挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

星震戦記

王の名

作者:なりゆきなの
時の果てにおいて、その戦闘機械は目覚めた。上体を起こして周囲を確認し、自然のハンガー、百万の星霜を経た石化樹木から静かに降り立つ。

歩みを進めると、戦機の周囲には楽音が満ちた。駆動系の微かな基底低音。推力器から時折噴出する青白いジェットの掠れた高音。多層装甲の隙間を吹き抜ける風は管楽器のように、まだ暖まらない無数の有機電磁複合筋は弦楽器のように鳴った。騒々しく鳴り響くそれらが徐々に収斂し、規則的なフーガを奏で始めた頃、戦機は予期せぬ戦闘に遭遇した。絞り込まれた高音が黒曜石の岸壁に鋭く反響し、数発の砲音と鋼剣の撃音がそれに続く。

剣を納めた戦機は独り周囲を見渡した。眼前の破壊された戦闘機械に見覚えはなく、過去に相対した敵機の派生型との確証も得られなかった。長い年月の経過で膨大な記憶の一部が揮発した痕跡もあり、戦機は一抹の不安を覚えた。

過去からの命令は、目的地のみを伝えていた。辿り着かねばならない。戦機は再び歩みを進めた。陽が落ち、昇り、また沈み、昇り、落ち、夜が明ける直前に、目的の場所が姿を表した。

戦機を創造した過去の文明の残梓、巨大な構造物が地表に朽ち果てていた。それはかつて、桁外れの力を生み出していた推力器だったが、戦機の途切れた記憶は、その推力が何を駆動していたのか正しい答えを導き出すに至らなかった。

戦機は己の名を思い出すことも出来なかった。彼は既に電子の骸だった。主基と補基が徐々に出力を落とし、遂には永久に停止するその時まで、彼は試みたのだが、遂にその名に辿り着く事は無かった。偉大な王の名にも、王を殺した者の名にも。

(終)

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ