01
………………。
「なぁ、こと、聞いてるー?」
「あー、ごめん!ぼーっとしてた!」
数学の授業を終え、いつものグループで昼食をとっていたところ、由美の声ではっとする。
「もー。どうした琴音ー。なんかあったー?あ、柴崎のこと考えてたんか!」
柴崎とは私の彼氏、柴崎流誠のことである。
「いや由美、違うから!まぁ、確かに?もうすぐ1年記念日ですので何あげようかなーなんて悩みどころではありますが?」
「うわー、でたよ、まじでラブラブなんだから」
本当のところはさっきの声が気になって仕方なかった。妙に頭に焼き付いて離れない。
まじで誰なんや。というか、どんな夢見たら起きてーで終わるんや。
まぁ、夢につっこんだところでしょうがないけど。
そんなことを1人で考えていた。
「琴音ー、柴崎が呼んでるー」
声をかけてきたのは流誠と同じ、サッカー部の山田であった。
口に運びかけた卵焼きは無念にも弁当箱へと戻される。
「おー、ありがとう山田。みんな、ごめんけどちょっと行ってくるわー」
いくらラブラブとはいえど流誠がわざわざ昼休みに呼び出すなんて珍しいことだった。
「おうおうおう、行ってこい愛する彼氏の元へ!」
はいはい、なんて笑って返しながら廊下にいる流誠の元へと向かう。
「どうしたー?」
「あー、ごめん、ご飯食べてる最中に」
「まぁ、昼休みにもお話ができましたということで、許してあげましょう!」
っふふ、と笑う流誠。うん、かわいい。
「実は、大会に向けてしばらく遅くまで残って練習したくて…。しばらく集中したいから連絡とか遅くなるし、一緒に帰るのも、ちょっと難しくなる…」
「それで…、わざわざ言いにきてくれたん?」
「…うん」
正直、寂しい気持ちは大きいが、大きい大会が近づいているとこは知っていたため、流誠ならそうしそうだとは思っていた。
しかしそれ以上に電話でも言えることをわざわざ会って伝えてくれる流誠の誠実さを嬉しく思った。
「おう、寂しいけどがんばれよ」
笑顔でそう答えると、流誠もニカっとした笑顔で、おう!と答えるのだった。
あー、寂しいなあ、分かってはいたけど。1年記念日、どーしよーかなー。
この時にはもうあの声のことなんか忘れていた。