13 長瀬side なんだか異世界の飲み屋っぽい
長瀬視点。
「おお…。」
ギルマスの書いた地図がよく分からなかったので、すれ違った人に尋ねまくって、やっとのことで辿り着いた飲み屋。
扉を開けると、軽快な音楽が飛び込んできた。
いらっしゃいませ〜と女店員が近付いて来て、一番奥の席を案内される。
ごゆっくり〜と店員は立ち去って行った。
店内を見渡すと、沢山の人達が酒を飲みながら談笑している。そして、ギルドの本部が近いからか、冒険者風の人達も多いことに気づく。
「姉ちゃんっ!酒もう一杯っ!!」
隣のテーブルのひげもじゃの男が、別の女店員に叫んでいる。
いいねいいね、これ!異世界の飲み屋っぽい!!
そう思いながら、右手をビシっと高く上げ、
「姉ちゃん!酒一杯っ!!」
「未成年は飲酒禁止」
注文しようとして、すかさず黒崎にペシっと頭を叩かれた。
☆
19歳の俺達は、結局烏龍茶とフライドポテトと唐揚げらしきものしか頼めず、ちびちびとそれを食べていた、その時。
辺りから、オオッという歓声が湧いた。
「な、なんだ?」
顔を上げると。
二人の少女達が、歓声を浴びながらステージに上がるところだった。
俺等のテーブルは、ステージの真正面、最前列の、一番の特等席。ステージに向き直り、じっくりと眺める。
一人は、黄色のリボンで結わえたポニーテール。
もう一人は、同じく黄色のリボンで結わえたツインテール。
二人共赤色のチャイナドレスを着ていて、栗色の髪に、赤い瞳。猫を思わせる吊り上がった瞳は、パッツン前髪とよく似合っている。
これはまるで_。
「ふ、ふ、ふ、双子ーーーー!?」
「そうだぜ、兄ちゃん!」
叫ぶと、横から声がかかる。
見ると、先程女店員に注文していたひげもじゃの男。
「俺は、この為に来てるって言っても、過言じゃないねえ。あれは、この店一番の踊り子達だよ。ポニーテールが双子の姉のミラ、ツインテールが双子の妹のミアさ」
「へえ…」
男の説明に納得し、改めてステージに向き直る。
ミアは、あらかじめ用意されていた琴を前に座り、ミラは、ステージの中央で何やら煽情的なポーズをとる。ミラに、ステージ中のスポットライトが集まった。
そして__。ミアの美しい琴の音色と共に、ミラが踊り出した。
先程まで賑やかだった飲み屋に、琴の音だけが響く。
哀しげなメロディーと共に始まり、ミラはゆったりと大人っぽい仕草をしたかと思えば、楽しげなメロディになると、ヒールの高い靴でクルリと回ったり、軽快なステップを踏んで人々の手拍子を誘ったりする。
ミアの美しい琴の音色と、ミラの華麗な踊りに、俺は息をするのも忘れて引き込まれていた。
ミアがポロンと弾き終えると、美しい余韻が飲み屋中に響いて、消えていった。
途端に、ワッと拍手が鳴り起こった。何人かは、立ち上がって声援を送っている。俺も、力一杯拍手を送った。
ステージ中にお金が投げ込まれ、店員達が袋に入れて回収していく。
双子達は、一通り礼をした後、ステージからぴょんと飛び降りて_。
「「こんばんは、お客様?」」
ミラが俺の隣に腰掛けると、ミアは黒崎の隣に腰掛けた。
「くそっ…!こいつ等、俺の天使達を独占しやがって……!!」
後ろから先程の男の悔しそうな声が聞こえた気がするが、何も聞かなかったことにする。
「えっと…、こんばんは」
俺等のテーブルに来たことを驚きながら、挨拶を返す。
「お客様は、初めての御来店ですよね。どちらからいらっしゃったのですか?」
「まあ、かなーーーり遠いところですね。それで、ギルドに入ることにしたんです」
ミラの口調につられて、俺も丁寧に答える。
「その、『かなーーーり』というところが気になりますが…、へえ、冒険者様なんですね!確かに、そんな感じですものね」
「ちょっと待て、あいつは俺のこと『貧弱な筋肉』とか言ってたし…、つまりは、どういうこと?」
「冒険者の様に希望に満ち溢れた明るい目をしている、ってことですよ!」
「それを言うなら、あれだな、ミラは、紅いバラのように美しい瞳をしているな、そのまんまだけど」
ミラのお世辞に真っ赤になった顔を隠すように、俺もミラに対して思ったことそのまんまを言う。ミラは、俺の切り返しにきょとんとした後、クスクスと笑い出した。
「まあ、お客様、御上手ですね!少しあちらへ行きましょう?」
ミラは俺の手を握ると立ち上がり、歩き出した。
次回は長瀬&黒崎side。




