佐藤さんの話
殴れ餓鬼death
「例えば!」
「うわまた来た」
「佐藤さんが催眠術士なら!」
「それ10分休憩の度にやるの?」
勘弁してほしい。
----------佐藤さんの話----------
「友達が来たのにその冷めた目はないと思うの!」
「大丈夫、友達に対しては冷めた目なんてしないから」
「じゃあ冷めた目しか出来ないね!」
「おまぶっころすぞ」
「そんなことどうでもいいんだよ!」
人のぼっち問題をそんなことって言わないでくれます?
てか、間接的な友達じゃない発言無視されたし。
「佐藤さんが催眠術士かもしれないんだよ!」
「そんなわけないじゃん」
「催眠術なんてまさにロマンなんだよ!」
「会話をしに来たのか独り言ほざきに来たのかどっちなんだよ」
「足して2で割る感じで!」
とりあえず殴られたいのはわかった。
「佐藤さんってこのクラスの奴?」
「そうだよ! この間ハルちゃんに『張山さんって掃除好きだよね~。変わって~』って言ってハルちゃんに掃除押し付けて、クラスで一人掃除をさせてた佐藤さんだよ!」
「なるほどなぁ、この間お前に『丸井さんの天然ってキャラなの~? ちょっと痛くな~い?(笑)』って言ってたあの佐藤か、あとハルちゃんって言うな」
「……」
「……」
お互いの心情は推して知るべしである。
「だってあれを見てよ!」
「指ささない」
「ごめんなさい!」
「で? あれがなに」
見てみればいつもの光景。佐藤さんとその友達4人が仲良く話して……。
「あれ?」
「一人いないんだよ!」
「ホントだ。井崎さんがいない」
いつもは井崎さんを含めて5人でつるんでたのに。今は井崎さんを除いた4人で話してる。
井崎さん今日休みだっけ、って、いるじゃん自分の席に。なんで混ざら……、あ~、なんか察した。
「いつも仲良くしてたのに、ここ数日絶対近寄らないんだよ!」
「あー、まぁ、そういう日もあるんじゃん?」
「なんか教科書が破られたりしてたんだよ!」
はい確定。女子って怖いなぁ。まぁ、私も生物学上はそうだけど。
「だから本人に聞いてみたんだよ!」
「……なにを?」
「何で一緒にいないのかって!」
笑顔で傷口に塩塗りたくるこいつは悪魔か何かだろうか。
「佐藤さんたちに!」
むしろ勇者だった。
「そしたら佐藤さんが『え~、だってさ~、なんかあいつ援交とかしてるっぽいし~、きもいじゃんそんなんさ~』って言ってたんだよ!」
「なに今の佐藤さんの真似なの?」
「うざさを重点的に真似てみたんだよ!」
「大丈夫、うざいのは真似なくても常に感じてるから」
「佐藤さんのうざさは存在してるだけで感じるんだね!」
「いや、けっこう直接的にお前がうざいって言ったんだけどわかってる?」
「でも話はそこで終わらなかったんだよ!」
「うん、こっちの話も終わらないでくれるかなぁ」
相も変わらず自分に都合のいい耳ですね。
「援交してるとこ誰か見たの?って聞いたんだよ!」
「おお」
「そしたら誰も見てないっていうんだよ!」
「おお」
「じゃあ、なんでその話信じるの?って聞いたんだよ!」
「おお」
「そしたら、佐藤さんが言ったからって言ってたんだよ!」
「……おお」
「だから佐藤さんは催眠術士なんだよ!」
「話をはしょんなって前言ったよな私」
「だってだって!」
「だっては?」
「一回!」
「よくできました」
「だって!」
「だって?」
「いじめをするような人の発言なんて一番信用無いじゃん!」
「……」
うん、まぁ、良い得て妙と言えばそうだけども。
てかお前、いじめてるってわかってて、いじめてる本人たちに何でいじめてるのか聞きに行ったのかよ。そっちの方がすげぇわ。
「でも、ほかの3人はそんな佐藤さんの話を信じて一緒にいじめてるんだよ!」
「まぁ、話合わせなきゃ自分が……」
「つまり、佐藤さんは催眠術で他の3人を操ってるんだよ!」
「人の発言遮んな。あとまた飛んだから」
「嫌われるような人なのに信じられてるってことは、催眠術で自分を好きになるようにしてるんだよ!」
「どう見たって、誰も佐藤のこと好きじゃないだろ。取り巻きも含めて」
「……」
「……」
キーンコーン、カーンコーン
「チャイム鳴ったよ」
「また来るね!」
「土に帰れ」
次、移動教室だっけ。




