……え、俺のレベル上がりすぎ!?
入り口を抜けるとそこは草原だった。所々に木が生えてたり岩があったり、外とあまり変わらない風景が広がっていた。ダンジョンっていうから洞窟みたいなのばかりを想像していた俺からすれば驚きである。……こんなダンジョンもあるんだな。あー、でもゲームとかでも森のダンジョンとかあるから、こういうのもアリなのか。
「このダンジョンは五層構造らしいですけれど、その分一層一層が広いんですのね」
シータがダンマスらしい感想を述べる。やっぱ作り手側として思う所があるんだろうなあ。
「モンスターは弱めだから素材採取にはもってこいだぞ、ここ」
数日前に潜ったという流が補足する。今日、教官が付いて来てないのは一回潜って問題ないと判断したからみたいだ。先日俺が見た彼らの行脚はここの帰りだったらしい。
なお、一番の目玉は最奥ボス討伐後の宝箱。ここのは素材に特化していて、上級ダンジョンの素材が入っていることがあるんだとか。確かに美味しいな。そのせいかチラホラ他の冒険者たちの姿も見える。
「——で、目指すはボスか?」
「いや、道中で素材採取もする。中級つってもここのは品質良いのが多いからな」
ついでに今後のための素材採取もするつもりなんだと。まぁ、慈善事業じゃないもんなー。
*
道々、草を採取したり岩を拾ったりモンスターを倒したり色々していたら、あっという間に最下層へ到着した。やっぱ気心の知れた奴らと一緒にいると時間の流れが早いな。まるで遠足みたいだったが。
それにしてもやっぱ上級職ばかりなだけあって皆凄いな。素材を見る目が完全に職人のそれだ。良いのを見つけた時とか目の色違ってて、少し怖いくらいだ。……こいつら、あっちにいた時と性格変わってるだろ。玉鋼の材料も程なく見つかった。
戦闘面では俺も割と役に立っている。ここまでの経験がちゃんと身についてきたんだなー。中でもコボルト君ちゃんさんとのコンビネーションは抜群だ。何せこの一ヶ月ほどトリオで戦って来たんだ。臨時メンバーなんかには負けないぜ!
ちなみに俺の微妙スキル『威圧』だが、意外な効果があった。弱いモンスターが近づいてこないので経験値効率が半端ない。そして注目すべきはもう一つの効果——俺のレベルプラス五以内の『悪意』を持つモンスターの接近を防ぐ。そう、つまり不意打ちを受けづらいのだ!
これの何が良いかって、神経すり減らしてまで警戒する必要がない。ヤバイやつが来たら警戒するまでもなくわかるからな。特にこのダンジョンは流も言っていたが、中級にしては全体的にモンスターが弱めである。シータが言うには、素材生成にリソースを割いているせいだろうという事だった。このダンジョン俺と相性良すぎねぇ? さっきステータス確認したらレベルめっちゃ上がってたんだが。いくら低いうちは上がりやすいつっても限度があるだろって、内心ツッコミ入れるくらいにはあがってた。これがパワーレベリングってやつか……。
とか思ってるうちにボスらしき巨体を発見した。まだ距離があるから、あちらには気付かれていない。
「ここのボスはゴーレムだから神山は下がっとけ」
鍛治用のどでかいハンマーを構えて流が言った。おうふ、いきなりの戦力外通知か。まー、俺もナイフでゴーレム切るのは無理だと思うから、今回は大人しく下がっとくが。……いまにみてろよ刀を手に入れたらぜってー斬れるようになってやる! ……でも岩とか鉄とか斬れても、こんにゃくは斬れないってオチなんだろうか?




