2.まさかの神ミス!? 選ばれし戦士は君だ!
病院で気がついてから二日目の朝。
僕はベッドの上で目を覚ます。
そういえばゆかりさんのご両親はどうしているのだろう。
僕はナースステーションへ行き、両親のことを聞いた。
看護師の話では、ゆかりさんの両親は、彼女を乗せた車で事故に遭い、その衝撃で二人とも他界してしまったらしい。
「その事故で男子高校生巻き込まれてないです?」
「いや、何も聞いてないわよ」
「そうですか」
僕は部屋に戻った。
元の僕はどうなったのだろう。
僕はベッドに入り、横になった。
病院は暇だ。
刻一刻と、時間だけが過ぎていく。
そして、一週間が経ったある日、僕は退院して孤児院に向かうことになった。
孤児院に着き、育ての親となる女性に挨拶をする。
「川島 ゆかりです」
「保母の早苗よ。自分の家だと思っていいからね」
「はい」
「じゃあ、施設を案内するわね」
僕は早苗さんに施設を案内してもらう。
早苗さんはある一室の前で立ち止まった。
「ここがあなたの部屋よ。この施設は一人一人に個室で生活してもらってるの」
「案内ありがとうございます。少し休ませてもらえますか?」
「お疲れなのね。いいわ」
僕は部屋に入った。
そこは六畳一間くらいの大きさで、一人で寝るのには十分な広さだった。
部屋の中にはベッドが置いてある。
僕はベッドに突っ伏した。
元の僕はどうなった?
僕は戻れるのか?
色々考えすぎて疲れてきた。
僕は眠りに就いた。
*
目が覚めると、やっぱり僕は孤児院の自室にいた。
一晩寝れば、夢から覚めて元に戻ってるかとも思ったが、世の中そんなに甘くはないみたいだ。
部屋から出る僕。
食堂では朝食の準備が行われていた。
「おはよう、ゆかりちゃん」
と、早苗さん。
「おはようございます」
「早く起きたなら朝食の準備手伝ってくれる?」
僕は朝食の準備を手伝う。
やがて皆が起き出し、全員で朝食を済ませた。
僕は部屋に戻り、支度をする。
支度を終えた僕は、早苗さんに断って出かけた。
僕は、近所の警察署に向かった。
警察署で、僕は磯貝 勇気という人物について探る。
交通課の職員は、磯貝 勇気に該当する事故書類を探す。
書類はすぐに見つかったようで、職員は僕の元に戻ってきた。
書類によると、僕、磯貝 勇気は交通事故で病院に入院していることになっている。
「その病院は!?」
僕は職員から病院を聞き出し、僕の元へ向かった。
病院に着き、職員に病室を訊ね、部屋を訪問する。
そこには、僕がいた。
「誰?」
僕が訊ねる。
「君は?」
「僕は磯貝 勇気」
僕の頭には疑問符が浮かんでいた。
彼がゆかりさんなら、そう答えると思っていたからだ。
しかし、彼は僕を名乗ったのだ。
「あ……えっと、川島 ゆかりです」
「川島さん?」
もう一人の僕は、必死に思い出そうとするが。
「ごめん。誰かわからない」
「あー、そうだよね。唐突だったね」
僕は、彼に事情を説明した。
「それじゃあ、君は磯貝 勇気で、僕と入れ替わったと思ったんだね?」
「うん」
「じゃあ、ここにいる僕は?」
「たぶん、入れ替わったとか、そう言う単純な話じゃないってことだね、きっと」
その時、僕以外の時間が止まる。
「え?」
僕は辺りをキョロキョロと見回す。
「いやー、すまんね」
と、そこに仙人のような老人が現れる。
わかった。神ミス、のような気がする。
「わしゃ神様じゃ」
「で、その神様がミスを犯してこの体になったってか?」
「なんじゃ、お見通しか? ミスではないがな」
「どういうこと?」
「お主の魂はそこにいる磯貝 勇気の複製でな」
「複製?」
「お主の魂はその女の体に入れさせてもらった」
「ゆかりさんはどうなったの?」
「亡くなった。事故でな」
「え?」
「空いてたから入れたんじゃよ」
「オリジナルからコピーした目的を教えてくれません?」
「それを話すとお主は逃れられない運命を辿ることになるぞ」
「どういうこと?」
「聞きたいか?」
「……………………」
「なら聞かせてやろう」
なにも言ってない。
「お主はワシがこの世界を救うためにコピーしたのじゃ」
「は?」
「魂も肉体に適合しておるし、ちょうどいい。実践といこうじゃないか」
「はい?」
神様は、不思議な力で僕を病院の外へ連れ出した。
「あれを見るんじゃ。あやつこそ、この世界を脅かす魔の手じゃ」
神様が指を差したその先では、今まさに怪人が人を襲おうとしていた。
「まさかとは思わんが、やつと戦えと?」
「そうじゃ。お主にはその力がある。なにしろワシが作った魂じゃからのう」
「自分で戦えよ!」
「まあまあ、そう言わず、協力してくれ」
「で? どうすればいい?」
「では、頼んだぞ」
「た、って、え?」
時間が動き出す。
「きゃああああ!」
怪人が襲った女性が悲鳴を上げる。
「おい、そこのお前!」
僕は怪人の前に躍り出た。
「これ以上好き勝手は赦さねえ、じゃなかった。赦さないわよ!」
怪人は僕の方を見ると、いきなり襲いかかってきた。
「やっぱり無理だよー!」
僕は背を向けて逃げ出した。
追ってくる怪人。
僕はどうなるんだ。