旅から帰ってきて
光あれば影もある。
17年も前の話だから、もういいよね(笑)。
遊佑は弾丸ツアーみたいな、なんちゃって全国旅を終えた。
実家に戻った彼は、しばらく何もしたくない真っ白な状態が続いていて、その重い腰はなかなか動かなかった。
職安で失業保険の手続きをした後は、だらだらとした毎日をしばらく続けていた。
週3くらいで職安に訪れ、端末や書面等で次の職業を探す。
といっても、きっちり半年分の休業手当をいただいて、就職しようという腹積もりがあるので、どこか余裕であった。
前に進む気持ちになれなかったのが正直なところである。
なので、ほぼ毎日、気持ちを紛らすために、心のオアシス、パチンコ屋に行く日々を繰り返す。
現実逃避ですな。
ヤニにまみれたホールの空気を吸い込むと落ち着く。
ふと、我に返りそんな自分に自嘲するのも、つかの間、台に座るとただひたすら勝利を信じ、サンド(玉やコインの貸出機)にお札を入れる。
これをサンドツッコミマシーンといふ。
パチンコの新台や時にスロット、なんの考えもなしに、時を忘れ、見返りを求めての日々。
旅打ちと称して、他県に行ったりするが、明確な勝利へのビジョンも持たず、ただの運は任せ。
勝ち、負け、負け、勝ち、負け、負けとやっている内に、そりゃ貯金も底をつき、お尻に
火がついてくる訳で・・・気づけば通帳残高は10万を切っていた。
やっべ。
ふと、我に返ると絶望しかない。
しかし、まだ挽回もできる・・・一発当てればまだまだやれるはず。
そんな甘さなどは微塵もないのが、パチンコ・パチスロである。
喜びと楽しみも与えるが慈悲も容赦もない。
私は昭和の香り残るパチ屋に立つ。
こいつだ。
こいつで挽回するしかない、当時大量711枚獲得できるストック機スロット「主役は銭形」・・・目押し(リールの動きを見ながら図柄を揃えること)は出来ないが、店員に押してもらえばいい(今は禁止の店が多い)。
起死回生大逆転しちゃる!
朝から夜ひたすら打つ。
いろんな台を打ち散らかす。
必ず勝つ!諦めない!諦めないぞ!
・・・・・・。
・・・・・・。
ホールから出ると、すっごい後悔が全身を襲う。
悪寒が走り心の中で嗚咽する。
半べそ状態・・・闇空を見上げ、ギブミーMONEY!
はい、残高が数千円となりまちた。
チーン。
当時は親元で暮らしていて、食って寝るには困らない・・・しかし、この状況、当然親には言えず、借金に手をだす度胸もない。
なんだ俺はニートの底辺ではないか!
人生オワタ。
いや、まだだ、まだ終わらんよ。
諦めたら・・・そこで・・・だから!
いかにすべきか、もう動く働くしかない。
選択肢はひとつだった。
兎にも角にも私は、コンビニで買った求人案内に目を通す。
ふと、目に止まったのがホールスタッフ(パチンコ屋)募集の記事だった。
私は履歴書を握りしめ、パチンコ屋に向かった。
そこは、実家から離れたちょっとしなびたパチ屋。
ここまで金をむしり取られた(自分が悪い)ホールに、今度は返して貰おう。
あわよくば、中を見ることで、パチンコ知り勝てるかもしれない。
これ一挙両得!
人生は一度しかない、やりたいことをやろう。
なんて、半場やけくそにも似た開き直り気持ちであった。
はい、数日後、バイト採用が決まった。
私はパチンコ屋の店員となった。
なんだろう、この流れ冷静に振り返ると恐怖でしかない(笑)。
みなさんは気をつけて・・・って、大丈夫か。
こういうのがあります。
特殊ケースか(笑)。
良きも悪きもそれがぱちんこ。