9 長瀬side 男のロマンを邪魔するな
長瀬視点。
「「でっけえ建物〜〜。」」
俺達は、二人揃って目の前の建物を見上げる。
その高くそびえる建物は、ギルドの本部。まるで中世にタイムスリップしてきたような外観である。
「しっかし…、やっと異世界冒険っぽくなってきたな……。」
「だな…。」
俺と黒崎は、ウンウンと頷き合う。
あのオジサマ、ギルマスの勧めで、俺達は喜んで(黒崎は若干引き気味だったが)ギルドに入ることになったのだ。
ギルド。そんな男のロマンに、飛び込まない訳がないだろ!
「おい、何立ち尽くしてんだ?さっさと入りな」
後ろに立つギルマスから、不思議そうな声がかかる。
「へーい……。」
男のロマンを、邪魔するなよ…。
心の中でそう呟きながら、短い返事をすると扉を開ける。
中に入ると、ギルマスは「こっちに来な」と、大股闊歩で歩き出した。そして、カウンターのような所で立ち止まる。
「はい、どんな御用件ですか?…って、マスター!?」
カウンターにいたお姉さんは、ギルマスを見ると慌てて立ち上がり、ペコペコと頭を下げた。
ああ、この世界にも上下関係というものがあるんだ…。ぐすっ……。
「いいよいいよ、そんなに畏まらなくて。…えっと、こいつ等をギルドに入れてやってくれ。面倒な手続きはさせなくていいから、俺の推薦ってことで」
「あっはい、分かりました!ではお客様…、この水晶に手をお乗せ下さい」
ギルマスの命令を聞いたお姉さんは、カウンター脇の紫水晶を指し示した。
何だこれ?
そう思いながら、とりあえず水晶に手を乗せてみると。
水晶は、勢いよく輝き始めた。
「うおっ!?何じゃこりゃっ!?」
「ギルドの団員カードを作ってるんだ。カードには、ステータスなんかも書かれている」
驚いて叫ぶと、ギルマスに説明される。ちょっと待て、聞き逃せないものが!?
「おお!?ステータスッ!?これはこれはッ…!俺のチート能力が判明する瞬間ッ…!!異常なる値が出るかッ…!もしくは、超強い激レア能力を手に入れるかッ…!どうなるッ…!?」
ウキウキしながら、水晶が様々な色に輝くのを眺める。
「訳の分からんことを言ってないで、そろそろ手を離してみな」
「訳の分からんことじゃねえっ!これは、ひっじょーうに重要な案件ッ…!!」
ギルマスにそう言い返しながら、恐る恐る手を離すと。
__ブォン…。
水晶は赤く輝き、一枚の紙が浮かび上がった。
なになに…。
ワクワクしながら目を通し始めたのだが。
「読めねー!!」
思わず投げ捨てそうになる。古ぼけたその紙には、正体不明の文字で何やら記されていた。…けど、まだ転移してきて数日の俺に、何を期待しているんだ。
「読めないのか?まったく、おまえ達の親は何をしているんだか……。では、俺が読んでやろう」
ギルマスは呆れたように言うと、俺の手から紙を取り上げた。
「『ナガセ タクト 職業 精霊使い 火属性 HP 105 MP 500』…って、何じゃこりゃーー!!」
「え?すごいの?」
ギルマスは俺の紙を読み上げる途中で、奇声を発する。淡い希望を抱きながら尋ねると、
「すごいってものじゃないぞ!!普通の人間なら、頑張ってこんくらいに辿り着けるか、ってくらいだ!!」
呆然とした面持ちのギルマス。
俺はこの現実を噛み締め、
「っしゃあ!!」
大きくガッツポーズ。
これで…、俺の異世界ライフは安泰だあっ!!
「おい、俺のも」
いつの間にか鑑定したらしい黒崎は、ギルマスにカードを差し出す。
「えっと……」
ギルマスは、黒崎の紙をざっと眺め回し、
「何じゃこりゃーー!?」
またもや、ギルマス渾身の叫びがフロア中に響き渡った。
次回は黒崎side。




