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引きニート×2の異世界物語  作者: 夏目蛍/ 橘春流
プロローグ
1/16

プロローグ 長瀬side 第一印象

ファンタジー連載、始めました!


是非とも宜しくです!


今回は長瀬視点。

「こんにちは!!長瀬拓斗(ながせたくと)です」

「こんにちは、黒崎宙(くろさきそら)です」


 俺が少し頭を下げて自己紹介すると、同じように挨拶を返して来たのは、朝シャンでもしたかのような整った黒髪に三白眼の男。左目の下にある泣きぼくろが印象的である。格好は、白いドレスシャツにループタイと、クラシックな雰囲気だ。


「そ、れにしてもっ…、なんだよその格好!引きニートの癖にっ…。何格好つけてんのっ……、片腹痛っ!!」


 俺は、腹筋を押さえながら、なりふり構わず思いっきり笑う。 今時こんな服装している奴がいたんだ、という驚きを隠し切れない。

 ……やばい、笑い過ぎて、涙で視界がぼやけてきた。こんなに笑ったの、久々過ぎる……などと考える。


「うるっ…さいな……。俺は引きニートじゃなくて、ネット小説家だし。一応、本だって出てるし。」

「売れてないけどな」


 黒崎の必死の抵抗にすかさず突っ込むと、黒崎はムッとした表情をつくる。


「そんなことを言うなら、おまえだって引きニートだろっ!?そのよれよれのTシャツにパーカー、ジーンズという格好。いかにもそんなオーラかもし出してるじゃないかっ!!」


 黒崎は、びしっと俺を指差してきた。言ってやったとでもいうような、得意げな顔。

 だが、俺はそんなことには怯まない。


「ふっ…、確かに、俺は家に引きこもっているのかもしれない。だけどな、俺にはちゃーんと職があるんだ」

「へえ、どんな?」


黒崎の余裕ぶった表情での質問に、俺も余裕の笑みで、


「家の守り人」

「ぶっ!!」


 俺が堂々と宣言すると、黒崎は思いっきり吹き出しやがった。何がおかしいんだ?「家の守り人」ってのは、命懸けで家を守るっていう、れっきとした職だぞ?


「それにしても、初対面の奴とこんなに喋ったの、初めてだな……。」


 黒崎は、笑い涙を拭いながらそう呟く。


 こんなに叫んでて、周りからは仲良し同士に見えるだろうけど、実は俺達、初対面である。

 とはいえ、全く喋ったことがないといえば嘘になる。ネット上でよく会話していた。

 俺達が出会ったきっかけは、ネット小説サイト。黒崎は実は書籍化までされてるネット小説家で、俺はその小説のファン、という形だった。

 そしてその小説について作者様と語っている内に仲良くなり、ノリで会おうということになったのだ。

 

 それで今、このターミナル駅で待ち合わせていた、という訳だ。


「それにしても、おまえの第一印象は、『目つきが悪い』だな」


 こいつに声をかけると、三白眼で睨みつけるように見てきたので、思わず後ずさりしそうになった。

 少しばかり暗めの小説書いてるし、それも当然か__、などと思ったものだ。まあ、その印象は今の大爆笑する姿からして、すでに覆されたのだが。


「それなら、おまえの第一印象は『変人オーラ醸し出してんな〜、いかにも引きニートだな〜』だな。そしてその痛バッグがさらに__」

「じ、じゃあ!とりあえず昼飯食おーぜ!!腹減ったし!!」


 黒崎の散々な評価をそれ以上聞きたくなくなった俺は、勢いよく拳を振り上げる。ちょうど、俺の腹がぐうと鳴った。

 黒崎は、呆れたように溜息を吐いた。


「よし、行こう、黒崎!!」


 俺は、黒崎の手をがしっと掴むと、走り出した。


「な、ちょっと待てよ!?」




 ☆




「腹一杯〜〜」


 そう満足げに呟くと、ジュースをズズーッと最後の一滴まで飲み干す。


「太りたいのか、おまえは」


 黒崎は、呆れた顔で見てくる。


 まあ、当然の反応だろう。俺の前には、いくつものハンバーガー、ポテトの包み紙が散らばっている。

 それに比べ、黒崎の前には、小さく四角に折り畳まれたハンバーガーの包み紙しかない。


「まあ、俺は、ゲームするのに頭使ってるからな。それより、おまえの新しい小説、どんな感じなんだ?今、考案中なんだろ?」

「無駄なことに頭使ってんな……」


 黒崎はツッコミつつ、高そうな黒い革のバッグの中から赤いノートとペンを取り出した。


「どんな小説なんだ?」

「まあ、一言で言うと、異世界ファンタジーだな」


 黒崎は説明しながら、手際良くゴミをサッと端に寄せる。


「ふうん……、ちょっと読んでみろよ」

「分かった……、じゃあ、一話目からな」


 黒崎は、ノートの一ページ目を開き、情感たっぷりに読み上げ始めた。


「……『その時だった。俺達の前に、大きな渦が現れた。その渦は、俺等を巻き込み__。』」


 小説の一話目も中盤に差し掛かり、俺がゴクリと唾を飲み込んだ、その時だった。


 __ビュオオオオオオオオオ


 向かい合って座る俺と黒崎の間に、大きな渦が現れた。その渦はだんだんと大きくなって、俺等の眼前に迫ってくる。


「「は?」」


 何だこれ?ここ、都心のファーストフード店の中だぞ?余りのことに、完全に思考が停止する。

 黒崎の方を見ると、目をカッと見開いている。

 何だこれ?これは、まるで_。


 __その渦は俺等を巻き込み__。


 まるで黒崎の小説、そのまんまではないか。

 虹色にゆらめく空間の中で、意識が遠くなっていく。黒崎が、ガクッと前に倒れていくのがぼんやりと見える。


 俺は、意識を失った。

次回は黒崎side。

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