第1話
視界が晴れて行く。
ここは森だろうか?木々が鬱蒼としている。
とりあえず、アイテムボックスを開き、オリハルコンを取り出す。俺の相棒たる眼鏡を外し、錬成によってオリハルコンコーティングを施す。
見た目は変わらない。地味な普通の縁なし眼鏡だ。
ちなみに俺の容姿は、中肉中背、髪は固めていないオールバック的なにか。整ってるような、いないようなまあ普通の顔だ。
で、余ったオリハルコンはアイテムボックスに戻す。次に霊鉄を取り出し、人形を作り出す。要はこれが、俺の緊急用の体なわけだ。
霊鉄というのは、オリハルコンとミスリルを足して二で割ったような性質を持つ。そこそこ頑丈でそこそこ魔力伝導率が良い。そんな感じだ。
人形の関節部分にミスリルを合わせる。拳や脚、胸部などはオリハルコンで補強する。あとは服を着ているかのような細工を施して完成だ。顔は……仕方がない。うん。
完成品はアイテムボックスに戻す。よし、探索と行こう。
あれから一時間、森を抜けることができていない。敵も出てこないのが幸いだ。
広すぎる……
トボトボと歩いていると、開けた場所に出た。しかし、そこには巨体があった。
「人間がこのようなところに何の用だ?」
凄まじい威圧感を放つ深緑の巨竜。おそらく、状態異常系ブレスを得意とするねちっこい竜なのではないのだろうか?
まあ、そんなことがわかっても、どうしようもない。この巨体ならタメに当たるだけで俺は死ぬ。
チートが物体憑依でよかったわ、ホント。
「まあ、良い。どうせ殺すんだからな。じゃ死ね」
深緑の巨竜の無慈悲で俺は死んだ。もちろん、眼鏡に憑依したが。
「抵抗もせんか?つまらんのー。さて、寝るとするかな」
深緑の巨竜は眼鏡に気づかず、寝た。俺はアイテムボックスから人形を取り出し憑依。それに眼鏡をかける。錬成で腕を槍のようにして深緑の巨竜の目に突撃。
「な、なんじゃ!?」
深緑の巨竜は目を覚ますも、驚きで身動きが取れず、腕槍は目に突き刺さる。
「ぐ、グオー!?」
しかし、そこは竜族。突き刺さったのは眼球だけ脳には達していない。暴れる竜の頭で俺は錬成を開始。槍の間合いを延長して、ついには竜の脳みそに到達。
「ぐ……」
竜は沈黙。死亡を確認した。
『レベルが上がりました』
どうやら、レベルアップを果たしたらしい。ステータスを確認する。
『姓名:工藤 駆 種族:人形 性別:無 年齢:18
天職:錬成師 lv.51 HP:5831 MP:15432
STR:856
VIT:953
INT:5472
MND:5628
DEX8524
AGI542
技能:錬成slv.Ⅹ 解析slv.Ⅹ 刺突slv.Ⅰ
異能:物体憑依』
一気にレベルが上がっている。しかし、オリハルコンはすごいな。竜を刺突で倒せるとか。竜の死体はアイテムボックスに放り込む。自分の死体は無惨な状態だ。どうしようもない。性別がなくなっているのはしょうがない。さて、どこに行こうか?