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引きニート×2の異世界物語  作者: 夏目蛍/ 橘春流
第一章
8/16

7 長瀬side 肉のお味は

長瀬視点。

「帰ってきましたよーー、っと!!」


 俺は叫び、宿屋の入り口の扉をバーンと大きな音を立てて開ける。


「ちょっと、乱暴にしないで下さいよ!!」

「うるせえ……。」


 という二人の文句は、無視。

 中からは、美味しそうな香りが漂っていた。


 ぐおおおおお…ぐるるるるる…。


 俺の腹から、轟音が鳴り響く。そういえば、お腹が空きすぎて、逆にお腹が空いていたことを忘れていた。

 鼻をクンクンさせて香りを辿っていくと、一つの扉の前に着いた。


「匂いの根源は、ここからだな!」

「ああ、そこは食堂ですよ」


 自信満々に立ち止まると、ケヴィンが教えてくれた。


「やっぱり!」

「お前、実は犬かよ……。」


 予想が的中したことに大きくガッツポーズを作り、黒崎のツッコミは無視して重い扉を開ける。


 __ギギギ……


 食堂では、髪をひっつめにし白い三角巾とエプロンをつけたオバサンが、慌ただしく走り回っているところだった。


「あっ、女将!肉、狩ってきましたよ!!」


 ケヴィンが、オバサンに向かって声をかける。

 あのオバサンが、女将なのか。


「なんですかい〜?って…、え?」


 ニコニコ笑顔で駆け寄ってきた女将さんは、俺等を見て表情を固まらせる。


「な、何?」

「まさか、その肉ッ…!!それはッ……!!」


 俺が驚いて尋ねると、女将さんはブルブルと震えた手で、俺等が背負っていた、ケヴィンが解体したアルクトスの肉を指差した。


「あの忌まれし暴獣、アルクトスの肉ッ!?」

「うん、そうだよ」


 その通りだったので頷くと、女将さんはぽかーんと口を開いたままである。


「凄いんですよ!!この方が、精霊を召喚してあっという間に倒してしまって!!」


 ケヴィンは、「この方」と言いながら俺を指差し、自分のことのように得意気に話す。

 ……アルクトスを倒したのは、俺じゃなくてシオンなんだけどな。


「なんて…こと……。」


 女将さんはそう呟くと、フラフラとした足取りで食堂を出て行った。


「ちょっと待て…、飯は……?」


 俺は、呆然と呟いた。


 


 ☆




 数時間後。


「「「「「いただきまーす」」」」」


 食堂に集まった全員の、食事のあいさつが響き渡る。

 大きなテーブルの周りに腰掛けているのは、俺、黒崎、ゲームとかで出てきそうな冒険者風の服を着た男女と、中世の貴族風な服を着たオッサンというよりオジサマな雰囲気を漂わせた中年男の、五人。

 この五人が、今宿屋に泊まっている全員。女将さんやケヴィンなどの宿の人は、別の場所で食事をしているらしい。


 食卓に並べられているのは、パン、サラダ、そしてアルクトスの肉で作ったらしいステーキ。ステーキ以外のメニューの食材は何なのかは知らないが、調理法なんかは現実世界と同じなようだ。

 変な毒々しい色をしたゲテモノが出てくるのではないか、とちょっとビクビクしていた俺としては、ホッと一安心。


 やっっっと、ありつける飯。

 まず、ステーキを口に運ぶ。 肝心の肉のお味はというと。


「うんめぇ……。」


 高級肉並みの美味しさ。

 

 モグモグ…ムシャムシャ……。


 食卓を囲む全員が、一心不乱に飯を口に運んでいたのだが。


「ん?これは……、アルクトスの肉か?」


 食堂の静寂を打ち破ったのは、肉をお上品に食べていたオジサマ。


「え?」

「アルクトスって……、あの?」


 冒険者風の男女も、驚きの声を上げる。


「このアルクトス…、誰が狩ってきたんだ?」

「「俺等と、ケヴィンだけど。」」

「そうなのか?ちょっと、ついて来い。」


 オジサマは俺等がアルクトスを狩ってきたと知るや、ガタッと立ち上がると食事をしている俺等の後ろまで回り込み、俺のパーカーのフードと黒崎の襟首を、軽々と持ち上げた。


「ぶっ!?」

「うわっ……。」


 オジサマな割に、物凄い力。

 パンを口一杯に頬張る俺と、口元をナプキンでふく黒崎は、オジサマに連行された。





次回は黒崎side。

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