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引きニート×2の異世界物語  作者: 夏目蛍/ 橘春流
第一章
15/16

14 長瀬&黒崎side 踊り子姉妹 ★

長瀬&黒崎視点。

「どこ行く気だ?」


 ジロジロと羨ましさ半分、悔しさ半分くらいの視線を浴び、肩身が狭い俺は、先を歩くミラに呼びかける。


「ここです」


 俺への返答の代わりに、ミラはいきなり立ち止まった。

 見ると一つのテーブルがあり、その上に赤と黒のルーレットが__。


「ギャ、ギャ、ギャ、ギャンブルゥッ!?いやいや無理無理!!俺、金持ってねえし!!」


 背中に冷や汗が流れる俺に、ミラはニコッと笑いかけた。


「ご安心ください、お客様。一回だけですし、金を払うようなことはありませんから!」

「そ、そう…?」


 逃げ出そうとした俺は、ミラに宥められる。ミラは俺を無理矢理椅子に座らせると、俺の反対側の席に座り、黒と赤のサイコロを出した。


「では、私は赤、お客様は黒に致しましょう」


 ミラが手渡してきた、黒いサイコロを受け取る。


「ルールは簡単にいきましょう。ルーレットを回し、数字を言いながらサイコロを投げ込む。サイコロが自分の色のところに落ち、かつサイコロの目が自分の言った数になったら、その人の勝ちです」

「なるほど……、大体分かった」


 ミラの説明を、ゲームで鍛えた理解力ですぐさま理解し、頷く。


「じゃあ、どっちが先攻?」

「サイコロを回して決めましょう」


 ミラの言葉でサイコロを回し、いっせーのーせで出た俺の目は4、ミラの目は6。


「では、お先に失礼します」


 そう言うとミラは突然横を向き、右手で顔を押さえた。


「ど、どうした?具合が悪いのか?」


 ミラは、俺の言葉には答えずに、手は押さえたままで顔を戻すと、フッと笑った。赤い目が、キラリと光る。


(われ)身体(しんたい)に妖精を宿りし者!妖精は告げているッ……!!」

「えっ……。」


 ミラがいきなり奇妙なことを口走り始め、俺は唖然とする。さっきまでお淑やかな踊り子モードだったミラが、いきなり厨二モードになった…!?


「此処はッ!6だと!!」


 ミラはらんらんと目を輝かせながら叫び、ルーレットを回すとサイコロを入れ込む。

 回る、回る。やがて止まったのは_。


「赤…?しかも、サイコロの目は6……!!」

「フッ…、貴様、我の強大な力を前に平伏すがいいッ!!」


 驚く俺に、ハハハ、とミラは高らかに笑う。

 …完全に厨二…。


「それではッ!我が貴様に一つ要求をしようではないか!!」


 ミラは、顔をグンと近付けてくる。

 ち…、近い…。

 何を要求する気だ?俺の体は強張る。永遠のように長い1秒が過ぎ__。


「また明日も、いらっしゃってください!」


 ミラは、踊り子モードで天使のような笑顔で微笑んだのだった。




========================================




「あー…、あいつ、連れてかれたなー……。」


 ミラに連れてかれた長瀬の後ろ姿を見ながら、そう呟く。


「お客様?」


 いきなり声をかけられ慌てて横を向くと、ミアがニッコリと微笑んでいた。


「お酒はいかがですか?」

「いや、俺は未成年なんで。」


 酒のボトルを握るミアに、ごめんねと慌てて手を振り断る。


「あら、そうなんですか。実は、私も未成年でして。今年、18になります」

「へえ…。」


 ミアの実年齢に、俺は素直に驚く。踊り子だからか大人っぽいオーラを漂わせてるけど、実は俺より年下らしい。


「それで、あいつ等は何してるんだ?」


 目を細めながら長瀬の背中を見つめ、尋ねる。ちょうど、長瀬とミラがテーブルの周りに腰掛けるところだった。


「アレは、ミラの特技の賭けです。見に行ってみますか?」

「じゃあ、行ってみるか」


 ミアの誘いに頷くと、よいしょと立ち上がる。そして、長瀬達の隣のテーブルについた。

 ちょうど、ミラが賭けのルールを説明し終わったところらしい。


「我は身体に妖精を宿りし者!妖精は告げているッ……!」


 突然、ミラが高らかに叫んだ。


「え?妖精宿してんの?すげえ」

「いえ、ミラはそんなものは宿していません。単にかなりの強運の持ち主、ってだけです」

「そ、そうなんだ……。」


 ミラの言葉に驚く俺。そんな俺にかかったミアの言葉にまたもや驚きながら、また長瀬達に視線を戻す。

 ミラが、サイコロをルーレットに投げ込む。やがて、ルーレットが止まり__。


「す、すげえ!!やっぱりあれ、絶対妖精宿してるだろ?」


 本当に妖精を宿しているのではないかと思わせる程、ミラはあっさりと賭けに勝った。ミラの中には何かいる、絶対にそうだと確信して、ミアに再度聞くと、


「いえ、ミラの戯事です」

「そ、そう……。ミアは、ミラには厳しいの?」


 ミアの過剰な程にキッパリとした否定に、俺は首を傾げる。すると、ミアの肩はビクッと震えた。何か不味いことを聞いたかと不安になり、ミアの顔を窺う。


「いえ、私は…、自分に甘いだけです。」

「……え?」


 ミアはどこか自嘲的に笑った。「自分に甘い」とはどういうことだろうと思い、聞き返そうとしたが、


「いえ、何も。…お連れ様が、いらっしゃいましたよ」


 ミアの誤魔化すような言葉に、見ると長瀬が伸びをしながら歩いてくるところだった。


「ふわあ…、俺、腹減ったし何か頼もう__」

「そろそろ帰るぞ」


 俺は、何やら言いかけた長瀬のフードをがしりと掴むと、立ち上がる。

 もうここに来てから数時間くらい経ってそうだし、さすがに帰らないとまずい。

 いやあ、パーカーのフードって便利だ。


「えぇ〜〜〜!?俺、まだここにいたい〜〜〜!!」


 手足をバタバタさせて駄々をこねる長瀬。幼稚園児か。

 俺ははあと溜息をつき、店の出口へ向かう。


「「御来店、ありがとうございました」」


 双子の踊り子達のお辞儀に見送られながら、俺等は飲み屋を出た。



挿絵(By みてみん)



次回は長瀬side。

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