主導権を握りたい!
魔王城生活三日目。
無性に草刈りがしたかったので中庭の草を刈ろうとしたら、庭師に泣いて止められた、解せぬ。……と、それは置いといて——
「主導権を握りたいんだ」
「…………シータ様ですか」
察しが良いなルージオよ。
「現状、俺は尻に敷かれているも同然。別に男尊女卑主義ってわけじゃないが、ちょっと悔しい」
「……確かに、シータ様の方が順位的に上なのではと感じる事があります」
ほほう? 言ってくれるじゃないかルージオ。丁寧に言えば良いってもんじゃねーぞ。だがまあ——
「お前の意見は真摯に受け入れよう、うん。あいつに敵わないと思う事は何度かあったしな」
「か——リュージ様自身も、そこはお認めになられているのですね……」
その沈黙はなんだ。俺は事実は事実として受け入れる質だぞ。あと神様呼びしそうになってただろお前。もう三日目だぞ? 良い加減慣れろよー。
「問題は、どうすれば主導権を握れるのか……」
「そこはやはり、強さを示すのが一番ではないかと」
即答するルージオ。うん、まあ妥当な案だな。俺がシータより強かったら即採用だったんだが——そんなん最初に思いついて却下したわ。総力戦だと明らかに俺の方が弱いんだよ! だってあっちはダンマスだもの。まず数で敵わねぇ!!
「せめて俺のスキル構成が一対多数向きだったなら……!!」
「さ、左様ですか」
「シータのダンジョンを攻略するだけなら行けそうなんだが、最後のコボルトさんとシータのタッグトリオがなぁ……」
無駄に強化されたコボルト君ちゃんさんシータトリオの強さは、上級ダンジョンのボスに匹敵する。ダンジョン自体の難易度は初級なのに、だ。どんだけおかしいか判っていただけるだろうか?
「最近はスライムさんも加わったしな……」
あいつら本来は下級モンスターなのに、上級モンスター倒せるとか……シータのやつどんだけ強化したんだ。
「……あー、とりあえず物理的な強さ以外で主導権を握る方法をだな」
「精神的な強さで、ですか。……難しいですね」
そこ、ソッコーで諦めないで! 俺のライフがゼロになっちゃう!! 確かにシータさんは精神的にもお強くいらっしゃるけどぉぉぉ!!
「何かあるだろ!? こう、色仕掛け的なやつとか!」
「男がやっても気持ち悪いだけかと」
「額面通りに受け取るなよ、真面目か! 例えだ、た・と・え!」
容姿にもよりますが……。とか、わざわざ要らんフォローを入れるルージオ。美丈夫なテメーにそれ言われると腹立つな、おい。
そもそも俺がシータに色仕掛けしたとして、どれだけの効果があるというのか。……黒歴史にしかなんねーよ!
「もっとこう、あいつの意表を突くような策は無いもんかねー……こう、ズッキュンとハートをブチ抜くみたいなやつ」
「心臓をひと突きですか、斬新ですね!」
「だから比喩表現だっつーの! 実行に移したら俺がミンチにされるわ!」
とゆーか主導権握りたいだけなのに、対象を殺っちゃダメだろ!?
「——いや、待てよ? ハートをブチ抜く?」
「やはり殺りますか?」
「やらねーよ!?」
なんか強敵を前にウズウズする戦闘民族みたいな弾んだ声を出してんじゃねえ! そーゆー戦闘にがっつくのはのは俺のキャラじゃねえんだよ!! 一応、平和主義だからな、俺。
……それにしてもルージオ、さすがは平和の為に戦いを選んだ男。つーかお前さ、周りのやつらに喧嘩っ早いって言われたことない?
「何でも腕力で解決するのは良くないと言われた事なら」
「魔王は脳筋なんですね! わかってた!」
それは置いといて、ひとつ浮かんだ考えがある。少しばかり覚悟がいるが、シータのハートをブチ抜く案が。
……もちろん、物理じゃねーぞ。




