第2話
トボトボと歩く。ひたすらに歩く。まっすぐに歩く。木があろうと崖だろうとまっすぐに歩く。霊鉄の頑丈さにものをいわせて歩く。
一週間後、街道を発見した。
確率は二分の一だ。左を見て右を見て、木の棒の倒れる方向を見て天の神様をやって、目を閉じて回転して、結局木の棒をやって左に倒れたので右に向かうことにした。
スタスタと歩く。
約五時間後、馬車を発見。どうやら、盗賊に襲われている。
救出しよう、そうしよう。
走る。到着。
「な、なんだ!」
盗賊とその他が俺に驚き、盗賊は俺に殴られる、蹴られる。ど突かれる。大丈夫、死んでない。
盗賊を一箇所に集め、旅具一式にあったロープで縛る。完了。あーいい汗かいたわー。俺汗かかないけど。
「えっと?人形に助けられたのか?」
馬車の主人らしき、貴族が困惑している。
では、異世界での初の人との邂逅だ。
「どうも、駆と言います。元人族です」
「あっはい、どうも。えっとつまり、リビングアーマー的ななにかですか?」
「そういうことですね。 はい、街に行きたいのですが、案内をおねがいできませんか?」
これ、失礼にあたるかなー?
「そうで、すか?まあ、助けていただいたのでかまいませんよ。では、馬車に乗ってください。盗賊は騎士が運搬します。おい」
その言葉で周りの満身創痍な騎士たちが動く。
「いやー助かりました。カケル殿、ははは。私はギムルー・カトラントと申します。辺境伯の爵位を持っておりまして」
「へー辺境伯ですか。それはすごい」
「それでカケル殿は何故、人形の身体なのでしょうか?」
「いえ、森で迷った挙句、深緑の巨竜に遭遇し殺されたのですよ。仕方なく、この眼鏡に魂を移し、錬成で作った人形にさらに魂を移した次第です。で、竜のほうは倒しました」
「……そ、それは凄まじいですね。竜の死体はお持ちですか?」
「ええ、アイテムボックスに入っております」
「なるほど。………」
俺の嘘偽りない言葉にギムルー卿は絶句したようである。馬車は異様な沈黙のなかで街へと進むのであった。
数時間後、馬車から嫌な音がした。俺の重さのせいだろう。俺は眼鏡だけとなり、人形はアイテムボックスにしまった。
「えっと?カケル殿、それで喋れますかな?」
「はい、問題ありませんよ」
傍目には眼鏡に話しかけるダメな人間だろうギムルー卿。不憫なり。
「あと少しで街に到着致します。しばし、我慢を」
「はい、わかりました」
馬車は沈黙へと戻る。
街には着いた。俺はギムルー卿の屋敷に案内される。
街の感想?
ザ・中世みたいな?そんな感じ、うん。
さて、屋敷だ。応接室にいる。
「さて、カケル殿、助けていただき感謝する。それでお礼は何がいいか?」
「うーん……それでは金銭を」
「そうか、雇いたいのだがな。まあ、その話をださいのでは仕方ない」
雇いたいらしい。そんな気は無いが。人のできた貴族でよかった。
「それでは金銭を用意しよう、今日くらいは泊まって行きなさい」
「はい」
別に休む必要は無いのだが、お言葉に甘えることにする。