★chapter36 「繰越利益剰余金」って何!?
ある日の嶋尻家の車内にて…
「いや~今日は楽しかったな!」
「…パパ、本当に今日のこれって、お金ほとんどかかっていないの!?」
「ああ。『株主優待制度』を使って入場して、中でかかった食事代やお土産代は、もらった『配当金』からほとんど捻出できたから、私や母さんの懐を痛めるようなことにはなっていないんだ」
「そんなに、このテーマパークを運営している会社は儲かっているんだねぇ!でも、パパみたいな株主に配当金を出すのに、どんな仕組みになってるんだろう?」
「美琴は、まだ簿記の授業でそこまでいっていないの?」
「お姉!まだに決まってるじゃん!この前やっと『当期純利益』の出し方を教えてもらったばかりだっていうのに…」
「そうなの。そしたら、『当期純利益』って、どうやって算出するんだっけ?」
「『費用』と『収益』の各勘定科目全てを、集合勘定である『損益』に振り替えるでしょ…そうすると、会社が得をしている場合は『収益』の勘定科目の方が大きくなるから、差額は必ず『借方(左側)』に発生して、その発生した差額が『当期純利益』になる…で合ってるかな?」
「正解。で、その発生した差額分を『繰越利益剰余金』って勘定科目に振り替える訳!」
「…そう言えば、戸山先生が来週それをやるって言ってたっけ…当期純利益が発生している場合、損益は『借方(左側)』に差額が発生している訳だから…
(借方(左側))損益 ×××
/
(貸方(右側))繰越利益剰余金 ×××
って仕訳になるってこと!?」
「そういうことね。利益が確定した数か月後には株主総会が開かれて、この繰越利益剰余金をどう処分するかが決定されるの。その時、株主に支払われる配当金の金額も決まるのよ」
「ただし、ここで注意しなければいけないのが、株主に支払う配当金の10分の1以上は、『利益準備金』として会社に残さなければならないということね」
「…どうしてそういう処理が必要になるの?」
「会社が継続して発展するためには、会社の儲けを少しでも残す必要があるの。そうしないと、いつまでたっても同じ規模の事業しかできないからね。だから、会社の儲けを全て外に出さないようにするために、法律で配当金の10分の1以上は残すよう定められている訳!それから、株主総会で決めた配当金は、通常その場で支払われることはないから、『未払配当金』として処理するのが通例ね」
「仮に、繰越利益剰余金が1,000あって、配当金を800出すって決めた場合は…
(借方(左側))繰越利益剰余金 880
/
(貸方(右側))未払配当金 800
利益準備金 80
って仕訳をするってことだね!」
「そうね。で、この未払配当金を普通預金で振り込んだ場合は…
(借方(左側))未払配当金 800
/
(貸方(右側))普通預金 800
って仕訳になるってことよ」
「なるほどね!ねぇパパ、今回行ったテーマパーク以外の株って、持っていないの?」
「残念ながら、今のところは、な…」
「配当金以外にも、株主優待なんて制度があるんなら、他の会社の株も買ったらどう?」
「そうだな…老後の資金やお前たちの結婚資金も用意しなければならない訳だから、資産を増やすという意味でも、今度検討してみるか!」
「やったぁ!!」
「…って父さん、私たちの結婚資金って…」
「あなた…まだ少し早いんじゃないかしら?」
「そんなことはない。もう真琴の美琴も高校生なんだ!いつお嫁に行っても…」
「はいはい!美琴はともかく、私はまだまだ先だから、安心して父さん!」
「美琴はともかく!?」
「あ゛あ゛あ゛!!はいはい!この話はここまで!!」
「???」
…
chapter37 に続く