魔王はかやの外
「キュルル?」
——と、そうだお前の事すっかり忘れてたがどーすりゃいいんだ。今さらマスコット枠参戦かよ。
「あら、この子は?」
「俺のスキルの森羅さんだ」
「スキルが実体を持つだなんて珍しいこともありますのね」
シータにペタペタと触られて、嬉しそうにしている森羅さん。お前そこ変われや。
「……スキルの限定解除がどうとか言ってたけどよくわからん」
たぶん『陰陽五行の理』の効果なんだと思うが、いまいちわからん。とりあえず消えろーっと念じてみたら「キュルゥー」と寂しそうな声を上げて消えたので良しとする。
「神山、お前まだ隠しスキルがあったのかよ?」
流がえっちらおっちらと俺らの所にやってきた。他のみんなは惨状に足踏みしている様子。
「隠しというか、詳細すらわからない上に自分じゃ使えないスキルなら一つだけ」
「そりゃ、難儀なこった。……あと、この惨状については後で聞かせてもらうぞ」
そりゃまぁ追求されるよなぁ。
そして次いで出たのは「お前らが乗ってきた飛竜連れてきたから、とりあえずは早乙女達と魔王の衝突を防いで来い」だと。人使いの荒い事で。
*
俺たちが飛竜から降りたのは、今まさに戦端が開かれるというそのタイミングで、俺は居合斬りをぶっ放した。両者のちょうど真ん中に。
——よし、間に合ったぁぁ!
だが案の定、苦情が飛んできた。
「我らを殲滅せんと攻めてきた勇者共との戦闘を止めるとは、いかな了見か! 我らが神よ!!」
固い、かったいなー、ルージオ。生真面目過ぎなんだよ、お前は。というか分かりやすい言葉で話せってば。勇者の前だからって格好付けなくて良いから! 魔王としての威厳? 知らんな。
つーか……——
「俺の事は呼び捨てで良いっつっただろーがルージオ! あとその仰々しい話し方もヤメロ。意味わからんわ!」
「で、ですが……!!」
「いまからタメ口オンリーな。できないなら一生お前のこと無視るから」
「……そ、そんな!」
この世の終わりのような表情になるルージオ。俺に無視されるのがそこまでショックか。
「ちょ、神山!? これどういう状況なの!」
いち早く混乱から抜け出した新名が問いただしてきた。うん、わかる。その気持ちはよーくわかる。
「——ぶっちゃけ俺、裏ボスだったっぽい件」
その言葉に何人かブフーッと吹き出した。
「ちょ、おま、マジで?」
しばらく見ぬ間に筋骨隆々になった石田が、笑いも堪えずに問い返してきた。いくら何でも笑いすぎだろ。
「マジもマジ。なんか魔族が崇めてる神さまなんだと」
「——てことは別に魔王と戦わなくても良さげじゃね? この場合神山が元締めってことになるんだよな」
早乙女ェ、元締めというのとはなんか少し違う気がするんだが!? イメージ悪いだろ! ……まあ多少の影響力があるのは認める。
「ルージオも本来は平和主義者だし、俺らが戦うのはあんま意味ないな」
「平和主義の魔王ってwww」とか草生やす勇者一行。反応が流と変わんねぇー! 気持ちはわかるが本人いたって真面目だから笑ってやるなよ。
「……あの、これは一体?」
いきなり瓦解した空気に戸惑うルージオ一人だけが蚊帳の外で、なんかかわいそうでしたまる。
そういえば俺が勇者と一緒に召喚された事とか、そもそも勇者達とは知り合いとはいってたが友人だって事、ルージオに伝え忘れてた。
でも最悪の事態は防げたわけなので結果オーライ……だといいなぁ。




