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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

見える者と見えざる物

作者: 直江真

皆さんも是非、見える・見えないを考えてみて下さい

俺は黄昏悠人(たそがれゆうと)。オカルトマニアである幼馴染の新出瑠衣(あらいでるい)に振り回される哀れな高校生一年である。


「ねえねえ、悠くん知ってるぅー?この近所に幽霊が出るって噂の建物があるんだってー!」


「耳元で大きな声を出さないでくれる?また俺まで変な人に見られちゃうだろ」


通学路で朝っぱらから馬鹿でかい声を張り上げる幼馴染に文句を言う。文句を言われた幼馴染はぶーぶーと口を尖らせて抗議していた。


ほら、あの子なんかコッチを指差して横にいる友達らしき人と会話してんじゃん。絶対ヤバいやつって言われてるよ…とほほほ。


「もう慣れた事だし良いじゃん!それよりもー」


正直、コイツとは幼稚園から中学生までの付き合いだったがまさか同じ高校までついて来るとは思わなかった。


彼女曰く、俺はモテるらしいから周りの牽制も兼ねて一緒にいるらしい。こちとら、それのせいで今まで彼女も出来た事はない。コイツが目を光らせている間は無理そうだ。


「あー、はいはい。分かったから、どうせ行きたいんだろ?学校終わったら付き合ってやるよ」


「絶対だからねっ!今すぐでも良いから早く来てね?私待ってるから〜!」


「いや、まだ早いと思うんだけど?!…て、もう居ない」


俺の幼馴染様は約束を取り付けたとなれば、一目散に学校へ走り去ってしまった。


昔から変わらないあの性格にもう苦笑するしかない。


(ホント、オカルトスポットとなれば元気が出るんだから付き合わされるこっちの身になって欲しい)


呆れて笑っていると後ろからべしっと背中を叩かれる。


振り返るとそこには高校から友達になった学校一のお調子者、天野夏彦(あまのなつひこ)だった。


「な〜に、疲れた顔してんだ!部活にも入ってない癖してさ。名前の通り黄昏てんじゃねぇよ!そんなんだから彼女すら出来ないんだ〜」


「なっ!それは言って良い事と悪い事があってだなぁ。俺だってその気になれば…」


「ムリムリ。悠人は年齢=彼女居ない歴だし、黙ってれば顔は良いのに変な奇行と廃墟ばかり行くから彼女のカも寄り付かないんだろ」


「お前も出来た事は無いって言ってただろうが!」


全く失礼な奴だよ、ホント。俺はまだその気になっていないだけで、その気になればコイツよりも早く作れる気がする。


俺はモテるらしいしなっ!


「そうさ、俺は出来た事はない。告白されても断っているからな。何処かの童貞君とはステージが違うのだよ」


「うぜぇ…それにど、ど、童貞ちゃうわ!お前よりも俺は進んで、進んで…アレ?なんか目から汗が…」


「学校の前で泣くな、泣くな。俺は写真のコンクールに送る絵を探して忙しい身だからな。絶対、今回は入賞するんだ!」


「そういえば、夏彦の親父さんはカメラマンだっけか?夏彦もなんか目指してるー!みたいなこと言ってたよな?」


「おう、去年は公園とかの風景画を撮ってたんだけどそれじゃあ、インパクトってもんがないのよ!もっと、こう、凄いって感じのを撮りたいんだよなぁ〜」


夏彦が鞄から年季の入ったカメラを取り出す。恐らくは親父さんの古いカメラを譲って貰ったんだろう。


味があってかっちょ良い。夏彦が少し羨ましくはある。


まあこの前、部活活動の一環だ!的な事を言って女子の部活動の写真を撮りまくって取り上げられたけど。


その時、写真のデータがぁ!って叫んでいたのを忘れない。隣にいた瑠衣もあからさまに引いてたし。


馬鹿2人でわいわいガヤガヤと学校へ歩いて着く。下駄箱から上靴を取り出して自分の教室へ向かう。


途中、夏彦が腹が痛いとかでトイレに行ってしまったから今は1人だ。


教室に入ると先に行っていた瑠衣がまた馬鹿でかい声で喋りかけてくる。


「あー!もう遅いよー!また天野君でしょ、悠くんを独り占めして良いのは私だけなのだー!」


「おい、馬鹿こんな所でくっつくのやめろって!人に見られてんじゃん!」


ほれみろ、また始まったよと思ってそうな顔を皆してやがる。この幼馴染にも良い加減気付いて欲しい物だ。


「ちぇー、悠くんのケチッ!」


「ケチってお前なぁ…」


幾ら距離感が近いといってもこう引っ付かれたんじゃ動くのも怠い。


手でしっしとやって離れさせる。周りに聞かれても煩く思われない様に小さな声で喋る。


「…いいか、幼馴染でも距離感という物があってだな?こうも近いと俺が彼女作れなくなっちゃうから困るんだよ」


「悠くんには私がいるから良いの!悠くんは私が捕まえるから他の女なんて…いらない」


「おうおう、落ち着け。いきなり病み属性なんて今時流行んないってさ。まあ、この話は置いといて。放課後は瑠衣が行きたいって言ったオカルトスポットに行くんだろ?それに…夏彦、誘っちゃダメか?」


「天野君かぁ、カメラでいきなり私撮られたから苦手なんだねぇ」


「まあ、根はいい奴だから。それにアイツ今、インパクトのある写真が撮りたいって張り切ってるんだよ。今回のはピッタリだと思ってさ」


「うーん、分かった。貸し一だからね!」


良かった。これで心細くないぞ。流石に怖そうな所は頭数揃えていかないと俺がキツい。


「おう、すまん。後で大好きなお饅頭をお供えしようぞ〜」


「ふっふっふ、拝めよ、私を拝めよ」


「ははぁー」


俺は目の前で両腕を組む幼馴染に向かって両手を合わせてありがたやとコクコクと頭を下げる。


「いや、悠人何してんの?」


あ、変な所見られた。



最後の授業も終わり、放課後に差し掛かった頃、俺は撮影スポットを探していた夏彦を誘って幼馴染のいる校門へ一緒に歩いて行く。


「なぁ、オカルトスポットって何処に行くつもりなんだ?この辺りだと心霊トンネルぐらいしかないぞ?」


「ふっ、甘いよ天野君は…!私達が行くのは名付けて心霊団地っ!なんと一年前から髪の長い女の霊が映ると言われている団地なの!」


「心霊団地…怖そうなネーミングだろ?」


「やべぇな、なんか聞いてるだけで鳥肌立ってきたかも…」


馬鹿2人と幼馴染を加えた…いや、馬鹿3人でその心霊団地へ足を運んだ。


来てみたはいいが人気がない。当たり前だが、わざわざ廃墟を選ぶコイツは生粋のオカルトマニアだ。


夏彦はビビっているのかカメラを持つ手が震えている。


「何だよ夏彦、怖いのかよ〜。それなら俺が先歩いてやっても良いぞ?」


「はぁ?怖くなんかねぇし…?ちょっと武者震いって奴、してただけだわ!」


俺のからかいを否定する様に夏彦は顔を真っ赤にさせて先へズンズン進んでいく。


「フフ、天野君ってホントわかりやすいねー。悠くんは怖くない感じ?」


「全然?お前にどれだけ付き合わされたと思ってるんだ。それにここ、お前が前住んでいた団地だろうが」


丁度、去年の今頃だっただろうか?ある1人の女性がこの団地から飛び降りたのだ。


女性は首の骨を折って亡くなった様だが、その時期からか子供が飛び跳ねる音や笑い声、泣き声などが毎日毎晩聞こえると苦情が入り、精神的におかしくなる人も出てきて入居者が激減。そして廃墟となってしまった。


瑠衣の一家もまた悲しむ声に耐え切れずに引っ越しをした。といっても団地からあまり離れていない所だとコイツから聞いている。


「取り壊されるんでしょ、確か。新しいのに勿体無いよね…」


「仕方ないとは思うぞ。だって曰く付きの物件に誰が住みたいと思うんだ。俺は嫌だね」


「えー!こういう所、私は好きだよ?なんか落ち着くかも…」


「うぇ、お前とは分かり合えないわぁ」


「もう!天野君を追い掛けなきゃ!」


お前が話し掛けて来たんだろうにと心の中で愚痴った。確かに夏彦をこのままにしておくと良くなさそうな気がする。


意外とビビリだから何するか分かんないし。


俺達は夏彦を追って追い掛ける。すると夏彦は団地の中央にある小さな広場で写真を撮っていた。


パシャリと眩しい光が俺を照らす。ニヤニヤと夏彦は俺に対して悪い笑みを浮かべていた。


「おい、眩しいぞ!カメラをこっちに向けんじゃない!」


「すまんすまん、どっかの誰かが来るのが遅いからさ。ビビってるんじゃないかと思ってたんだよ」


「もーう!これだから天野君は嫌なの!いきなり女性の顔を撮るなんて酷いじゃない!悠くんもそう思うよね?」


恨めしそうに夏彦を見る瑠衣を何とか宥めて機嫌を直す事に成功した。


最大の功労者である俺を見ても夏彦は知らんぷりでカメラのシャッターを切る。


「ふぅ、これくらいで写真の方は良いかな?夕暮れに映る廃墟のマンション…うん、これは良い絵になる!」


「満足したか…?俺はなんかもう疲れたから帰りたい」


「だな。そろそろ暗くなるし、家に帰るとしますか!悠介にも明日現像した写真を渡すわ」


「えー、折角来たばかりなのにー!」


駄々をこねる瑠衣を無視して夏彦の案に賛成する。来たばかりだと言ったが、何だかんだで1時間は此処にいる。


これ以上は流石に帰った頃には辺りは暗くなっていると思うし、実は現像にも昔ながらの方法を拘っている夏彦の写真が楽しみなのだ。明日くれるというなら貰っておきたい。


「…なぁ、変な音しね?なんか子供が飛び跳ねているみたいな…」


「特にそれらしい音は聞こえないけどな…」


なんかコイツ、怖い事を言っているが俺を怖がらせ様としたって無駄なのさ。こちとらスーパーオカルトマニアの幼馴染様がついているんでなぁ!


「お、おぉ…そうか!なら別にいいや。明日楽しみにしてろよ!」


「約束だからなっ!明日、絶対持ってこいよ!」


「悠くんが良いなら合わせるけど、帰りはおんぶしてよね!」


「へいへい…」


俺は瑠衣を背中に背負ったまま、夏彦と並んで帰路に着く。


夏彦は大事にカメラを抱えて一目散に自分の家まで走って行った。


それだけ楽しみなんだろうなぁとちょっと笑った。


「ねえねえ、悠くん」


「何だよ、瑠衣」


「私達、ずぅーと一緒に居ようね!」


何もかもを黒く塗り潰した吸い込まれそうな真っ黒な瞳に俺は頷く事しか出来なかった。


夕暮れに照らされた一つの影は坂道を何処までも長く伸びていく。それは何処まで続くのか、俺はまだ知らない。



「悠人の奴…プププ、自分から誘ったくせして俺よりビビるとかマジでないわぁ〜。まあ、俺は優しいし?全然、怖くなかったからそこを突っ込む無粋な真似はしてないけど」


薄暗い部屋で、カメラからフィルムを取り出した夏彦は1人楽しそうに独り言を喋る。


「これをこうしてっと、後はこの2種類の液に漬けるだけだな」


印刷紙を現像液に浸して、少し待った後に定着液に浸す。また少し待ってから液から外へ引き上げて作業を終えた。


やっと終わった写真の束を明るい部屋に持ち込んで広げる。


なかなか上手く撮れたと思う。寂れた感がまた夕日と重なっていい味を出していると思うと夏彦は自信満々だった。


「これは確か、悠人の写真を撮った写真だったよな………えっ?」


夏彦が驚いた拍子に手が滑り、現像したばかりの写真達を床に落とす。パラパラと落ちる写真を慌てて拾った夏彦はもう一度、驚いた写真を見た。


「ーーーヒッ!」


そこには悠人を見つめる複数の人の影とその彼の近くにいる首が90度に曲がった髪の長い女性が悠人の身体に巻き付いていた。


夏彦がマジマジと写真を見ていると写真の中にいる女性は頭をゆっくりと動かして首を元の位置へ治す。


「アゲナイヨ」


そして今にも引き込まれそうな瞳で夏彦を映していた。

ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。宜しければ、評価とブックマークも宜しくお願い致します。


感想も待ってますので気軽にお願い致します!

また幼馴染を意識して読み返すと少しは面白いかなぁと思いますので良ければまた見返して見返して見てください!

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