14 長瀬&黒崎side 踊り子姉妹 ★
長瀬&黒崎視点。
「どこ行く気だ?」
ジロジロと羨ましさ半分、悔しさ半分くらいの視線を浴び、肩身が狭い俺は、先を歩くミラに呼びかける。
「ここです」
俺への返答の代わりに、ミラはいきなり立ち止まった。
見ると一つのテーブルがあり、その上に赤と黒のルーレットが__。
「ギャ、ギャ、ギャ、ギャンブルゥッ!?いやいや無理無理!!俺、金持ってねえし!!」
背中に冷や汗が流れる俺に、ミラはニコッと笑いかけた。
「ご安心ください、お客様。一回だけですし、金を払うようなことはありませんから!」
「そ、そう…?」
逃げ出そうとした俺は、ミラに宥められる。ミラは俺を無理矢理椅子に座らせると、俺の反対側の席に座り、黒と赤のサイコロを出した。
「では、私は赤、お客様は黒に致しましょう」
ミラが手渡してきた、黒いサイコロを受け取る。
「ルールは簡単にいきましょう。ルーレットを回し、数字を言いながらサイコロを投げ込む。サイコロが自分の色のところに落ち、かつサイコロの目が自分の言った数になったら、その人の勝ちです」
「なるほど……、大体分かった」
ミラの説明を、ゲームで鍛えた理解力ですぐさま理解し、頷く。
「じゃあ、どっちが先攻?」
「サイコロを回して決めましょう」
ミラの言葉でサイコロを回し、いっせーのーせで出た俺の目は4、ミラの目は6。
「では、お先に失礼します」
そう言うとミラは突然横を向き、右手で顔を押さえた。
「ど、どうした?具合が悪いのか?」
ミラは、俺の言葉には答えずに、手は押さえたままで顔を戻すと、フッと笑った。赤い目が、キラリと光る。
「我は身体に妖精を宿りし者!妖精は告げているッ……!!」
「えっ……。」
ミラがいきなり奇妙なことを口走り始め、俺は唖然とする。さっきまでお淑やかな踊り子モードだったミラが、いきなり厨二モードになった…!?
「此処はッ!6だと!!」
ミラはらんらんと目を輝かせながら叫び、ルーレットを回すとサイコロを入れ込む。
回る、回る。やがて止まったのは_。
「赤…?しかも、サイコロの目は6……!!」
「フッ…、貴様、我の強大な力を前に平伏すがいいッ!!」
驚く俺に、ハハハ、とミラは高らかに笑う。
…完全に厨二…。
「それではッ!我が貴様に一つ要求をしようではないか!!」
ミラは、顔をグンと近付けてくる。
ち…、近い…。
何を要求する気だ?俺の体は強張る。永遠のように長い1秒が過ぎ__。
「また明日も、いらっしゃってください!」
ミラは、踊り子モードで天使のような笑顔で微笑んだのだった。
========================================
「あー…、あいつ、連れてかれたなー……。」
ミラに連れてかれた長瀬の後ろ姿を見ながら、そう呟く。
「お客様?」
いきなり声をかけられ慌てて横を向くと、ミアがニッコリと微笑んでいた。
「お酒はいかがですか?」
「いや、俺は未成年なんで。」
酒のボトルを握るミアに、ごめんねと慌てて手を振り断る。
「あら、そうなんですか。実は、私も未成年でして。今年、18になります」
「へえ…。」
ミアの実年齢に、俺は素直に驚く。踊り子だからか大人っぽいオーラを漂わせてるけど、実は俺より年下らしい。
「それで、あいつ等は何してるんだ?」
目を細めながら長瀬の背中を見つめ、尋ねる。ちょうど、長瀬とミラがテーブルの周りに腰掛けるところだった。
「アレは、ミラの特技の賭けです。見に行ってみますか?」
「じゃあ、行ってみるか」
ミアの誘いに頷くと、よいしょと立ち上がる。そして、長瀬達の隣のテーブルについた。
ちょうど、ミラが賭けのルールを説明し終わったところらしい。
「我は身体に妖精を宿りし者!妖精は告げているッ……!」
突然、ミラが高らかに叫んだ。
「え?妖精宿してんの?すげえ」
「いえ、ミラはそんなものは宿していません。単にかなりの強運の持ち主、ってだけです」
「そ、そうなんだ……。」
ミラの言葉に驚く俺。そんな俺にかかったミアの言葉にまたもや驚きながら、また長瀬達に視線を戻す。
ミラが、サイコロをルーレットに投げ込む。やがて、ルーレットが止まり__。
「す、すげえ!!やっぱりあれ、絶対妖精宿してるだろ?」
本当に妖精を宿しているのではないかと思わせる程、ミラはあっさりと賭けに勝った。ミラの中には何かいる、絶対にそうだと確信して、ミアに再度聞くと、
「いえ、ミラの戯事です」
「そ、そう……。ミアは、ミラには厳しいの?」
ミアの過剰な程にキッパリとした否定に、俺は首を傾げる。すると、ミアの肩はビクッと震えた。何か不味いことを聞いたかと不安になり、ミアの顔を窺う。
「いえ、私は…、自分に甘いだけです。」
「……え?」
ミアはどこか自嘲的に笑った。「自分に甘い」とはどういうことだろうと思い、聞き返そうとしたが、
「いえ、何も。…お連れ様が、いらっしゃいましたよ」
ミアの誤魔化すような言葉に、見ると長瀬が伸びをしながら歩いてくるところだった。
「ふわあ…、俺、腹減ったし何か頼もう__」
「そろそろ帰るぞ」
俺は、何やら言いかけた長瀬のフードをがしりと掴むと、立ち上がる。
もうここに来てから数時間くらい経ってそうだし、さすがに帰らないとまずい。
いやあ、パーカーのフードって便利だ。
「えぇ〜〜〜!?俺、まだここにいたい〜〜〜!!」
手足をバタバタさせて駄々をこねる長瀬。幼稚園児か。
俺ははあと溜息をつき、店の出口へ向かう。
「「御来店、ありがとうございました」」
双子の踊り子達のお辞儀に見送られながら、俺等は飲み屋を出た。
次回は長瀬side。




