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 7日目


 ローリズが村に戻るらしいわ。

 ようやく私の穏やかな日々が戻るのね。

 最近見に行けてなかったけれど、あの小鹿は元気そうだったわ。

 本当に良かったわ。

 思わず頬ずりしちゃったの。

 そしたら、ペロッて舐めてくれたのよ。

 私は声をあげて笑っちゃったわ。



 18日目


 

 ローリズが森に戻って来たわ。

 何の血の迷いか、私に一目惚れしたらしいの。

 おかしいでしょ? 髪はおばあさんのように真っ白、目は血のように赤いのよ?

 恐ろしい魔獣の森に棲んで、大昔にたくさんの人を殺したの。

 私が木の上からそう言ったら、ローリズは君がそれを望んでしてるようには見えないって言ったの。

 だからどうしたというの、って感じよね。

 でも、彼はさらに続けたわ。

 精霊が魔女に従うのは、魔女がどんな人間よりも心優しい存在だって知っているからだって。

 当たり前じゃない、精霊は家族よ。

 でもあなたは人間でしょ?

 もう帰ってちょうだいって言ったら、またフェルツとルカが彼を庇うのよ。

 もう、勝手にしてって感じよ。



 35日目


 何度魔獣をけしかけて追い返そうとしても、ローリズはしつこくやってきたわ。

 今日はこんな花を見つけた、今日はこんなお菓子がある。今日は、今日はって。

 もう、私は人間じゃなくて魔女なの。

 人間となれ合う気はないのよ?

 それとも殺されたいのかしら。ひと思いで殺してしまいそうだわ。

 でも、フェルツがいるからそんなことしないわ。だって彼女が悲しむもの。



 50日目


 今日もまた来てるわって思ってたら、ローリズは具合の悪そうな小鹿の傍に立っていたの。

 見ると、小鹿が足を怪我していたの。

 そしたら、ローリズはてきばきと小鹿の治療を始めたの。

「大丈夫だよ」

 そう言うローリズの手は、なんだかとても優しそうだったけど、私は騙されないわ。



 100日目

 


 やってしまったわ。

 今までどれだけ話しかけられようとも無視し続けてきたのに、今日初めて返事というものをしてしまったわ。花を愛でていたら「それ好きなんですか?」って、「ええ」って答えるでしょ普通。魔女にも礼儀っていうものがあるんだから。

 意図せずローリズを喜ばせてしまったわ。

 でもあの男も……返事がかえってきただけで喜ぶなんて、どんな幸薄なのよ。


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