「異世界転生編 Ⅲ」
不安と希望が入り混じる転生初日の夜。
赤ちゃんに使われる言葉として「寝る子は育つ」というのがあるが、個人の見解は正直不適切だと思った。
なぜなら腹が空いて仕方がないんだ。
そして大声で泣き喚くわ、駄々をこねるわ。
・・・・・・母さん、ごめん。
・・・このお礼は大きくなったら数十倍にして返すから。本当面目ない。
っと、話を戻して。
とにもかくにも、俺は転生者の複雑な心情も相まって、毎日寝不足気味で第一次成長期を阻害させてしまった。
それにより体と心の成長に少しばかりの誤差が生じた。・・・・・・具体的に言うと前世の意識が完全に定着したのだ。
だから更に困難な案件が発生。
「ソフィア、そっぽ向かないで。大丈夫だから。怖くないから、ね?」
母さんから授乳される際についそっぽを向いてしまうことがしばしばある。
心が先に成長した俺は性欲を制御すべく対処している。
だが、それを心配して強制的に飲ませようと奮闘する母さん。
・・・・・・重ねて言わしてもらいます。
・・・・・・「ごめんなさい。このお礼はいつかしますので。それまでは」
母親に欲情して乳を吸うなど倫理的にも自分のプライド的にもできるはずがない。
なので生後3か月以降授乳を拒絶し続けた。
・・・・・・するとどうでしょう。
赤ちゃんは虚弱体質になり、更に両親の手を煩わせることになったのです。
転生初日。つまり誕生した日に見せてくれたあの太陽のような笑顔を奪ってしまった。
原因は2つある。
1つ目は自分がよくわかっている。
「まさか授乳を拒んだ結果多大なるご迷惑をかけてしまうとは・・・・・・」
でも俺は2つ目の方が気になる。
それはある日の夜、俺を寝かしつけた両親がコップを片手に話していた会話に含まれる。
「最近、発熱が頻繁に出るようになったわね」
「恐らく、もう準備期間に入ってるのかもしれない。・・・・時間は刻々と迫って来ている。
このまま王宮で育てた方が国政はやりやすいのだが・・・・・問題は」
「政権派信徒たちね。王宮にいたらいつ誘拐されるか・・・・」
しばらくの間無言の状態が続く。
仰向けだったから2人の様子まではわからなかった。けど言葉のトーンに含まれる重みは何やらただならぬ予感を思わせるものだった。
しかし重圧がかかる空間はすぐさま終わりを告げた。
2人は口をそろえて言い放つ
「引っ越ししよう」
「引っ越ししましょう」
星の光がよく見える頃、ようやく俺は就寝した。
先程のことの意味を考える暇は与えられないみたい。
久しぶりにぐっすり寝られる機会を得たのはラッキーなのだろうが、今宵は別だ。
「これから自分の身に起こることを考えればなおさら」
素人同然の文章ですがこれからも応援のほど、よろしくおねがいします。