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引きニート×2の異世界物語  作者: 夏目蛍/ 橘春流
第一章
12/16

11 長瀬side 新人担当エマ

長瀬視点。

「ま、まさかッ……!!」


 最上階のだだっ広い部屋の奥で肘掛け椅子に座り、机に頬杖をつくギルマスは、かなり興奮しながら口を開く。


「ナガセの周りに、何やらフワフワ漂っているんだが……?」

「ははー、すまんすまん。俺のシアンだよ」


 ギルマスの質問に答えながら、「シアンは俺のもの」宣言をする。そして、そっとシアンの反応を窺うと、


「…私は、あなたのものになった記憶はないけど、タクト」

「え!?違うの!?」


 冷ややかな視線で指摘され、大げさに驚く真似をして聞き返すと、シアンは肩を竦める。

 わあ…。そういう呆れ顔もいいなあ…。

 思わず見惚れてしまう俺。


 そんな俺を無視して、ギルマスはサッと立ち上がると、ブルブル震えながらシアンに敬礼。ダラダラと涙を流しているので、若干気持ち悪い。

 黒崎が何やらシアンに囁くと、シアンは頷き、壁をすうっと抜けていった。

 寂しげに手を振る俺の横で、ギルマスはシアンがいなくなったのにも気付かず、敬礼し続けていた。







「で、何の用なんだ?」


 黒崎は、やっとシアンがいなくなったのに気付いたらしいギルマスに尋ねる。


「ちょっとこれからのことを、ね。」


 そう言うとギルマスは、またさっきの椅子に座ると、扉に向かって呼びかけた。


「おい、エマ!どうせおまえのことだから、盗み聞きしてるんだろ?入って来い」

「はーい」


 悪びれた様子もなく返事と共に扉が開き、入って来たのは一人の女性。

 俺等よりは、明らかに歳上だろう。黄色い瞳に、深い藍色のショートカットという髪型。髪と同じ色の眼鏡。異世界チックな変なインナーに変なジャケットという服装。

 ふむ。まあ美人な人ではあるけど、俺の好みではない、かなあ……。

 などと考えている内に、女の人は俺等の隣に並んだ。


「そいつがエマだ。一応、新人への指導なんかを担当している。何か聞きたいことがあったら、そいつに尋ねるんだな」

「宜しくね!」


 エマは、俺等に笑顔を向ける。


「はははははハイ!!」


 急に話しかけられ慌てて直立不動する俺の隣で、黒崎ははあと溜息を吐く。


「じゃあ、ナガセとクロサキは、仮部屋に行ってろ。俺はエマに用があるから」


 そう言うとギルマスは、俺等に鍵を渡してきた。


「仮部屋?」

「ああ。寝床がない団員に、ひとまず貸してやる部屋だ。そこでゆっくりするんだな」


 出てった出てった、と、俺等はギルマスに追い出された。







「何年振り?マスターが私に新人を任せるなんて!」


 長瀬達が出て行った扉を見ながら、エマが呟く。


「おまえの新人を立派に育て上げる腕だけは、評価しているからな」

「そんなに見込みがあるの、あのコ達?」

「ああ。あいつ等のステータスは、並の冒険者のものじゃなかった。しかも一人は、大精霊を使役できる精霊使いだ」

「えっ!?だ、大精霊!?マジで!?」


 エマはギルマスの机まで近寄り、興奮した面持ちで尋ね、身を乗り出す。


「マジだ。」


 ギルマスは、エマを見上げてキッパリと答える。


「嘘、本当に?これは…、教え甲斐がありそう…!!」


 エマは、ぐっと両手を握る。


「そういうことだ、心して指導しろ」

「ハイ!!分かりましたあああああ!!」


 ギルマスの言葉を聞くが早いか、エマは物凄い勢いで部屋を飛び出していった。


「…あいつに任せて、正解だったか…?」


 部屋に一人取り残されたギルマスは、はあと溜息をついた。




 その頃。


「「狭ーーーーー!?」」


 やっと人二人が寝れるか、というくらいの仮部屋の狭さに、叫ぶ長瀬達であった。







「では、まずっ!!自己紹介と行きましょうっ!!」


 やたらとテンションの高いらしいエマは、拳を振り上げる。

 エマのバカでかい声が、今俺達のいる練習室中に響き渡った。


「私は新人担当のエマっ!!何かあったら、バンバン聞いてね!じゃあ、君達も自己紹介して!!」

「俺は、長瀬拓斗」

「ふむふむ、たっくんね!」

「ええっ!?」


「俺は、黒崎宙」

「ふむふむ、クロっちね!」

「はあっ!?」


 エマのあまりのあだ名の付け方に、呆然とする俺達。

 たっくんて…、幼稚園以来だぞ…。

 黒崎を見ると、あまりのことに震えている。


 ことごとくテンションが高く、変なあだ名をつけるエマ。

 …なるほど、こういう奴か。エマの大体の性格を理解。


「ではではっ!まず手始めにっ…!!」


 エマの言葉に、俺はゴクっとつばを飲み込む。

 この練習室に連れて来たくらいだ、何を言いだすか分かりやしない。いきなり腹筋100回とか言い出しても、全然おかしくない。

 などと思っていたら、想定外の発言が降りかかってきた。


「__武器屋に行きましょうっ!!」

次回は黒崎side。

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