表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きニート×2の異世界物語  作者: 夏目蛍/ 橘春流
第一章
5/16

4 長瀬side 美少女はどこいった

前回長めだったので、今回短め。


長瀬視点。

 目覚めると。


「ここ……、どこだ?」


 視界に入って来たのは、見慣れない天井。俺はお決まりのセリフを呟くと、寝かされていたベッドからガバッと起き上がった。


「ちょっと待て、ちょっと待てよ……、これ、どういう状況?」


 腕を組み、必死に記憶をまさぐる。

 確か、ハンバーガーショップに行って…、その時、黒崎が自作小説を読み上げた途端、渦に吸い込まれて……。


「もしかして、もしかすると、異世界転移しちゃったパターンですか !?」


 そのことに気づき、一気に気分が高揚して叫ぶ。


「異世界といえば……ッ!!そう、可愛い美少女の存在ッ!!俺のことを助けてくれた美少女はどこだッ!?」


 ワクワクしながら叫び、期待に満ちた目できょろきょろと辺りを見渡して__。


「何だ、おまえかよ…」


 視界にあまりにも期待外れなものが入ってきて、がっくりとうなだれる。目の中に飛び込んで来たのは、部屋の隅のソファーに座っている呆れ顔をした黒崎だった。


「悪かったな、助けたのが俺で」


 そんなあからさまな俺の反応に、黒崎はふてぶてしく言う。

 まさか……。こんな筈が……!


「美少女…、美少女は、どこ行った…。」


 俺は虚ろに呟くと、ベッドの中に潜り込んだ。




 ☆




 ぐぅ〜ぐおぉ〜。


 お腹が空いて、目が覚める。


「飯ぃ…。」


 食欲に耐えきれずに夢遊病者の様に部屋を出て、飯を求めて廊下をふらふらと歩く。と、


 __ドンガラドッシーン!!


 踏み出した右足を支える床がなく、文字通りでんぐり返しで転げ落ちた。


「痛っ、つう…!?」


 階段の存在に気付かなかったのだ。恨めしげに顔を上げると。


「フッ…、クク…、格好悪っ……!!」


 目の前に、黒崎が立っていた。黒崎は、おかしくてたまらない、というように、涙目ではあはあと荒い息を吐いている。


「悪かったな、格好悪くて」


 ムッと口を尖らせた俺は、ブスっとした顔で服についた埃を払いながら、立ち上がる。


「それで、ここは異世界のどこなんだ?」


 寝たことによって、高揚は大分収まった俺は、やっとのことで笑いがおさまったらしい黒崎に尋ねてみた。


「宿屋だ。まあ…、色々あって、な」


 黒崎は、言葉を濁しながら答える。

 ……一体、何があったんだ。


「まあ、ちょうどいい。おまえに用があったんだ」

「用って、何だ?」

「ちょっと、肉を狩ってこい、って言われたからな。という訳で、これを持て」


 黒崎がちょうどいいというように手を叩いたので、何だよと聞き返すと、木の枝らしき物を手渡して来た。


「肉ぅ?何で俺達が?」


 ええーと、不満気な声を出す。肉なんて、普通の人生を送ってきた俺は狩ったこと無えぞ。異世界らしいといえばそうだけど…。


「この宿の女将さんに頼まれたんだ。ほら、何しろ俺達はタダで泊まらせてもらってるから。これくらいは当たり前だろ、って言われたんだ」

「で、こんな弱っちそうな棒切れで、どうしろと。」


 俺は、黒崎に手渡された棒切れを、恨めしげに見つめる。カッコイイ剣ならともかく、この棒切れだと風が吹くだけで折れる気しかしない。


「知るか。俺だって困ってるんだ」

「ええ……。」

「まあ、旅館の人も付いて来てくれるらしいけどな……」

「それなら、大丈夫だな」


 黒崎の言葉に、俺はあっけらかんと言う。その「旅館の人」とやらに任せればいいや、という見事なまでの楽観思考。


「じゃあ、とりあえず外に出るか。旅館の人、待たせちゃってるしな」


 そう言うと黒崎は、俺のパーカーのフードをガシッと掴んだ。


「えぇ……、飯ぃ……。」


 と、力なく呟く俺を、黒崎はズルズルと引っ張って行った。









 

次回は長瀬side。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ