憧れからの異世界
はじめまして。
目に留まってありがとうございます。
文章能力が弱いですが
お付き合い宜しくお願いします。
急に爽やかな風が、俺の顔に吹き付けられたので目を閉じた。しかし風が直ぐに止み目を開ける。
広がる景色を見回し、今の状況に心を奮わせる。
そして俺は、爽快な気持ちを解放するかのように思いっきり背伸びをし、空を見上げる。澄み切った青空にゆったりと流れる雲と、太陽が、眩しく辺りを照らしている。
俺は、辺り一面青々しくて新緑の香りがする草原に立っている。見回すと遠くに連なっている山々の頂には、少し雪が被っている。
俺は、ラノベやWeb小説で読んだ、あの憧れていた異世界にいると確信した。
憧れて求めていた世界は、ファンタジーと言われる剣や魔法とモンスターの存在がある世界だ。俺は、この場所に来れたんだ。
異世界転生で良く有る設定は、過労死や主にトラックで轢かれて死亡する交通事故死というのが多い。だが、冥王の俺は、転移に対してそんな理由は必要が無い。そんな俺だから自分自身、気分一新も兼ねて臨場感を増す為に勝手ながら、異世界転移の設定を決めておいた。
もしもだが、いるはずは無いけど異世界転移や転生の人に聞かれたら答える為の設定だけどね。
――――さきほどまで近代的で高層の建物が、犇めき合う世界でノートパソコンに向かい企画プレゼン用の書類の作成や業務報告やらと作業をしていたんだが……。
時間がある時に幾度となくインターネットや書籍などでライトノベルや小説を読み、密かに憧れてた異世界へ転移してしまったのだ。これは、嬉しいのか悲しいのか?
いや、嬉しい! 心の底から喜ぶべきだ!
何故なら、パワハラ上司やその派閥の面々と各部署やから解放されるんだ――――。
俺は、いつの間にか転移をしていたと言う設定を心の中で思い描いていく。声に出してそれを見られたら恥ずかしいもんな。
そしてこの状況を俺は、本当に大いに心から解放するかのように喜ぶべきなんだ。
「うぉっしゃぁぁぁぁぁ」
俺は、再び両手を握りしめ腕を高らかに上へと突き上げ背伸びする。
『――――って、俺は歓喜に震えた』
女性の声が俺の後ろからナレーション口調の様に語りかける。しかもこの声は、昔から聞き覚えのある声だ。
そうアイツは、ここに居ないはずだし休日の予定すら話をしてない。そして、この世界に俺が、行くとも言った記憶がない。だからこの場所に居るなんて事は……。
そんな事が、無いと思うけど俺は、恐る恐る後ろを振り返る。
やはり……。
いた。
何故、ここにいるんだ……?
俺は、動揺したまま話しかける。
「ど、ど、ど、どうして? 何故ここにおお前が、いるんだ?」
「冥王さま、どもるなんてらしくないですね。 それは、貴方を1人で、しかもこんな魔物が、蔓延る危険な世界を旅行させるなんて……。 そんな事させませんよ――――」
俺は、長期休暇を取る為に冥界のトップである冥王の自分が、居なくても何も支障なく業務が回るように手回しをしておいたのだ。
いや今手回しやらを考えても意味がない、なのでそれ自体置いといて。
問題は、何故俺の目の前にフェルセが、いるかだ。しかもこいつは、腰に手を当てて偉そうに立っていやがる。
「やっとの思いで久々に長期休暇を取ったのに……」
俺は、愚痴をもらしてガッカリをするが、そんな俺の呟きを無視してフェルセは、笑顔で言い放った。
「ここは、魔法や魔物が存在し良くあるファンタジーのような世界ですよ。冥王さま1人が、ぼっち旅行に行かせる訳にはいかないのです。だから、私フェルセが、サポート兼監視を務めさせて頂きます。ぼっちは危険です。色んな意味で。ぼっちは」
サポート兼監視…… って何故監視? と言うかぼっちって何回言いやがったと、様々な疑問を抱いている。すると……
「冥王さま、監視に疑問なんですか? もしかして独りぼっちですか?」
フェルセが、ニヤリってしながら人差し指を突き立て横に振り話しだした。
「もしかしたらなんですけど? 冥王さまは、異世界転移したら女性を集めてハーレムなんて事をしようとしてたんじゃないんですか?」
正直、神として女性というか性には全く興味が無いのだけど異世界転移や転生といえばこれも名物だよね。憧れてる異世界物でそんな事をやってみたいじゃんね。
そんな妄想してた邪な考えが背中に冷や汗を……。
「そんな事、するわけ無いだろ!!」
裏返った声で反応してしまった俺にフェルセは、更に追い討ちをかけるように言い放つ。
「そうですかぁ? 怪しいけど…… もしかして、俺Tueeeeしようとしてました?」
そりゃそうだね。憧れてる異世界転移したら無双して驚かせたり、ちやほやされたくなるでしょ。
「冥王さま、バレバレなんですよ。 そんな事起きないようにするのとぼっちにさせないようにするための監視なんです。知ってるんですよ。毎日毎日、休憩時間になると直ぐに部屋に行ってこそこそ何か本を読んでいるのを。しかも最近、地球という世界から本を、取り寄せてたり。インターネットで小説を読んでたりしてますよね? しまいには地球の管理者にお願いしてスマホの契約をしてたり――――」
何故バレている? というか、何故そんなに事細かに知っているんだ?
と思っていると続けて話すフェルセ。
「――――殆どが、異世界転移や転生かゲームに取り込まれたファンタジーが、多いじゃないですか。覚えているとしたら『社畜、ブラック企業から始まる異世界無双』や『ウェポンビジュアルオンライン』とか『魔導王 死の超越』じゃないですか?」
「詳し過ぎるぞ」
「だから、監視なんです」「そうだ、フェルセ、お前だって『異世界、最強戦士の異世界ごはん独り飯』とか異世界メシ系をヨダレを垂らしながら読んでたな」
「ええ、読んでました」
あっさりと認めた。
俺キョドってたのに……
「でも、けしてヨダレは垂らしてません。そこは否定します。撤回してくださいよ」
「謝りますよ。ヨダレは盛った」
早めに謝らないと、こいつは、めんどくさい。
顔を合わせる度に撤回を求めてくる。
ずっと別の事だが以前、認めたくなくて謝らなかったんだが、寝ている時にドアを大きな音で叩いて押し掛けて来やがった。
あれは俺に悪気無かったんだけどなぁ。 諦めて謝ったよ。
フェルセは、腕を広げて自然を楽しむかのような動作をしながら話をしてきた。
「冥王さまが求めてた世界観がぴったりの異世界じゃないですかぁ。 勿体ないから1人で行かせる訳には行きません」
ん? もしかしてコイツも俺と同じように来たんじゃ?
「まぁ憧れの異世界転移なんだ。俺も姿を変えて楽しむぞ」
「何か言ってるんですか? 冥王さまは、そのまま相も変わらず冥王さまの姿ですよ」
ん?
何を言ってる?
神である俺が、人の世界に降りて生活する時は、擬体を作ってそれに乗り移り時空を乱さないようにするんだけど……。
そうだろうと思い念の為、顔や肩などあちこち触ってみると、俺の思い描いて作成していた肉体ではない。
フェルセが、悪い笑みをしながら言ってきた。
「擬体なんて作成しても、あんなのに乗り移らせませんよ。しかも異世界転移に擬体を作って準備を進めてたなんてっ!!」
「なんだとっ!?」
「冥王さまは、冥王さま……。 そのままの姿が良いんです」
と、フェルセは悪どくニヤリとし、「クゥ~」って小声だがそう呟いた。
読んで頂きありがとうございます。
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