エイプリルフール
「私さ、癌であと半年の命なんだよね」
突然の告白。
君は笑い飛ばすと思ってた。
「え…」
目を見開き、驚きと戸惑いと、いりまざった複雑な表情。
たっぷりの間の後、君は私から目線を反らし呟いた。
「マジかよ…」
予想外の反応。
私は真面目な顔で君をじっと見る。
二人の視線はすれ違う。
「ねぇ…」
君の肩に触れようと手を伸ばす。
君は、震えていた。
「エイプリルフールッッ」
私は君を覗き込み、舌を出す。
きょとん、と目を丸くした後、君は全てを理解したようで。
「あッ…なん…ふざけんなよなっ」
と怒ってみせた。
でも、顔は笑っていて。
本当に優しく笑っていて。
「つーか、エイプリルフールって明日だろ」
「あれっ、そーだっけ?」
えへへ、って笑う私に呆れ顔の君。
そんな君を見ながら私は思う。
嘘をついてごめんね、と。
嘘って言うのが嘘なんだよ、と。
私は繋がれた手を見て思う。
半年先、私たちの手は繋がれたままなのだろうか。
それとも…
私はきっと、明日も君に言うだろう。
「私ね、癌であと半年の命なの」
そしたら君は、
「ばーか」って笑うだろう。
私は微笑みながら
「わかっちゃった?嘘だよッッ」て答えるの。
そして私は嘘をついていないことになる。
君は真実を嘘と思い。
私は真実のままに。
明日しか言えない言葉。
だって、明日は嘘をついてもいぃ日だから。
嘘って言うのが嘘。
君につく、最後の嘘。