03
3日目
水の精霊フェルツが、足から大量に血を流している男性を見つけたわ。
髪は金髪で、目は透き通るような青。
正直、あの王太子……あらやだ、クズなんてどこで覚えた言葉かしら。
まぁいいわ、どうせ魔女だもの。
あのクズを思い出しそうになったから私はすっごく嫌だったけれど、フェルツが彼なら大丈夫だって強く言ったのよ。
私は人間なんてみんな同じだって突っぱねたら、フェルツはすごーく悲しそうな顔になって、その男をどこかに連れて行ってしまったわ。きっと治療するつもりなのね。優しすぎるわ、フェルツ。
でも、あなたのそういうところは大好きよ。
4日目
火の精霊ルカと水の精霊フェルツが私の寝床にやってきたわ。
大怪我を負った男の名前はローリズっていう名前らしくて、騎士の下っ端らしいの。
病気の妹を助けるためにこの森に貴重な薬草を取りに来たらしいわ。
ルカとフェルツは、私にどうか彼に薬草を与えてあげてほしいと言うのよ。
私は絶対に嫌よ。
だって人間よ? 人間はずる賢くて醜い。優しそうな見た目でいつ森の動物たちや精霊たちを傷つけるか分からないわ。だから私は断ったの。
でも、フェルツはローリズを助けたいって言って出て行ったの。
ルカはフェルツの事が好きだから、当然一緒に出て行ったわ。
きっと、ローリズに薬草がある場所を案内する気なんだわ。
もう……あそこは巨大な蛇の魔獣がいるから行ったら危険なのに。
5日目
せっかくフェルツに治してもらったのに、ローリズとかいう男はまた血だらけになって帰って来た。薬草を取れたのね、フェルツとルカの嬉しそうな感情が遠くにいても感じるわ。
そう……。
でも私は人間を許してないわ。
この先も一生許すつもりもないの。
6日目
薬草を調合している時に、ローリズがやってきたわ。
まぁ、魔女の部屋に勝手に入るなんて、なんて命知らずな人なの!?
魔獣や人間を食べる植物たちがローリズを食べようと襲い掛かったけど、フェルツとルカがそれを止めたのよ。それを見ていた風の精霊フェイと地の精霊ロッカもローリズを助けたわ。
精霊が人間に力を貸している。
そんなの、悪い人間だったら精霊は助けたりしない。
心根の優しい人間にしか彼らは懐かないの。
ああ、本当にその人間は優しい人なのね。
ローリズは私に話しかけようとしたけれど、私は何度も無視したわ。
だってそうでしょ?
人間なんて、信じられるわけないじゃない。