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女装の達人 ~姫騎士エリオットの㊙報告書~  作者: 卯月
熱戦! 仮面武闘会!

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イケメン高身長なのにフラれる理由

「なあエリーゼ、なにか欲しいものはないのか。

 俺はいずれすべてを手に入れる。

 ねだっておくなら今のうちだぞ?」


 眼下にひろがる予選風景などそっちのけで、アドリアンはエリーゼを口説いてくる。

 正直うんざりだ。

 それにこの男、やはりグレイスタン王国をまるごと手に入れるつもりらしい。

 彼らの人数的にそれは厳しいし、現在住んでいる公爵家とはどう決着をつけるつもりなのだろうか。

 どうも非現実的な夢を見ているように思える。


「まあ、どうでしょう?

 今はもっと売り上げを増やして一人前の商人になりたいですけど」

「またそれか。商人なんてくだらん、お前にそんないやしいマネは似合わんと言っているだろう」


 こうやって他者の生き方を安易に否定してくるのもマイナスポイントだ。

 愛されたいくせにトゲのある言葉。無自覚に相手を否定する。

 他者はこういう態度を『傲慢ごうまん』と受け取って避けるのだが、本人は気づいていない。

 いざ指摘すると「そんなつもりはない!」などとトンチンカンな返答をするのが目に見えていた。

『なにを言ったか』が問題なのであって『なにを思っているか』という問題ではないのだ。

「お前の職業はいやしい」などと言ってくる人物を愛するわけがない。

 こんなの普通のことだが本人だけが理解できない。

 そして忠告しても「そんなつもりはない!」としか返ってこないのだ。


 アドリアンはズイ、と顔を近づけてきた。

 美形ではある。

 そして妖精族の中でも特に優れた力を持つ男らしい。

 こんな自信過剰(かじょう)になってしまった理由はそんな所か。


「なあ言ってみろ、お前はなにが欲しい。

 俺が必ずかなえてやる」

「ホホホそうですねえ、では……身長」


 冗談めかして言ったが、本心だ。

 エリーゼにとって、いやエリオットにとって、身長以上に欲しいものなどこの世に存在しない。

 だが、アドリアンは予想通りの反応をしめした。


「身長……? 今以上に大きくなる必要なんてないだろう?

 お前は今のままで十分だぞ、身長なんて必要ない」

「…………」


 このひと言で究極レベルに終了した。

 ちなみにエリオットの身長は約150センチ。

 アドリアンは185センチくらいあるだろうか。

 イケメン高身長の恵まれた男に、エリオットの気持ちは永久に分からない。 


 はじめから決まりきっていたことだが、最終的な答えが出た。

 

(誰が貴様のような男と結婚なんてするかあ!!)


 アドリアンはフラれた。

 理由は相手の気持ちに鈍感どんかんだから。


 地上で熱い激戦がくり広げられていく中、人知れず一つの恋が破局した。

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