ご褒美タイム
開幕一番に動いたのは錬金術師の友瀬。
「食らいなさいっ!」
液体の入ったフラスコをゴーレムに投げつけた。するとゴーレムの表面がみるみるうちに風化していきボロボロと崩れ落ちていく。……友瀬よ、お前一体何を投げつけたんだ……?
「いっくよー」
装飾師の佐伯が鉄線を操ってゴーレムを地に縫い付ける。
「流っち、攻撃バフおっけーだよ!」
湯田の付加術で流のハンマーが赤い光を帯びた。
「これで、止めだぁッ!」
流がハンマーを力一杯振り降ろすと、憐れゴーレムは粉々に砕け散った。あっという間の戦闘終了。瞬殺だった。ゴーレムさんは泣いても良いと思う。
「何度見ても鮮やかですわねぇ」
「生産職とは思えない戦いっぷりだよなー」
俺らの出番とか——コボルト君ちゃんさんですら——全くない。他の生産連中は、この階層にボスしかいないのを利用して脇目も振らず素材集めしてやがる。お前らって奴は……。
それにしてもチートってホント反則じみてるよな。この世界にはこれよりヤバイ連中——上級戦闘職集団——が控えているのだから人外魔境というより他にない。更に言うならこんな連中呼ばないと対抗できない敵対種族がいるこの世界の人類、超絶やばい。
その割には今の所、平和すぎる気がしなくもないんだが……。チラホラ魔王の噂は聞くが、まだ噂レベルだぞ? それも推測レベル。魔物が多くなったとか、苦戦するようになったから魔王が何かしてるんじゃね? って感じだ。勇者召喚に関しては噂すらない。アルスター王国マジでキナ臭いな。皆が都合よく利用されなきゃ良いが……。
*
「おっ楽しみの宝箱開帳ー」
実に楽しそうに湯田が言う。ダンマスよ、☆五とか贅沢なことは言わないからせめてハズレ以外でお願いします。
ゴクリと皆が息を呑む。
宝箱は俺が代表して開けることになった。中身ももらって良いらしい。『俺、復活記念』だそうな。意味がわからん。復活も何もそもそも最初から死んでねーよ。
意を決して開けると——たからばこの底の方にちょこんと転がる紫色のガラス玉? ビー玉よりは一回り大きくて、拳で握りしめられるくらい。
「…………ハズレか、これ?」
いまいいち何に使うのかがわからない物体に俺は戸惑いを隠せない。
「大当たりですわよ! これ、力の宝玉じゃありませんか!」
とんでもない、とシータに頭を叩かれた。力の宝玉? なんぞそれ?
「持ち主に力を与える宝玉ですの。ただ鑑定能力がないと、どんな力が上昇するかわからないのですけど……」
「あー、森羅さんの出番ですね、わかります」
じゃあ、発動っと——
名称:龍の宝玉
持ち主の成長速度を速める。他、各種ステータス補正効果もあり。ただし、持ち主を選ぶ。
価格:それを売るだなんてとんでもない!
……なんか良さげだな、これ。最後の一文がやや不穏な感じがするが。何だよ持ち主を選ぶって! まー、嘘をつく理由もないので正直に皆に話した。
「装備品ね。しかも持ち主を選ぶ系の……神山君が持つにふさわしいんじゃない?」
「流れから言って神山っち専用装備くさいよねー、これ」
名前も被ってるしお似合いジャンって、こら湯田うるせぇ! ほかのみんなも友瀬や湯田に同意見らしく、この宝玉は正式に俺のものになった。
シータだけは羨ましそうに俺を見ていたが、お前にはこないだのダンジョンで手に入れた杖があるだろうが! それで満足しとけよ。その杖だってチラッと見た限りじゃ結構良い性能なんだぞ。まるでシータ用に誂えたみたいな感じの!
——じゃ、手に入れるものも手に入れたし街に帰るか!




