憧れからの初バトルと冒険者
俺とフェルセは、先ほど聴こえた助けを呼ぶ声へ駆けて行く。
今でもあの、叫び声が女性ならテンプレ通り国の姫や美人な人だろう。ド太く低い声を聴いた瞬間に関心を失った。
正直、この地に着て初めての人間に会えるという事は期待しているんだが。
もしそれが、ファンタジーに登場するもふもふ獣人やらエルフなら尚更見てみたいし会ってみたい。
「ところで、冥王さま。 武器は持ってきているんですか?」
「もちろん持ってきている。 ショートソード入れてきてたからな、あと二叉の槍もあるぞ」
「どっち使うんです?」
「ショートソードだ。 やはりこの世界の物を使わないとな、面白くない」
「えー。 槍の方が無双出来ますよ」
「それ、つまらんだろ」
フェルセは、少し残念そうな顔をして聴いてきたので、もしかした用意してくれたのかと思い駆けている。
「フェルセ……。 何か持ってきてくれたのか?」
「最高の武器を持ってきましたよ。 冥王さま。 やはり冒険の始まりと言えば、この武器が最高じゃないですかね」
「最高? 始まりと言えば定番のショートソードだろ。 違うのか?」
「ノンノンノン。 違いますよ。そんなんじゃないです。 やはり、武器はこれですよ」
走りながらフェルセが、アイテムボックスからある武器を取り出してきた。
俺は、二度見し、言葉を詰まらせてしまう。
何故なら、それは武器として成り立っているのかという事。
いかにも不満顔をしてる俺の表情を見たのかフェルセは、自信満々としてやったりした顔をする。
「――――ひのきのぼう。 竜の王を倒した勇者の子孫もこの武器から、はじまったんですよ」
「そうだけどな。 ケチな王がくれたお金が少ないからあんな武器しか買えないんだろ」
「いやいや、あれ。グーパンでも敵と戦えるんすよ。 でも、すぐにやられて『おお、ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない』になりますけど」
ひのきのぼうって、良くこれでモンスターと戦おうとしてたな。
俺はその、フェルセの持っている、ひのきのぼうに指差して尋ねる。
「それ、実際使えるのか?」
「二・三回マジで殴ったら折れちゃうんじゃないですか。 使ってみます?」
「それじゃぁ。 要らないな」
「ちぇっ。 冥王さまが、ひのきのぼうで振り回しているところ見たかったなぁ~」
「それを見てどうするんだ?」
「面白そうじゃないですか。ブンブンふりまわして…… くっ、プップッ」
「想像笑いするなよ。 そう言うフェルセは、武器持ってきているのか?」
「勿論ですよ。 これです。 私の愛剣の2本ですね。 白翼と黒翼です」
名の通り刀身が、白翼は白く、黒翼は黒く鍔の所が翼をモチーフにした飾りになっている。
「この世界で使って大丈夫なのか?」
「大丈夫です。この世界で言う聖剣やら魔剣に近いだけですし、もう既につかってますから」
聖剣、魔剣に近いって言ってるけど、そんなの最初から強い武器を持っているだけでってチートじゃないか……。
そう思いつつ、ふとフェルセの放った言葉に突っかかる。
「もう既にってどういう事だ」
「……見えてきましたよ。 行きますよ」
だが、フェルセは、目的場所を目の前を良い事に話をそらした。
助けを呼ぶ声の所にたどり着いた俺とフェルセ。
そこには、五人の武器や防具を纏った身なりが、正に冒険者といってもいい人間と、犬の頭部に人のように二本の足で立っている魔物が戦闘になっている。
「あれ、コボルトですね。二足歩行の犬の魔物ですね」
コボルトの八匹が、五人の冒険者を逃がさない取り囲む。
そして、唸り声を上げながら、間合いをジリジリと睨みを効かせながら迫る。
『ガルルルルルゥゥゥ』
そんな状況をみてフェルセが、俺に向かってニヤリとする。
「やつら、喋れないみたいですね」
「コボルトの種族は、話をしたり言葉を理解するのがいるのか?」
「多分いないですよ。 だって犬の魔物ですよ」
俺とフェルセは、武器を持ち冒険者五人から若干離れているコボルト二体に攻撃をしかける。
これが、異世界で初の戦闘になる。
戦いは、神としてなれているんだけど、やはり少し高揚する。
駆ける自分。
コボルトが、振り返るが反応が遅い。
俺のショートソードがコボルトの首を跳ね飛ばす。
首から赤い血が一瞬噴き出る。
跳ね飛ばした首が地面を転がると、同時にコボルトの体は倒れて落ちる。
それを気にもしないで俺は、ショートソードの刃をまじまじ注視する。
よく切れるショートソード。
初の戦闘に心を踊っている。
もう一匹と思ったら全て倒し終わってたよ。
「助かりました」
ショートソードを持った剣士が、頭下げてきた。
それをフェルセが、笑顔で対応する。
「大丈夫ですよ。 草原を歩いていたら急に声が、聞こえたもんで」
コボルトは、全部で八匹。
その内冒険者達が二匹とフェルセが五匹、俺が一匹。
異世界転移や転生で来ているなら、全部倒して目の前の冒険者から感嘆な眼差しで見られたかったけど、こういう結果もありだな。
俺は、冒険者の一人である剣士に少し疑問が浮かんだので挨拶をして投げかける。
「いきなり襲われのか?」
「そうなんです。 コボルトの縄張りを通った感じしなかったんですよ。 もしかしたら気づかずに通ってたのかも」
そう剣士が俺に答えてると脇から、背が明らかに低く見た目が、斥候と思える軽装備の青年が入ってきた。
「それ無いってリーダー。 絶対に縄張り通って無いよ」
すると、フェルセが、冒険者のリーダーと斥候の青年に聞こうとすると、そのリーダーの後ろから白を基調とした服装の神官と思える女性が、コツコツと足音を立てて向かってきた。
「もしかして、あちらに馬車があるから、商人の護衛?」
「そうです。 良くお分かりで、王都からの戻りでこの先の街に向かっるんですが。 あっそうそう、リーダー。 商人さん落ち着きましたよ。 あと荷も無事です」
馬車の方からやってきた女性がフェルセの質問に対して答える。
リーダーの剣士が、フェルセの剣しかも、鍔を睨むように眉間にしわ寄せてじっと見てボソボソと呟く。
「その鍔本物なら……」
フェルセもだが、リーダー以外全員静まりかえる。その雰囲気を気にもかけずにリーダーはフェルセに尋ねる。
「もしかして、双翼の…… フェルセさんですか?」
リーダーの発言が、残りの冒険者四人の耳に届く。
出発の準備をしてた斥候の青年、神官の女性と冒険者の魔法使いの格好している男性と、斧を背負った戦士の男性が、リーダーの発言に、一斉こちらを見ると同時に目玉が飛び出るぐらいの顔をしている。
冒険者五人全員、感嘆な眼差しでフェルセを見ている。
「双翼?」
俺は、小さく呟く。
だが、その呟きにフェルセの耳は動く。しかしフェルセは、俺の方を向かない。
もしかしてこの状況で俺は、フェルセの発言であった、既に、という言葉の引っかかりが解け理解した。
そしてフェルセには、この世界で既に二つ名もある。
そのフェルセは、両手で冒険者五人を落ち着かせようとしているが、当たり障りの無い笑顔をしている。
「これから、どこに行くんですか?」
リーダーの剣士が、先程よりも小さい声で、畏縮しながらフェルセに聞いる。
残り四人の冒険者達が、懇願の眼差しをしながら、聞き耳を立てる。
「あー。 私たち。 この先の街に行くんだけど」
「もももし、良ければ同行してもらうって事は、できますか? 私たちも同じ街に行くんで」
有名で二つ名があるフェルセと一緒にいてくれた方が、この冒険者達にとっては、道中安心だろう。
そのフェルセは、少し悩みながら俺に聞いてくる素振りをするが直ぐに返事をしている。
「いいよ。同じ道だから大丈夫。 冥王さまも良いですよね?」
「ありがとうございます。フェルセさん」
リーダーの剣士は、俺の顔を見て困惑する。この顔、名前を思い出そうとしている顔しているよ。
「――――あと、メイオウサマさん」
リーダーが、俺の名を思い出すが、ちょっと違う様な。
その時割り込むようにして斥候の青年が、上目遣いで言ってくる。
「メイオウサマさん、ありがとう。 ここ辺りはランクの低い魔物しか出ないんですけどね。 先程見たく魔物のランク低くても数多く出てくると対処しにくい時もあって……」
俺は、コボルト一匹しか倒してない。
――――そうなんだぁ。
納得した顔をしながらも聞き流しているが、ふとある事に気付く。
もしかしたら俺の名前、『メイオウサマ』になってないか?
読んで頂き、ありがとうございます。
5人の冒険者は
剣士は、身長が一般的に普通の高さの若い男性
戦士は、剣士と同身長の男性
斥候は 剣士の3分の2位の身長の男性
治癒士は、女性で斥候と同じ位の身長
魔法使いは、剣士と斥候の中間の男性。
です。