とある槍使いさんのツッコミ
唐突に空から落ちてきたソレは、なんと言えばいいのか……。ロボだった。勇者シリーズとかに出てきそうなやつ。製作に絶対日本人関わってるだろ! と、ツッコミ入れたくなるデザインだ。
少なくともこんなファンタジー世界に存在しちゃいけない類のやつだ。あとハンマーとか持ってたらやばい。光にされてしまう。
「あんなの相手に生身でどうしろとー……!?」
「カッケェェー!」
「おい、八田。あれ確実に敵だからなー?」
なんか熱くなってる相棒にクギをさしておく。気持ちはわかるが落ち着けって。……デッサン人形も残ってるってのに厄介そうなのが出てきたなぁ。
デカイので当然、攻めあぐねる俺ら。デッサン人形相手取りながらだから、余裕はあまりない。とゆーか、なんか新手のデッサン人形がワラワラと出て来てるし……あとどれだけ倒せばいいんだよデッサン人形!!
後方で助っ人に来た胡散臭い金髪男とシータちゃんが作戦会議をしているみたいだが、遠目に見ても順調とは言いがたいのがわかる。
相手がデカすぎるんだよ。今のところ動きが無いのがありがたいんだが、これ『嵐の前の静けさ』ってヤツだよな。いきなりビーム撃ってきても驚かないぞ。
「……お、遅くなってごめんっ」
事態が進まない事にイラつきつつデッサン人形の頭部へ王水ブチまけてたら、桐生がギルドの増援第二弾を連れてやって来た! よっしゃー、これで多少はラクができる!
「なー八代、あのでっかいのホントに倒さないとダメぽ?」
「敵なら倒さないと俺らが死ぬわ!」
それもプチっとな。
八田はどうもあのスパロボ的造形にやられてしまっているらしい……なんて恐ろしい精神攻撃なんだ!
戦いに加わってない奴の中にも、なんかソワソワしてるのがいるのをみると八田と同じ症状だな。異世界人——それも日本人男子特効を持ってやがるとか、どれだけ狙い撃ちされてるんだよ!!
「リュージの学友の皆さん!」
おっと。シータちゃんに呼ばれている。とうとうあのロボ攻略の目処が立ったのか?
「皆さんにはあの新しく現れた魔導兵器の足どめをお願いいたします」
……あー、アレの正式名称は『魔導兵器』なのな。ロボロボしい名前が付いてたら流石にツッコミが追いつかないところだったぞ。名前で萎えたヤツもいるみたいだ。
「シータちゃん。足どめするのはいいけど、アレどうやって倒す気なんだ?」
当然出てくるであろう疑問を口にしたのは早乙女だった。だよな、俺たちに足どめ頼むってことは、実際に動くのはシータちゃんだけって事になる。ギルドの面々はデッサン人形の相手、残るあの金髪はあんまアテにならなそうだし。
「直接、動力源を叩きます。アレの構造に関してはリトが詳しいので問題はありません」
決意を固めた表情。……ふむ、あの金髪かなりのメカマニアとみた。というか、ファンタジー世界なのにメカの専門家て……中身は意外とファンタジーなのかもしれないな、あのロボ。
そうして手早く打ち合わせて作戦開始ときた! シータちゃんが動力源を破壊するまで、俺たちはヤツの足元で気を引くのが役目だ。
こちらの動きに気付いて、さすがにあちらさんも沈黙を破った。
『小煩いハエどもめ! 踏み潰してくれるわ!』
ロボから聞こえてきたのはアルスター王の声。乗ってんのはおっさんかよ!? しかもセリフが悪役チック。
やめろよ! 格好良いロボから中年のおっさんの悪役セリフが聞こえてきたら、大きなお友達でも夢が壊れるだろ!? せめて年頃の王子あたりを乗せとけよ! ……ってこの国、王子いねーわ。
しかも操縦に慣れてないのが丸わかりなぎこちない動き。試運転で実戦投入、しかも操縦者はトーシロか。せっかくのロボが泣いてるぞ。……まあ操縦に慣れてても、俺たちの方が数とスピードで勝ってるから被弾する事は無いだろうが。
俺たちがせっせとアルスター王を挑発している間に、シータちゃんは王水を使って動力源のあるスペースまでの道を切り開いて行く。
その先で動力源として据えられていたのは——




