切った時だ! そうだろう!」

「は、はいその通りです」


 そのひと言に一部の者たちの空気がピリッ! と攻撃的になる。

 空気を変えたのは公爵派の者たちだ。

 かつてマルカム準男爵という男がこの国にいた。

 徒手空拳の外国人でありながらたった一代で大商人となり準男爵の身分まで手にいれた男である。

 公爵家の便利な財布として活躍していた彼の不正をあばき追い落としたのが、他ならぬ国王その人であった。

 便利な財布を失った公爵派は、あの日からずっと資金難で苦しんでいる。


「やはりそうだったか! わっはっはっはっは!」


 なにも考えていない笑顔で大いに笑うヴィクトル二世。

 オスカーは思いもよらず上級貴族たちの恨みを買いながら退席することになってしまった。

 部下の去り行く背中を見ながらハワード侯は小さくつぶやいた。


「先に伝えてあったはずなんですがなあ……」


 今後良くないことが起こらなければいいが、などと思いつつ。

 次はリリスカ&エレンシアとの面会である。

 やたらと人類に対し攻撃的だった公爵派の十勇士たちとは違う、平和を愛する妖精族も居るのだというところを見せておきたい。


 ……ところが、まったく思いもよらぬ珍事件が発生してしまうのだった。

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