調理実習で魚捌くのめっちゃ怖くなかった?
ギルドのおばちゃんにゴリ押しして受けた依頼はゴブリン退治。ファンタジー初心者にはお馴染みだな!
定期的に巣を潰さないと増えて街に被害が出るそうなので、低級依頼ではあるが重要な部類に入る。おばちゃんもなんだかんだ言って、俺たちを信頼してくれてるって事か。
「——てなわけで、やってきたぜゴブリンの巣!」
叫んだ瞬間にバチコーンと頭をシータにはたかれた。
「折角隠れて接近したのに何してるんですの、貴方はっ」
ちなみにゴブリンだが、今の俺ではタコ殴りされるとヤバイ位には脅威だったりする。でもな、それが判ってても尚やりたい時があるんだよ!
シータさんはどうか? 彼女なら総力戦で圧倒できます。ダンマスだもの……。
「殿方というのはどうしてこう……」
シータがブツブツなんか呟いてるが無視無視。さて、どんな作戦で行こうか。
ゴブリンの巣は至って普通の洞窟である。入り口には見張り役のゴブリンが一体。そして出入り口が一つしかないのは確認済み。いっそこれ潰して閉じ込め作戦とか? 提案してみた。
「一つ聞きますけれど、あの洞窟を落盤させるスキル持ってますの?」
「……無いっす」
「仮にあったとしても、全滅する前に新たな出入り口を掘られてしまえば意味がありませんわね」
やっぱ一体一体地道に駆除してくしかないかー……。あれ? この依頼もしかして結構ハード?
結局、シータが囮になって見張りを引きつけている間に、俺が中に侵入して間引きするという体で落ち着いた。気配遮断使えば相手に見つからないどころか、急所を一撃でサクッとやれるからな。…………どこの暗殺者だよ、俺!!
よくよく考えるとシータが囮になる必要とか無くね? って気もするが実戦経験が積めるならそれに越した事はない。
「——じゃあ行ってきますわ」
二体のコボルト——見た目は二足歩行のチワワだ。かわいい。しかし武器がゴツい棍棒なのはどうなんだ?——を引き連れ彼女は、見張りゴブリンの知覚範囲へと足を踏み入れた。その勇ましさに惚れそうだ。言質を取られると厄介なので口には出さないが。
俺も急がないとなー。
*
気配遮断を使っての侵入は容易だった。ラスダン手前の雑魚であるグレータービーストですら気付けないものに、始まりの街の雑魚であるゴブリンが気付けるはずもない。
シータに気付いて外に出ようとするゴブリン達を一体一体確実に仕留めていく。……のだが、ナイフは失敗だったかもしれない。リーチが短い故か手に伝わる感触が生々しすぎるというか。なんてーの? 切りづらい生肉を力を込めて無理やり切り裂くような感じ。時折骨に引っかかったり、変に生暖かい液体——間違いなく血だろう——が飛んできたりして後味の悪い事この上ない。あと断末魔の叫びが、な……。俺、命を奪ってるんだなっつーすっげー罪悪感。
早乙女達もこんな感覚だったんだろうか? いやーでもこの感覚が共有できるなら、あそこまでスナック感覚なジェノサイドはできんだろ。それとも野生とダンジョンでは魔物の造りが違ったりすんのか?
今更だけど俺、討伐とか向いてないのかもしれない。
でも効率的なレベル上げには必要不可欠なんだよなー討伐。ステ上げの参考になるかもって城で読んだ本の中に、実証実験の本が混じっててそれに書いてあったんだよ。
日々の経験でもレベルは上がるんだが、ステ値の上りはイマイチでレベルは上がりづらいってな。逆に戦闘を通じて得た経験はレベルが上がりやすい上に、ステ値の上昇も破格なんだと。たぶん命がけか、そうじゃないかの違いだと思う。
しっかし、自衛のための力を得たいなら実戦でレベル上げするのが一番なのに、それが苦手疑惑……。どうしろってんだ!!




