いざ、人界へ
俺の前にはうめき声を漏らしながら地べたに這い蹲っている龍族の頂点である龍神がいる。
それをまるでアリでも見るような目で見下ろし、ため息をつく。
「さすが龍神と呼ばれ魔王を自称してただけはあるな。なかなかの強さだったぞ。だがそれもここまでのようだが」
「くっ…この卑怯者がっ!!正々堂々と戦え!」
普通の奴なら睨まれただけでその生涯を終えてしまうような圧力を持つ剣幕を見せる龍神だが、俺はそれを鼻で笑いながらあっさり受け流す。
「それに関しては悪かったな、うちのラミアが余計なことを・・・」
「ちょっと余計なことなんてひどぉい!大事なエリオスがケガしちゃうかもしれないから手伝おうと思ったのに!」
そう言いながらゆっくり上空から降下してきたラミアは俺の腕に抱きついた。
俺と二人の空間を作り出すような大きな羽を持つラミアはそこら辺の有象無象からすれば天使と思わせるような神聖な存在のように思えるかもしれないが、実際は神聖とは程遠い邪悪な存在である。天使であることには間違いないがその正体は天界から堕とされた最凶最悪の堕天使である。
「おおっと、悪い悪い。本当は今すぐにでも抱きたいくらい嬉しいぞ」
「しょうがないなぁ、許してあげる♡・・・ここで抱いてくれても・・・いいんだよ?」
そう言い、頬を朱に染め上目遣いをしながら大きな胸をさらに押し付ける
「仕方ないやつだな、今はこれで我慢しろ」
「んっ…んん」
お互いの唇が深く重なり、舌を絡めあう。お互いの唾液を貪るように激しく絡まる音が静寂の中に響いた。
「どこまでも舐めおって・・・がぁっ!!!」
龍神の咆哮と共に吐き出された超高温の火炎放射が二人に迫るーーーーーが、当たる直前何かにはじかれたように炎は消えた。
「なっ!」
「おい…」
先ほどまでの甘えた声と同一人物なのかを疑うほど重い声が響いた。
「私とエリオスの恋路の邪魔をするなら・・・消えろ!!!」
次の瞬間、もはや力を使い果たし何一つ抵抗できない龍神に無慈悲の鉄槌が下された。
「やりすぎだ、ラミア」
「もう、エリオスは優しすぎるんだよ!その優しさは私だけに向けてくれればいいのよ、分かった?」
「分かった分かった。しかし魔王とやらもとうとうやっちまったなぁ」
龍神がいた場所を見るがそこには既に龍神がいた痕跡は何一つ残されてなかった。
と、そこへ物凄い速さで何かが迫ってくる気配がした。
「おい!魔王ってやつはどこだよ!さっさと殺っちまおうぜ!」
「遅いわよ、グラン。もう魔王はエリオスが殺しちゃったもん」
そこにはグランと呼ばれる炎の化身かと思わせるような真っ赤な髪と瞳、そして悪魔の象徴である二本の立派な角お持つ青年がいた。
「はぁ!?もう殺っちまったのか!?なんだよちょっとぐらい俺も楽しませろよな」
そう言って心底残念そうに項垂れた
「はぁ・・・魔王もいなくなったし魔界もそろそろ飽きたな」
「そうねぇ…」
「それなら別の世界に行ってみないか?」
「え?」
「人界だよ」
「「!?」」
「魔王がとして君臨してた龍神は人界に侵攻するためにこの宝石を使うつもりだったらしい」
そう言って俺は手に持っていた宝石を二人の前に差し出した。
「それは?」
「これはイシュレイの石と言ってな、召喚術と違って呼び出されるわけではなく、自身が異界を渡るための媒介となる石だ」
「マジか!それを使えば向こう側に行けるのか!ならさっさと使おうぜ!」
「本当にいいのか?向こう側に行くと戻ってこれる保証はないぞ?」
「エリオスがいればそれでいいわ!」
「俺も楽しければそれでいいぜ!」
「よし、それなら早速行くとしようか!」
「おう!」「ええ」
手に持っていた宝石を破壊すると、空中に一寸先すら見えない漆黒の穴が現れた。
おそらくこれをくくれば向こうの世界に行けるのだろう。
「行くぞ」
そう言って俺たち3人は人界へと向かった。




