chapter16 工業簿記における財務諸表等-製造原価報告書-
前回(chapter15)のお話のあらすじ
今日は、煉先輩が通う銀杏大学の「講義見学ツアー」の一環で、煉先輩も受講する井間村教授の「初級管理会計論」を受講していた。
通常、銀杏大学の講義は1講義90分で行われているらしいが、今日は私たち高校生が体験受講をしていることもあり、90分を前半40分・休憩10分・後半40分に分けるという特別時程が組まれていた。
前半の講義では、工業簿記における貸借対照表と損益計算書の作成について、商業簿記ベースと比較しながら、井間村教授が解説を行った。
そして今、休憩の10分が終わり、後半の40分が始まろうとしている。
「後半は、確か「製造原価報告書」についての講義でしたよね。」
「そうだな。商業簿記では作らない表だが、美琴なら大丈夫だろう、きっと。」
「…だといいんですけど…」
「さて、それでは後半を始める。」
「後半は「製造原価報告書」についての講義だ。」
「「製造原価報告書」は、昭和38年に発令された『財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則』略して『財務諸表等規則』第78条1項に謳われている、財務諸表に附属する明細表のことだ。」
「高校生諸君のために簡単に言うと、損益計算書の「当期製品製造原価」の内訳を示した表、ということになる。」
「ということは、損益計算書の「当期製品製造原価」と、製造原価報告書ではじき出した製造原価は…」
「必ず一致する!!」
「ということっすね!」
「その通りだ。」
「製造原価報告書は、3部構成になっている。」
「さて、ここで学生諸君に聞いてみよう。先週の講義で「原価の三要素」についてやったが、これについて分かる者はいるかね?」
「確か、原価の三要素って、「材料」「労務費」「経費」でしたよね…」
「そうだな。」
「そこの君!その制服は確か…けやき商の高校生だな!!隣の学生と話していた原価の三要素について、もう一度言ってくれないか?」
「はっ…はい!原価の三要素は「材料費」「労務費」「経費」の3つのことを指しています!!」
「大正解だ!!」
「ありがとう、ございます…」
「学生諸君も、あの高校生を見習って欲しいものだ!!ありがとう!座りたまえ。」
「はい。」
「美琴!よくやった!!えらいぞ!!」
「いきなりだったから、とっても緊張しちゃったよ…」
「さて、製造原価報告書の話に戻るが、この報告書は、原価の三要素により構成されている。」
「まずは「材料費」だが、これは損益計算書の「製品」と同じように、期首材料棚卸高と当期材料仕入高を加算し、最後に期末材料棚卸高を減算して、当期の材料費を算出する。」
「二つ目の「労務費」だが、これは工員に支払った賃金と、工場勤務の事務員等に支払った給料等を計上する。」
「そして最後に「経費」に属する工場の水道光熱費や工場建物に対する保険料、外注加工賃や材料の棚卸減耗費などを計上する。」
「最終的に、この原価の三要素別の合計を全て加算し「当期製造費用」を算出。これに「期首仕掛品棚卸高」を加算し、「期末仕掛品棚卸高」を減算すれば、「当期製品製造原価」が算出される、という訳だ。」
「いろいろな場面で「期首+当期-期末」の式を使うんですね!!」
「その通りだ。「期首+当期-期末」は、さまざまな場面で流用できるから、覚えておいて損はないぞ!」
「先輩がこの前言っていたように、けやき商でしっかり勉強しておけば、大学の講義も分かりやすく聞けますね!」
「その分、商業高校生は「一般教科」の授業時間数が少ないから、英語とか数学的な講義を選択すると、なかなか講義についていけない、なんて商業高校出身の学生もいるみたいだけど、な。」
「いずれにしても、先輩が3年生の時、私もけやき商の1年になれるよう、頑張る意欲が沸いてきました!!」
”キーンコーンカーンコーン…”
「ちょうど時間のようだ。」
「高校生諸君。私の講義はいかがだっただろうか。」
「君たちの進路選択の一助となってくれれば、私も嬉しい。」
「次は、ぜひ私たちの「学生」としてお会いしたいものだ。」
「では、今日の講義はここまで!!」
chapter17 に続く