俺だって強くなってますー
圧倒的戦力で暇つぶしのダンジョン攻略もあっという間に終わらせてしまった俺たち。近場のダンジョンは刈り尽くしてしまった。
「帰ったらまたやる事なくなるなー」
俺の場合、顔出しNGなので気軽に街に出たり観光とかできないんだよな。
「俺たちは逆に忙しくなるがな」
ダンジョンで大量の良質素材を手に入れた流はホクホク顔をしている。そうだよな、お前らは帰ってからが本番だよな。なお魔王城の工房を貸してもらえる事が決定している。
「暇なら俺らの作業でも見ていくか?」
「ひたっすら物を作ってる作業風景か……いや、興味がないとは言わないけどなぁ」
物が作られていく過程を見るのは楽しいっちゃ楽しいが、なんか時間を無駄にしているような気がする。なので控え目に断ると、流は残念そうに「……そうか」と答えた。そんなに見守ってて欲しかったんだろうか?
*
暇を持て余して城内をブラブラしていた。そうすると広場のほうが賑やかなことに気づいて、そちらに向かうと——
広場では戦闘職のやつらがこぞって稽古だの試合だのをしていた。やる事が特に無いからとはいえ、ホント染まって来たなーみんな。
「なー、神山。暇なら俺らと手合わせしねぇ?」
そんな中で声をかけて来たのは侍の北山だ。刀という同じ武器を使うので、実は密かにライバル視している。
——よし、その挑発乗ったァ!! プロの面目丸つぶれにしやんぜ!
「おうとも。ボッコボコにしてやんよ!」
「……お、おう。なんか急にやる気出したな、お前」
「同じ刀を使う者同士、どっちが上かハッキリさせてやるぜ!」
俺の言葉に、北山に誘われて集まったであろう面子から、「おー、やってやれ!」とか「旅人な邪神さまに負けんなよ、本職!」とかヤジが飛んで来た。
「嫌に自信満々だが、実戦で磨いて来た俺の刀さばき見せてやるぜ!」
「草刈りで磨いて来たのはこっちもおんなじなんだよ、北山ァ!」
「……あれ? 今なんかちょっとおかしくなかっ——」
——問答無用!
開始の挨拶に居合斬りを一発ぶち込んだ。
「ちょ、手合わせなんだから開始の合図くらいしろよ神山ぁ!」
チッ、さすがは本職。今の不意打ちを見事に受け流したらしい。
「残念ながらぼっちな俺は手合わせとやらをした事がない。よって——実戦方式だ!」
「いやぁぁぁっ、死兆星が見えるぅぅ!!」
さすが邪神さま汚い! という野次が聞こえてくるが知らんな。気配遮断を使わないだけ良心的だと思います。
「てぇぇいっ!」
まずは小手調べ。普通に上段から斬りかかる。キィンと刀同士ががぶつかる甲高い音が響き渡る。これも駄目か。
「ちょ、誰か審判っ! 審判してくれぇぇ!」
北山は慌てて対応しつつも、芯の部分では冷静なようだ。まぁ、審判いないと、試合じゃなくて死合いになっちまいますよねー。あ、隙見っけ。
「神山容赦無さすぎィ!?」
とか言いつつちゃっかり防いでる北山が憎い。その才能をちょっとは分けろー。
「おー、神山マジで腕上げてんなー」
「剣すら持てなかった頃を知ってると感慨深いものがあるねぇ」
外野の声が聞こえてくる。お前らは俺のおじいちゃんおばあちゃんか! ダンジョン攻略の時は、気配遮断使いまくってたから、俺の勇姿を見れたやつはいなかっただろうけどさぁ!
今度は鬱憤を込めて横薙ぎの一撃!
かーらーのー刎ねあげだぁッ!!
勢いに耐えきれず、北山の手から刀が跳ね飛ばされた。返す刀で首筋に刀を当てる。
「ぎ、ギブギブ! 当たってる、薄皮一枚切れちゃうって!」
「——はい、神やんの勝ちー」
審判はギャラリーの一人だった斎藤が引き受けたらしく、彼の間延びした声が響いた。
「よっしゃぁぁ!」
思わずガッツポーズ。本職に勝ったぞー!




