寿司屋でゾンビに襲われても困る〜食物連鎖の頂点は俺!〜
テキトーに書いて飽きたので、オチは微妙だし回収してないフラグがいっぱいあります。
でも、寿司ゾンビは可愛いです!
俺の名前は浜田 寿司蔵。察しの通り寿司が大好き。まだまだ親の脛をバリバリ齧っている19歳だ。小、中、高と同じ寿町の学校に通い、現在は都心にある文系の大学通っている。ちなみにバイト先は蕎麦屋。
最近の悩みは、寿司の食べ過ぎで髪型が寿司チックになってしまった事、彼女が出来ない事。
夢は【100万円貯めて好きなだけ寿司を食う事】!
それが大学1年生になった今年、バイトとお年玉、家事の手伝い、入学祝い諸々のお陰でやっと100万円溜まったんだ!19歳にして、夢を叶える俺って凄い!誰か褒めて!
もちろん、今まで育ててくれた両親や俺の愛するチェーンの寿司屋さんにも感謝をしている。バイト先の先輩とか店長とかもアザっす!
「取り敢えずマグロ10皿」
社会人がビールを頼む感覚で、俺は初めにマグロを10皿頼む。俺が居るのはファミリーに大人気の回るお寿司屋さんなので、パネルでチャチャッと注文出来る。流れてくる寿司ネタを見ながら、神に感謝。手はちゃんと清潔にして、熱いお茶を1口すする。
因みに、お湯が出てくる凄い水道で手を洗おうとする奴は素人だぜ!
最初に食べるのは白身魚とか、寿司職人の腕は卵焼きで決まるとか言ってる奴もナンセンス!
俺は俺の好きな奴しか頼まないから!マグロ!サーモン!玉子巻き!ちょっと邪道なハンバーグ!
お子ちゃま舌と言われても気にする事、無かれ。それが俺の寿司道だ。
「相変わらずマグロばっかり食べるね」
「日本人だからな!」
「そうかな?」
俺が
「好きなだけ寿司食ったら、カウンターに100万円の札束置いて『美味しかったぜマスター』って言って颯爽と立ち去るんだ!」
と言ったら慌てて付いてきた高校生の妹は、俺に遠慮もへったくれも無く金色のお皿を取っていた。
こいつも寿司好きだからな。偶には家族サービスしてやらねば。
俺が生暖かい目で
「デザートも頼んで良いんだぞ」
と言うと、無言で紫の中にワサビを大量投下された。
「ありがとう!」
ワサビ山の頂上にガリをちょこんと乗せ、そのまんま食べた。
この刺激が堪んないよね!偶に3年前に死んじゃった爺ちゃんの声が聞こえるんだけど、ワサビって凄い!俺、醤油とワサビがあれば、何でも食べられる気がするんだ!
蒸しエビと甘エビも10皿ずつ頼もう。モニターをピッピと押して、沙詩美に頼まれた生しらす軍艦も5皿頼む。
「美味い!美味い!美味い!」
寿司サイコー!
めくるめく寿司ワールドに意識を昇天し掛けていると、テーブルの下で足を踏まれて、妹が顎をしゃくって視線を誘導した。
「お兄ちゃん、同級生の人に見られてるよ」
「もぐもぐ?」
そういえばこの店、水上さんがバイトしてたな。
沙詩美の誘導で隣のレーンを見ると、水上さんがテーブルを拭いていた。あの綺麗なサラサラロングヘアーは現在、ネットの中。
高校からしか話した事 無いし印象薄いけど、寿司の為に頑張ってくれ!
俺が
「ナイス!」
とサムズアップすると、チラチラとこちらを見ていた水上さんが照れ臭そうに、腰の所で手を振った。
バイト中にごめんね。
彼女の名札を見た沙詩美が
「潮理さんか…。ふむふむ」
と頷いて、スマホに何かメモをし始めた。新しく届いた甘エビと生しらす軍艦をテーブルに置くと、皿を置くスペースが無くなってしまった。仕方がないので、タワーを高くする。
隣のレーンから苦情が来たらどうしましょ。
「食事中に携帯弄るのは良くないぞ〜」
これだから最近の女子高生は。
何やら情報通らしい友達とペポペポ会話をし始めた妹は、生返事をしながら生しらす軍艦に醤油を付けた。
先生に言いつけてやろ!
と思うが、俺の先生と沙詩美の先生どっちにしよう?そもそも学校が違うから、沙詩美の担任が分からないぞ?大変だ!
「ソレ、食べない方が良いと思うぞ」
「んー」
「そのシラス、変じゃないか?紫色だし唸ってるし…」
「んー」
「え?本気で食べるの?チャレンジャーだなぁ…」
シラスの目が真っ赤に血走ってるし、いくら生シラスと言えど、(イクラじゃ無いよ)未だに動いてるのは気持ち悪いと思う。それに魚って瞬きするっけ?
「兄ちゃん、それ食べない方が良いと思うんだけど…」
あぁ、食べちゃった。
「うっ!何これ、腐ってる?」
「だから兄ちゃん言ったじゃん!」
仕様の無い妹だなぁ!
使い捨てのお絞りに口の中身をペッさせて、熱いお茶とワサビで消毒をさせた。
「おえ、何このシラス?」
「糸引いてるな」
営業妨害にならない様に声を小さくしているが、気付けば他のお客さんも何やらモショモショ喋っている。
「ウー!ウー!」
唸っている生シラスが皿から零れ落ちて、テーブルの上で丸くなった。
「高い所から落ちて痛かったんだな…」
「何普通に感情移入しちゃってんの?これシラスじゃ無くて地球外生命体なんじゃ無い?」
「ウー!ウーウー!」
皿から次々と零れ落ちていくシラス達。
「ウ〜!」
テーブルに落ちては痛そうに丸まり、先に落ちた奴が心配そうに落ちたばかりのシラスの元へニョロニョロ移動して唸る。
「うんうん、みんな痛いのは同じだ」
なんて素敵な友情なんだろう!
紫のネバネバの中で、透明なニョロニョロ達は懸命に生きていた。
「これでも食べて元気になりな」
みんな可愛いから、俺のワサビを分けてあげよう。箸の上にワサビを乗っけて、シラスの口がどこか分からないので体全体にワサビを掛けてあげる。
「うきゅうっ!」
ワサビに埋もれたシラスが、真っ白に変色して動かなくなった。
「沙詩美!見て見て!喜んでる!」
「苦しんでる」
知ってた!
「どうしよう、俺シラス殺しちゃった!警察に自首して来た方が良いのかな?」
明らかに俺がトドメを刺してしまった。心無しか周りにいるシラス達が、俺に恨みがましい目を向けている気がする。
「お兄ちゃんがコレで捕まったら、刑務所は寿司職人でいっぱいだろーねー」
「もうちょっと動揺しろよ!昔は変なグッズ集めて、キモカワ!とか言ってた癖に!」
「ソレとコイツは絶対別!ゴリラ丸はキモカワ!シラスはキモい!」
兄ちゃんには区別が付きません。
「ウー!ウー!」
しばらく放置されていたシラス達が、俺を標的に定めた様で一斉攻撃を仕掛けていた。俺のパーカーに一生懸命ブラ下がるシラス達を見ていると、何だか申し訳ない気持ちになる。
「あ…」
パーカーから転げ落ちたシラスが床に落下して力尽きる。沙詩美の非難がましい目が突き刺さった。
「シラスが可哀想…」
んんんんんんんんんんんんんん!!!
3分後、全てのシラスが力尽きて死んだ。その頃になると、お店は苦情で大忙しだった。
「何だったんだろう、今のシラス。私、1回口に入れちゃったんだけど…」
「…ゾンビ?」
「却下」
「シラスの妖精さん」
「うん、そうゆう事にしよう」
あんな妖精、俺は嫌だけどな。
お口直しに姿ヤリイカを頼んだ沙詩美が、困った顔をして俺に皿を差し出した。
「うおー!」
ブルータス、コイツもかよ。
紫の粘液を出しながら沙詩美を威嚇するヤリイカを、取り敢えず懲らしめておいた。
「うぅ〜!うぅ〜!」
箸で突かれたブルータスが、三角の部分を隠す様にして縮こまる。
「お兄ちゃん、可哀想!」
「違うぞ。ブルータスはな、こうして箸で突かれるのが好きなんだ」
「うい〜!!!」
「名前付けないでよ」
と言いながら、沙詩美もブルータスを箸で突つく。
「うきゅー!うきゅー!」
「やっぱコレ、ゾンビなのかな?」
寿司ネタって事は1回死んでる筈なのに、何かウーウー言って動いてるし。新聞社に売れば大儲けかもしれない。寿司ゾンビってキャラクターとして売れそうだし、もしかしたら働かずとも大金持ちになれたりして。むふふ…。お箸を殺人鬼持ちした沙詩美が、イカの頭の部分を貫いて生臭い液が皿を汚した。
「あ、本当だ。これゾンビだね」
健全な人類代表として、ブルータスの味方をしたくなったのは秘密だ。
結論。今日は寿司を食べられそうに無いので、外にゾンビが居ないか注意しながら帰る事にした。色んなフラグが転がってるのに、回収しなくて ごめんなさい。
「私が明日あたりゾンビになってたらどうしよう?」
母さんから貰った胃薬を飲んで、沙詩美がうぇっと舌を出す。
「たぶん大丈夫だよ。体の小さい物を大きい物が食べる事によってゾンビ化が拡大するのだとすれば、沙詩美はシラス1匹くらいしか食べてないから大丈夫なはず。たぶんだけど!熱いお茶とワサビも食べたしね!」
て事で、人類がゾンビパニックに襲われるのはまだまだ先だろう。どうせ誰も信じてくれないだろうし、何処かのチートな主人公が何とかしてくれるまで、平凡な俺はカップラーメンでも買い込んで備えておく事にする。
世の中、ノリとネタが大事です(?)