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美琴 Accounting!! 簿記の基礎知識講座  作者: 剣世炸
工業簿記編
56/74

chapter02 「直接費と間接費」って何!?

 美術室にて…

「郷中先生!!何しているんですか!?」

「美琴さん!」

 この先生は郷中さとなか先生。商業科の先生でありながら、美術部の顧問をしている先生だ。

「ここに、絵の材料となる小・中・大のキャンバスがあるでしょ?次の高校個展で、美術部の生徒それぞれに、どのサイズで絵を描かせようかと思って、こうして並べて考えていたところなの」

「キャンバスの大きさで、絵の構図や出来栄えが変わってくるから、サイズ選びは結構重要なのよね…」

「私は、大きい絵の方が飾られているのを見た時に「すごいな~」って思うから、全員大きいキャンバスで描くのが良いと思いますけど…」

「確かに、それはその通りなんだけど…」

 すると先生は、近くに置いてあった絵の具やパレットを触って言った。

「キャンバスにしても、この油絵の具にしても、美術部の限られた予算内じゃ、「材料費」として使えるお金は、そんなに多くないものだから…」

「「材料費」ですか…なんだか「工業簿記」みたいですね」

「言われてみれば、その通りかも知れないわね。そう考えてみると、キャンバスは「直接費」で、油絵の具は「間接費」かしらね」

「「直接費」と「間接費」???」

「そうか…まだ授業始まったばかりだから、製品との関連による分類までは進んでいないかしらね…」

「工業簿記が一体何のための簿記なのか、は習ったわよね」

「はい!(ていうか、煉先輩から教わったんだけど…)製品の製造原価を知るための簿記が、工業簿記なんですよね!!」

「そうね。製品を製造する際に、どの費用がどの程度かかっているのかを集計して、最終的に製造に要した費用がいくらだったのかを計算するのが「工業簿記」ね」

「その集計の際、製造に要した費用を「材料費」「労務費」「経費」の3つに分類するの」

「「材料費」は製品の材料として購入した際の費用、「労務費」は製品の製造に携わった人に支払った賃金や給料、「経費」は「材料費」「労務費」には該当しないけど製品の製造にかかった費用、のことですよね」

「さすが、あの煉君の彼女さんね♪よく学習できているわ」

「ついこの間、授業でも戸山先生が説明していましたし、煉先輩からも教わったばかりなので…」

「さて、「材料費」「労務費」「経費」というのは製造原価をその形態別に分類したものだけれど、「直接費」と「間接費」は、製品との関連によって費用を分類した場合に使われる言葉なの」

「製品の製造と原価の発生が、直接結び付けられる原価のことを「直接費(製造直接費)」と言うわ」

「例えば、美術部が完成させた作品を「製品」だとして、私の目の前にある「キャンバス」は、作品を直接作り上げるために必要な材料となるわ。故に、キャンバスは製品の製造に直接必要となる材料費、即ち「直接材料費」と言えるの」

「そして、美術部の部員に学校が給料を支払っているとしたら、その給料は製品を完成させるために必要な、直接加工を加える人に支払っている労務費と言えるから「直接労務費」と言えるわね」

「てことは、先生に対して支払われている給料は、部員つまり直接製品を製造している人を補佐する人に対して支払っている労務費となるから「間接労務費」という訳ですか!?」

「その通り!」

「そして「油絵の具」は、部員各自が制作する複数の作品に共通してかかる材料費だから「間接材料費」と言えるわね」

「それから、美術室の電気代やバーナーを使う際にかかるガス代、水彩画を描いた際にパレットを洗う時に使う水道代などの「水道光熱費」は、作品の制作に関して共通してかかる経費だから「間接経費」と言えるわね」

「「直接経費」に例えられる美術部の費用はありますか?」

「う~ん、それは思い当たらないわね。工業簿記で「直接経費」に該当するものは「特許権使用料」と「外注加工賃」の2つ位かしら。どちらも、材料費にも労務費にも該当しないけど、それを支払わないと製品を製造することができない経費だからの「直接経費」とするの」

「製造費用を「直接」と「間接」に分ける意味ってあるんですか?」

「実はこれが大有りなの!」

「「直接費」として消費した「材料費」「労務費」「経費」は、『製品を製造途中のもの』という意味がある「仕掛品しかかりひん」という勘定科目に集約していくわ」

「一方、「間接費」として消費した各費用は『間接的に製造にかかった費用』という意味がある「製造間接費」という勘定科目に集約するの」

「で、この「製造間接費」は、最終的に「仕掛品」に移動させて、月末には0にするわ」

「えっ!?それじゃ、「製造間接費」にわざわざ移動させなくても、最初から「仕掛品」に集約すればいいじゃないですか!!」

「それは、作っている製品「1つだけ」だったら、ね」

「!!」

「普通、工場で作られている製品って、1つだけじゃないでしょ?」

「確かに…例え同じような製品でも、「色」「大きさ」とかで分類していけば、複数の製品を製造していますよね」

「そういうこと。だから、製造間接費は一定の基準で各製品の仕掛品勘定に振り分ける、という訳」

「なるほど!「直接費」と「間接費」を分類する意味、良く分かりました!!」

「ここから先は、戸山先生や煉君から「総合原価計算」を習う際に教わるといいわ」

「そうします♪」

「そう言えば美琴さんは、私に何か用事があったんじゃないの!?」

「いけない!私、若林先生に郷中先生への伝言を伝えに来たんだった…」

「そうなの!それで、その伝言って…」

「郷中先生との会話に夢中で、忘れちゃいました…急いで戻って聞いてきますね!」

”スタスタスタスタ…”

「…あのしっかりものの煉君に、ある意味天然の美琴さん…」

「「お似合い」のカップル、なのかもね!!」

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