世界金融危機におけるサンタと残業の関係
100年に一度の世界的金融危機であるという。
それに伴う我が国の経済力低下。そして景気の後退。確かに不況のあおりは着実に俺の職場にも押し寄せている。年末、年始は忙しいのが判っているのに人件費削減で増員されない。同輩や後輩は連日連夜の残業でのびてしまった。今日は全員帰らせて、自分一人で残業をする事にする。
午後11時までパソにかじりついて、製品の発注量とストックの確認をする。さすがに眠気が出て来たので、洗面所で顔を洗う事にした。真っ暗な空間に飛び込んだ。いつもならセンサーが働いて照明が付くのだが今日は付かない。(はて…?)顔を洗って正面の化粧鏡を見た。当然、僕の顔が映っているが、その後方に蒼白で少し青白い顔をした若い女の顔が映っていた。何故か逆さまで茶髪のロングヘアーが空中に漂っていた。上半身だけ天井からブランと出ている。
「うらめしや〜」
「って、何だ!おまえは!」
「オバケです〜怖くないですか〜?」
「怖くないっ!大体なんだ、お前の格好は!」
「季節感をだそうと思って〜うらめしや〜」
サンタの格好をしていた。天井からスルッと落ちて空中で一回転するとフロアーの上で浮遊した。サンタのオーバーだけでズボンは穿いていないので、回転した時に白いフリフリ付きのあるものが丸見えになった。日本型オバケの伝統にのっとり足元は空間に溶け込んでいる。
「俺は今から現場の仕事がある。季節外れのオバケに構っている暇はない。
じゃ、そーゆー事で」
「あっ、それじゃ困るんです〜怖がってもらわないと〜仕事のノルマがはたせませ〜ん!
(人を怖がらすのが仕事らしい)いつまで経っても残業で〜す」
「サンタの格好して、うらめしや〜で怖がれるかね?」
「じゃ…これなんかどうです?怖いって言うよりグロですけど〜」
サンタの帽子を取った。左後頭部が欠落して脳漿がはみ出していた。
「こっちで(現世で)バイトしてた時、窓拭きの仕事してたんです〜アルミ梯子に乗
って。丁度、春で…春って眠くなるじゃないですか。そうしたら頭に衝撃が走って、
気付いたら天国で、こんな有様だったんですよ〜うらめしや〜」
「……それは災難だったね。俺も早く仕事を終わらせて、睡眠を取らないと君みたい
な災難に襲われるかも知れない。じゃ、そーゆー事で…」
訳の解らんオバケに構っている暇はない!
俺は分厚いガラス・ドアを開けて現場倉庫に向かおうとした。サンタの格好をした女のオバケが追っかけて来た。形相が変わっていた!白目を向いて、みるみる素肌が腐敗してゆく。茶髪の髪の毛がガサッと抜け落ちた。ガラス・ドアの片側を右手で持ち、左腕を突き出してボロボロになった口が絶叫した!
「ドウシテコワガッテクレナイノォ!!」
「はっ!」
しまった。俺は疲れからパソの前で眠ってしまったようだ。やれやれとんだ夢を見た様だ。その瞬間!
「ユメジャ…ナイゾォ…!!」
パソの液晶画面から突然、腐敗した腕が飛び出して来た!指が一本ボタッと落ちた。そして、さっきのゾンビがニュッと現れた!
「うわっ!おどかすな!」
「ヤット、怖ガッテクレマシたね。コレで残業は終了デ〜す。天国に帰れま〜す。
ありがとう ございました〜お仕事がんばって下さいね〜」
サンタの格好をした女のオバケはゾンビ形態を解除して、可愛いオバケに戻っていた。そしてバイバイをしながら天井に吸い込まれる様に天昇していった…。
ふう〜最後はびっくりしたぜ。夢だと思ってたからなァ。しかしオバケも大変なんだなぁ…。って、これがオチかい?なんつーオチだい。ありきたりでよォ!こんなんで此処<小説家になろう>で通用すると思っているのか?!
思っていない。断じて思っていない!しかし俺も、お前も薄給でこき使われ残業で疲れ果てている。それが作品にも影響してくるのだ。全てはアメリカ発、世界金融危機のせいなのだ!俺は確信を持ってそう思う。深くは考えない!
さて今年(2009)はどうなるのだろう…?
△ grand bleu 2008/12/05
ホラー要素を取り入れたコメディです。楽しんで頂けたら幸いです。
感想をお待ちします。