俺、ぴーんち!
気がつくと何か光る巨大な石に下半身が埋もれていた件。いつの間に寝てたんだ? ……あー、捕まった直後に睡眠魔術掛けられたんだった。それにしても——
「——なんだ、これ……?」
抜け出そうともがくが、ビクともしない。まるで取り込まれている、みたいな?
「目覚めたか邪神」
下の方から、憎々しい声が聞こえてきた——アルスター王だ。どうやら俺がいるのは結構高い位置のようだ。視線を向けて見ると偉そうに仁王立ちする王と、その周りを忙しなく走り回る魔術士たちの姿。
「……で、コレは何なんだ?」
「それは魔術回路のコアよ」
「魔術回路? コア?」
「魔術兵器の動力源となる魔石の事だ」
やたらと丁寧に教えてくれるのは助かるのだが……兵器の動力源である魔石に取り込まれてる俺。これ結構やばい状況なのでわ?
何となく予想はつくんだが一応、聞いてみよう。こういう状況の悪党は口が軽いしな。
「——で、何でソレに俺が取り込まれてるんだ?」
「言ったであろう? 貴様は『贄』だと」
「俺を煮てどーすんだよ? まさか食う気か!? 俺なんて美味くねーぞ!?」
食人趣味とは……やっぱこの国の王侯貴族あたまおかしい。シータを除く。
「……頭の出来はともかく、貴様の潜在魔力は極上だ。これならば魔導人形を一個師団起動できるであろうよ」
魔導人形ってのがどんなのかは知らないが、一個師団てこの人でなし王、戦争起こす気満々じゃねぇか! ……それにしても『俺の潜在魔力』? おかしな事をいうなぁ。こないだ確かめた時、俺の「まりょく」というかMPは四十でしたよ? 二回ポッキリしか威圧さんをオフれない微々たる量である。つまり——
「——別に俺じゃなくても良くね!?」
「理解しておらんようだな。『潜在魔力』と言っておろう?」
……潜在魔力とまりょくは違うのか。小馬鹿にされてるのが悔しい。俺にもっとかしこさがあれば!
そうだ、森羅さん出してみよう森羅さん。困った時はあいつ出せばなんか解決する気がする。大きくできれば夢の『薙ぎ払えー』ができるぞ!
というわけで出てこーい、森羅さーん。
…………沈黙。
「——って、森羅さん出ねぇし!」
「シンラ? ……あぁ、例の使い魔か」
無駄なことを。と、何がおかしいのかさっきから笑いっぱなしの王。むーかーつーくー!
「貴様の魔力は残らず活用させてもらっている。当然、使い魔も出せぬよ」
……悔しいことに森羅さんを出すのに使ってるエネルギーも丸ごとゴッソリいただかれているらしい。
エネルギーと言えば、カタチのないものを斬るのが得意な俺の相棒はどうした!? 腰に下げていたはずの相棒さんは姿を消していた。当然と言えば当然の武装解除である。まぁ、鞘に入ってても、わかる人にはわかる名刀らしいからなぁ。
相方も相棒も封じられた。これは俺、いよいよ詰みでは……?
……つーか俺、マンガとかで読んで知ってる。これ手遅れになると、生命エネルギー的なものまで搾り取られて俺がミイラになるやつや。
うわーん、誰か早くへるぷみー!!




