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平凡  作者: 山頭 幸
目覚め
3/5

02 光


「っはぁー、今日も終わったー!」

「いや大して何もしてないけどねっ!」



 由美が的確なツッコミを入れてくる。




「山田さん、分かってませんな。何をしても、疲れるものは、疲れるのです!」




 私と、山田由美(やまだ ゆみ)梶本鈴香(かじもと すずか)は同じ昼食グループであり、バスケ部に所属している。


 しかしバスケ部は試合前以外は特にこれといってきつい練習はしないのだ。




「じゃ、私もう帰るわー」

 早々に着替え終えた私はドアに向かおうとする。


「え、原野もう帰えんの?コンビニ寄ってくー?」


 …コンビニ。いや、負けるな自分、今はダイエット中なはずだぞ…。




「…いや、今日は早く帰りたいし…。ダイエット中だし…」



 よし、このまま部室を出れば私の勝ちだ!



「えー、琴先輩、おかしありますよー?」

「よし美那ちゃん、1つ頂きましょう!」


 うしろから由美が何か言ってるが私には何も、聞こえない!気のせいだ!


 小さな袋に入ったチョコのお菓子を2つ受け取り、今度こそ部室を後にしたのだった。





 チョコを食べながら少しまわり道をして、サッカー部のグラウンドの方向からバス停へと向かう。もうこれも歩き慣れた道になった。


 私は、流誠のひたむきな姿が好きだ。




 サッカーをしている流誠は不思議と遠くからでもすぐに見つかることができた。




 がんばれ、がんばれ―。





 時期は9月。ほとんどの部活の3年生は引退しているが、サッカー部含めいくつかの部活はまだ試合が残っている。



 もちろん、受験のため残る残らないは本人たちの自由だが、うちの高校のサッカー部はなかなかに強かったため、3年でも残っている人は比較的多かった。



 そんな中で先生からも一目おかれており、ベンチ入りしている流誠は期待のエースというわけだ。



 そんな流星のために、私はミサンガとアルバムを作ろうかと考えていたのだった。



 喜んでくれるといいな。



 我ながら乙女だなーと感じる。1年記念日も兼ねているため、気合が入る。







 買い物を終え材料を揃えた頃にはもうお腹もペコペコであった。



 流誠、今頃残って練習してんのかな…。



 そんなことを考えていると、急にポツリ、と水滴が降ってきた。




 ん?と思い空を見上げると、どんよりとした雲が立ち込めており、星が1つも見えない。


 嫌な予感がする…。




 その予感は、当たらないでくれという思いとは裏腹に、どんより雲はザーッという音を立て大量の雨を降らす。



 最悪…。



 ショッピングモールからそう遠くない自宅までダッシュで帰る。



 通り雨なんて聞いてない。きっとアルバムもグラウンドもぐしゃぐしゃだ。



 あれ?もしかしてショッピングモールで雨止むまで待機したほうがよかった?





 その考えが横切る頃にはもうショッピングモールからは遠のいており、ここまできたら家まで足を止めるものかとムキになって走り続けた。




 雨は容赦なく降り注ぎ、空はゴロゴロと音を立てる。




 はぁ、はぁ、と息を切らしながら家まであと、数十メートルといったところだった。





 目の前にちゃぶ台くらいの水溜りが見えた。



 飛び越えられるかな――。





 水溜りの一歩手前、片足に力を入れた、その瞬間だった。






 あたりは真っ白な光に包まれ、直後




 ドォーンと、鼓膜が破れるほど大きな音が聞こえた


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