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異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件  作者: ぽて
隣国と和平会談する件

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出番がない!



 ——翌日。先生たちがジャックロットとの和平会談準備をしている間、暇つぶしで来ていたダンジョン攻略なのだが。


「——出番がない」


 そう、出番がないのである。


「俺もそこそこ強くなったはずなのに、出番が回って来ねぇ!」


 目前では大ハッスルする戦闘組の諸君が衝撃波出したり、燃える剣振り回したり、地面を隆起させたりとかド派手に戦闘している。誰一人手加減なんてしてないので、出て来る敵出て来る敵が次々と一瞬で消えて行くのだ。

 生産組は生産組でせっせとドロップやら素材やらをかき集めている。ちなみに森羅さんですら働いている——素材を運ぶ荷車を引いている——のに、俺の出番が来ない。

 生産組を手伝えばいい? いやいや、俺はここに経験値稼ぎに来たのであって、素材を探しに来たわけじゃあないんだ!


「……さすが最終決戦に備えた上級職集団だなー」


 そういやステータス確認したら、俺も上級職っぽいのに変わってた。その名も『龍神』。前回あたりから思ってたが、もう職業じゃねーだろこれって感じだ。なおスキル的には変わらず、と思いきやいつの間にか『暗殺術』の文字が。短剣時代の置き土産だろうか。

 せっかく追いついたと思ったのに、普通に出遅れてる感じ。ヒトの可能性は神を凌駕するというのかッ! とかしょうもないことを考える今日この頃である。いや、俺も人間ですけどー。


「ちょっとは譲ってくれても良いと思うんだ」

「邪神様がなーに言ってんの。獲物は早い者勝ちだって!」


 弓兵の浅田が矢をつがえつつ、ぼやく俺に喝を入れてくる。ちなみにこの浅田嬢——男勝りなところはあるが、まぎれもなく女子だ——腕力頼みの遠距離攻撃だというのに、先程から何体も魔物を仕留めている超絶スナイパーだ。


「……なら、俺もあの人外魔境に飛び込むとしますか」


 やっぱ待ってるだけじゃあダメだよなー。俺は気配遮断を使って前線に潜り込んだ。火の玉やら水球やらカマイタチやら弓矢や剣、斧その他諸々いろいろ飛び交う危険地帯をかいくぐりつつ獲物を探す。つーか皆これだけ好き勝手やっててよく誰も被弾しねーな、オイ。

 さて手頃なやつはいないかなっと。ガーゴイルにサイクロプス、お馴染みグレータービーストさん他色々と、さすがラスボスのお膝元。強そうな魔物ばっかりである。ここはやはり——


「俺らの悪夢グレータービーストさん一択だぜ!」


 幸いというべきか誰にも狙われていない個体がいた! やはり皆の心の奥底にもトラウマとして残っているのだろうか? 今更だがグレータービーストさんの外見を説明しておこう。ぶっちゃけ四足歩行の馬鹿でかい黒い狼である。……ホントに今更だな。


 まあそれは良い。先ずターゲットの背に飛び乗ります。


「とうっ」


 とか言ってみても気配遮断中だから誰にも気づいてもらえない悲しみ。とはいえ他の誰かに目をつけられる前に仕留めないと俺ごと抹殺されてしまう。

 俺はグレータービーストさんに馬乗りになり姿勢を安定させてから刀を抜き放った。そして首筋に刃を這わせ——一気に引いた!


「ギャオウンッ!?」


 そんな断末魔を残してクレータービーストさんからは力が抜け、ドスンと大きな音を立てて倒れた。もちろん俺は退避済みだ。


「よし!」


 ドロップを残して消えて行くグレータービーストさんを眺めつつ気配遮断を解いた。刀を振り血糊を落とす。


「とはいえ。やっと一匹か……先は長いな」

「やればできるじゃん、神山」


 ばんっと豪快に背中を叩かれた。浅田だ。


「いってぇぇぇ!!」

「なんだよ大げさな」


 あははと爽やかに笑う浅田だが。……弓を扱う奴は、矢をつがえる方の腕力がやばいことになると聞いた事がある。そんな腕で叩かれたら痛いに決まってんだろ! ましてや彼女の矢は銃弾並みである。


「レベルが上がってなかったら……以下省略」

「なんだい、それ? 最近よく聞くけど神山の中で流行ってんの?」

「お前らは自分達の力を自覚すべきだと思うぞ。一般人なら気絶するレベルだからな、今の!!」

「まっさかぁ!」


 そんなこんなでダンジョン攻略は進んでいったのだった。



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