10 黒崎side どこの世界にもチンピラはいる
黒崎視点。
「おっそーーい!!」
長瀬が、うがーと叫び声を上げる。
「あのオジサマ…、数分とか言っときながら、絶対三十分以上経ってるじゃねえかっ!?この世界の時間軸、分かんねえけどさ!?」
「確かに、あのギルマス、遅いな……。何してんだ?」
長瀬の文句に、珍しく俺も同意する。
俺等のチートステータスが判明し、長瀬が一通りウハウハし終わった後、ギルマスは「あ、ちょっと用があるから、そこのソファーで数分待ってて」と言い残して、フロアの奥にそそくさと行ってしまった。
それで今、この状況な訳だが…。
「うん、遅い。」
俺がキッパリと言った、その時。
フロアの奥から足音がして、人影が現れた。
「「あ……、やっと来た?」」
期待を込めて、2人揃って目を凝らす。
が、現れた人影はニワトリのトサカみたいな髪型に、虎柄の暑苦しい胸板を出した服装で、タバコを咥えた、いかにもチンピラ感満載の若い3人組だった。
……うわあ。
「てか、この世界にも、チンピラっているんだな……。」
長瀬がひそひそと囁きかけてきた。
「あのチンピラ達が俺等に絡んでくる、とかそんなことはないよな……?」
と俺が囁き返した、その時。
不意に、そう、全くの偶然(そう思いたい)に、そのチンピラ達と俺の目が、バッチリと合ってしまった。
「おい、おまえ等ぁ!!何ガン付けてんだぁ!?あぁん!?」
三人組の内最も体格の大きい、リーダー格風の男が、叫びながらズンズンとこちらに向かって歩いて来た。
俺等は、あまりのことに完全に固まった。
「黒崎、やっぱお前一級フラグ建築士の称号持ってるだろ!!」
「要らない、欲しくない、持ちたくない!!」
俺等がそんな会話をしている間にも、そのリーダー格の男はずんずんと近づいてくる。まるで、我々の死を告げる死神の如く、闊歩する。そして、俺達の前でピタリと止まった。
リーダーは、長瀬のパーカーのフードと、俺の襟元を、それぞれ持ち上げた。
「ナメてんのか、おまえ等ぁ!?おい、ルイとレイ、こいつ等のカバンを取り上げろ!!」
「へーい、ライ」
「りょーかい、ライ」
リーダー、ライの命令に、その子分らしいルイとレイは気だるげに返事をし、俺と長瀬のバッグを取り上げたかと思えば、ハイエナのようにごそごそと弄り始めた。意地汚い感じが、残念感を醸し出しているというか。
突然長瀬がプルプルと震えだした。ライにはその顔が見えないのか怪訝そうな顔をしているが、かなりやばい顔をしている。
「何やってんだ、おまえ等ぁっ!?」
長瀬が、拳を振り上げる。
お、いいぞ長瀬!!そのままぶっ倒せっ!!内心、期待を込めた声援を送ったのだが。
__ぺし
……。
見ると、長瀬の拳は、ライの頰に当たったまま動かない。
…ドッカーンでも、バッシーンでもなく、ただぺし、となっただけだった。
いや、ぺしかよ!?もっと威力出せよ!?
「ハハハハハ!!おまえ達、どうしようもなく弱いなあ!!こんなにギルドに入ろうとするとか、俺等をナメているとしか思えねえよなあ!?」
「う、ぐぅッ!!は、なせよ、このクズ野郎!!」
大笑いするライに、長瀬は口早に罵り始める。
「なんだと!?」
そりゃ当然、こうなるだろう。激怒したライは、もっと強く襟元を持ち上げた。
もう俺に出来ることは眠ることだけだ。我関せずという感じで俺は目を閉じた。
「シアンーーー!!!!」
そんな俺の鼓膜に響く、長瀬の叫び。
「あ?おまえ、気がおかしくなったのか?よりにもよって、大精霊の名を叫ぶなんて…よ…。」
チンピラは、最後まで言い切れずに崩れ落ち、泡を吹いて気絶する。ざまあねえな、ざまあと心の中で思う存分罵った後、俺等は解放された。
「あら、タクト。とりあえずノリで倒したけど、いいの?」
チンピラの背後には、スカートをしっかり押さえたシアンが漂っていた。どうやら、シアンがライを倒してくれたらしい。
「ああ!助かったよ!!やっぱり可愛い!!」
一人でギャーギャー騒いでいる長瀬は置いといて振り返ると、ルイとレイは、そろそろと逃げ出そうとしているところだった。
ルイとレイは、俺等に見つめられ、ハッとした顔をする。
「「すみませんっしたああああ!!」」
チンピラ二人は、ライを引きずり、ギャーと叫びながら逃げていった。
長瀬は隣で、ざまあと笑っている。
……弱肉強食が激しい世界なんだな。
☆
「やあ、待たせたな〜。便所行ってもなかなか出なくてさ〜〜」
ギルマスが、ニコニコと手を振りながら登場。
…便所……。
「「ふざけんなあああああ!!」」
俺等二人の叫び声が、フロア中に響き渡った。
次回は長瀬side。




