表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/9

02


 時は流れた。

 人間に失望した私は森に帰り、人間に近づかれないように大量の魔獣を放った。緑が生い茂り美しい花々が咲き誇っていた森は死に、いまや瘴気渦巻く魔獣の大巣窟として人間から恐れられている。


 都合が良いわ。

 もともと私は一族の最後の一人だもの。

 不老長寿とはいえ魔女にも寿命があるのよ。

 (つがい)となる魔女一族の男がいなければ子もなせないの。朽ち果てるまで一人で穏やかに過ごしてやるわ。うふふ、二百年も森で暮らしてきたけれど、ようやく私も魔女っぽくなったわね。


 薬草を調合し、精霊達と交信し、時たまにくる人間をビビらせて追い返し、可愛い動物たちと戯れる毎日。


 最高よ。だって独りじゃないもの。

 これが魔女。

 私の生き様だわ。

 んー。

 でも、この生き様を後世に語り継がれないのは悲しいわね。

 前、人間たちが自伝を本にして売っているのを見たけれど、やってみようかしら。


 大魔女フェリツィアの自伝なんて、響きが良いじゃない?

 あぁでも、読んでくれる人がいないのは残念ね。

 精霊達も字が読めたらいいのだけれど。

 でもいいわ、私が死んだら人間の誰かがこれを読むかもしれない。

 うふふ、私の手記を見て人間達が震えあがったら気分が良いわ。

 

 よーし。毎日書くわよ!

 

 1日目


 今日は風の精霊フェイと地の精霊ロッカが喧嘩をしていたわ。

 何気ないことで言い争っていたけれど、喧嘩はよくないって仲裁しておいたわ。

 そうそう、この間に鹿の子どもが生まれたのよ。

 小鹿は足を震えさせて、母鹿の乳をまさぐっていたわ。

 もう、なんて可愛らしいのかしら。

 何度も何度も撫でくりまわしちゃったわ。

 お尻を噛まれたのは少し痛かったけれど、可愛いから許しちゃったもの。

 すくすく成長していくといいわね。



 2日目


 今日も風の精霊フェイと地の精霊ロッカが喧嘩をしていたの。

 どうも、どっちが私の正統なる精霊に相応しいか揉めてるそうなのよ。

 もう、私にとってはどっちも大好きなのよ。

 だから抱きしめてあげたら、フェイは顔を真っ赤にして飛び去って行ったわ。

 照れ屋さんなのね。可愛いから捕まえてもう一度抱きしめたのよ。

 そうそう、小鹿は元気そうにしていたわ。

 母鹿と草をもりもり食べていたのよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ