↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/1

1.プロローグ~ちょっと湿度が高いだけ~

バイク描写多くてすいません。

1話はほぼファンタジーではありません。

 バイクカバーを外し、くるくるとまとめ、ベンチの下に押し込める。

バイクを起こして、マンションから少し離れた大通りまで手で押していく。


まだ夜が明けて間もなく、鳥の鳴く声くらいしかしない。

さすがにこの時間にマンションの真下でエンジンかけたら近所迷惑になる。

ルール破ってもマナーは守るのだ俺は。


大通りの路肩にバイクのスタンドを出して止める。

ハンドル下のイグニッションにキーを差し込み、

チョークを引いて、セルを回す。


キュルルルル、、、

キュルルルル、、、

キュルルルル、、ドゥルルルルン!

ダダダダダダダダ!


アクセルをひねって回転数を上げる。

チョークを戻す。


タッタカ、タッタカ、タッタカ、、、


排気量は小さいながら、「ハーレーらしい」小気味よい独特のエンジンの鼓動が聞こえる。

このバイクは、2002年製のXL883R。

たくさんの人が想像する、重厚なアメリカンバイクの「ハーレー」とは違い、

小排気量で高回転エンジンのスポーツに寄ったバイクだ。

とはいっても知らない人にはただのアメリカンタイプのバイクにしか見えない。


外装はピカピカに磨かれ、新車と言ってもおかしくない見た目だが、

15年も前のバイクなので、暖気運転は必要になる。

ガードレールに腰掛け、タバコに火を付け、一服する。

出かける前のこの時間がとても好きだ。

少し肌寒い初夏の空気と、マフラーの焼ける匂い、エンジンの鼓動、タバコの煙が合わさって、気分が高揚してくる。


さて、行くかな。


タバコを携帯灰皿で消して、ヘルメットグローブを装着。

アクセルを捻り、地面を蹴り出す。

行き先は決まってる。いつもの山へ走り出す。



バイクに乗り始めたのは17歳のとき。

高校で出会った友人が、

「一緒に免許取らん?」

と誘ってきたのがきっかけだ。

必死にバイトして中古の250CCのバイクを買って、二人で毎日の様に乗っていた。

二人ともスピードにはさほど興味なく、休みの日には、近くの山へワインディングを楽しみに行っていた。

友人はどんなに雨が降ろうと、バイクに乗りたがる奴で、

「これもう土砂降りじゃんやめようよ」と言っても、

「ちょっと湿度高いだけだからイケる!」と強行する奴だった。


20歳になった頃、友人はハーレーを買った。

「男ならハーレーだろ!色も塗り替えたんだよ!」と自慢気に言っていた。

緑がかった水色のトタン色のタンクのそのバイクは、とても綺麗で、バイクというよりも芸需品の様だった。


21歳になった頃、友人はガンで死んだ。

病院へお見舞いに行ったとき、ガリガリになった友人は、

「もうバイクは乗れんわ。あのハーレー貰ってくれん?俺の代わりにいろんな景色を見せてやりたいんだ。」

「弱気なこと言うんじゃねぇよ!治ったら行けばいいだろ!」

「いや、自分の事は自分が一番わかってんだ。まさかこのセリフ言うとは思わなかった。」

友人は泣きながら笑っていた。

それから数日。友人は死んでしまった。

最後まで、「あのバイクお前に乗ってもらえたら俺は幸せだ」と笑っていた。


そんな昔の事を思い出しながら走ると、道は次第にワインディングになってきた。

もう少し走れば、二人でよく行った峠道に入る所だ。

建設会社に就職し、月曜から土曜日まで馬車馬のように働く俺には、

日帰りで走りに行くにはこの山くらいしか選択肢がない。


国道から横道にそれて幅の狭い道に入る。

決して良いとは言えない路面状況だが、何度も通った道なので、

左右に体を振ってスイスイ登っていく。


あと30分も走れば展望台につくだろうなと思っていると、

休に天気が怪しくなってきた。

空が黒い雲に覆われて、小雨が降ってきている。


天気予報あたらないなぁ。


今日は一日晴れのはずだった。まぁ山の天気は変わりやすいので仕方ない。

よくあることなので別に気にしない。

湿度がちょっと高いだけだ。

カッパもあるし、屋根のあるところまで行こう。


登るにつれて霧が出てきた。

その霧は段々と濃くなっていき、真っ白で何も見えなくなってしまった。

こうなってくるとさすがに危ない。

かろうじて見える数mの視界を頼りに退避スペースを見つけ、バイクを停めた。


バイクから降り、ヘルメットを外した。


真っ白。

ほんとに何も見えない。

地面すら見えない。


まぁ少ししたら晴れるだろ。

タバコを取り出し火をつける。


何気なく進行方向を向くと、人影が見える。

人影はこちらに向かってきているようだ。


あれ・地面すら見えないのにあの人影は何で見えるんだ?

お化け?

いやまさかそんなことはねーだろ。


人影はどんどん近づいてくる。

顔が見えてくる。


あれ?


「やぁやぁ」


ニコニコしながら近づいてくるそいつは、

死んだ友人『樋口 透』そのものだった。


えっ、あれ?、お前お化け???なんでいんの??


大混乱だ。他人のそら似?いや違う絶対あいつだ。

意味が分からない。やぁやぁってなんだよ。

もしかして俺も死んだのか??さっきの霧で事故って、、、


「なんだかびっくりしてるね?この顔に見覚えあるのかな?」

そいつは透の顔でしゃべりかけてくる。


「この場所の記憶を頼りに、顔を作ってみたんだ。

 安心して。君の知ってる人じゃないよ。」

ニコニコしながら話を続けた。


いや、安心なんかできるか!むしろその方が不安だわ!

なんだ顔作るって!だれだよおまえ!

「え、あ、、ちょ、、だ」

声が全然出ていない。


「大丈夫だよ。怪しいもんじゃないから。

 僕は『世界の管理人』まぁ正確には人じゃないけどね。

 そしてここは、さっきまで君のいた世界じゃない。

 いうなれば『世界の狭間』ってところかな。

 そこに君を招待したってわけ!」

楽しそうに友人の顔をした『管理人』は笑っている。


「ちょっと困ったことがあってさ、

 手伝ってほしいことがあるんだよね。

 簡単に説明するからちょっと聞いてくれない?」


いやいやなに、なんなのこれぜんぜんいみわかんない。

いきなり何?管理人?なんであいつの顔なの?なにこれなんなの?

あー夢だこれ。夢だよたぶん。そうにちがいない。

早く覚めないかなぁ。頂上の牧場のソフトクリーム食べて帰るんだ俺は。


「うーんごめんね。これは夢じゃないんだよ。現実に起きてること。

 あぁ現実とはちょっと違うか。

 君の現実の世界は今止めたから、現実ではないかなぁ。

 あとソフトクリームも食べれないよ。

 お願い聞いて、手伝ってくれるまで帰れない仕組みなんだ。

 」

管理人は笑顔のままそう言った。


てことはお願い聞いたら帰れるのか?

どんなお願いかわからないけど、方法がそれしかないなら仕方ないな。


「お、物分かりがいいね!君を選んでよかったよ。

 その手伝いってのはね、、、」


・この世にはにはいくつもの平行世界が存在する。

・その中の一つが世界が壊れるピンチ。

・その世界の住人には力を与えれないから、この世界に人捜しに来た。

・力を与えるからその世界崩壊を防ぐ手伝いをしてほしい。

・具体的には随時誘導するから指示に従ってくれたらいい。

・でもステータスはマックスだから不自由しない。

・これが終わったら何事もなく元に戻すから安心して。


・・・・

なんだそのとんでもない依頼は!

そんなのできるわけ、、、


「拒否はできないのごめん

 とにかくまぁやってみてよ!いい話だと思うよ!」

思考を遮るように管理人は続ける。


拒否したらどうなる?


「うーん、まず、その世界は壊れる。

 それに連鎖してほかの世界も壊れる。

 もちろんこの世界もね。

 このお願いは制約があって、君以外にはお願いできないんだよ。

 僕に任せればうまくいくから大丈夫!」

管理人は自信ありげに胸をたたいた。


それならやるしかないのか、、、

それでどのくらいの時間がかかるの?


「ざっと100年くらいだよ!」


ながっ!


「まぁ君の世界の時間は止めたから一瞬だよ!」


、、、

しょうがない。やるしかないのか。

なんだかわからんが、そういう気分になってきたな。


「はぁよかった!じゃあよろしく頼むね!

 あ、一つだけ君の世界から持っていけるものがあるんだけどなんにする?」


じゃあこのバイクをたのむ。


「おーけー!ただ向こうの世界に燃料とかはないから、動かせるように改造しとくね!

 じゃあ詳しくは向こうの世界で連絡するから、そのまま目を閉じてもらえる?」


素直に目を閉じる。


最後に聞いていいか?

なんで俺だったんだ?


「誰でもよかったんだけど、近くに君しかいなかったからかな!」

管理人は指をパチンと鳴らした。


『そんな理由かよっ!』

暗闇の奥深くに落ちていく感覚を全身で受けながら、

ツッコミがエコーしていった、、、



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。