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例えば!  作者: ゆぅり
2/2

佐藤さんの話

殴れ餓鬼death

「例えば!」


「うわまた来た」


「佐藤さんが催眠術士なら!」


「それ10分休憩の度にやるの?」


勘弁してほしい。





----------佐藤さんの話----------





「友達が来たのにその冷めた目はないと思うの!」


「大丈夫、友達に対しては冷めた目なんてしないから」


「じゃあ冷めた目しか出来ないね!」


「おまぶっころすぞ」


「そんなことどうでもいいんだよ!」


 人のぼっち問題をそんなことって言わないでくれます?

 てか、間接的な友達じゃない発言無視されたし。


「佐藤さんが催眠術士かもしれないんだよ!」


「そんなわけないじゃん」


「催眠術なんてまさにロマンなんだよ!」


「会話をしに来たのか独り言ほざきに来たのかどっちなんだよ」


「足して2で割る感じで!」


 とりあえず殴られたいのはわかった。


「佐藤さんってこのクラスの奴?」


「そうだよ! この間ハルちゃんに『張山さんって掃除好きだよね~。変わって~』って言ってハルちゃんに掃除押し付けて、クラスで一人掃除をさせてた佐藤さんだよ!」


「なるほどなぁ、この間お前に『丸井さんの天然ってキャラなの~? ちょっと痛くな~い?(笑)』って言ってたあの佐藤か、あとハルちゃんって言うな」


「……」


「……」


 お互いの心情は推して知るべしである。


「だってあれを見てよ!」


「指ささない」


「ごめんなさい!」


「で? あれがなに」


 見てみればいつもの光景。佐藤さんとその友達4人が仲良く話して……。


「あれ?」


「一人いないんだよ!」


「ホントだ。井崎さんがいない」


 いつもは井崎さんを含めて5人でつるんでたのに。今は井崎さんを除いた4人で話してる。

 井崎さん今日休みだっけ、って、いるじゃん自分の席に。なんで混ざら……、あ~、なんか察した。


「いつも仲良くしてたのに、ここ数日絶対近寄らないんだよ!」


「あー、まぁ、そういう日もあるんじゃん?」


「なんか教科書が破られたりしてたんだよ!」


 はい確定。女子って怖いなぁ。まぁ、私も生物学上はそうだけど。


「だから本人に聞いてみたんだよ!」


「……なにを?」


「何で一緒にいないのかって!」


 笑顔で傷口に塩塗りたくるこいつは悪魔か何かだろうか。


「佐藤さんたちに!」


 むしろ勇者だった。


「そしたら佐藤さんが『え~、だってさ~、なんかあいつ援交とかしてるっぽいし~、きもいじゃんそんなんさ~』って言ってたんだよ!」


「なに今の佐藤さんの真似なの?」


「うざさを重点的に真似てみたんだよ!」


「大丈夫、うざいのは真似なくても常に感じてるから」


「佐藤さんのうざさは存在してるだけで感じるんだね!」


「いや、けっこう直接的にお前がうざいって言ったんだけどわかってる?」


「でも話はそこで終わらなかったんだよ!」


「うん、こっちの話も終わらないでくれるかなぁ」


 相も変わらず自分に都合のいい耳ですね。


「援交してるとこ誰か見たの?って聞いたんだよ!」


「おお」


「そしたら誰も見てないっていうんだよ!」


「おお」


「じゃあ、なんでその話信じるの?って聞いたんだよ!」


「おお」


「そしたら、佐藤さんが言ったからって言ってたんだよ!」


「……おお」


「だから佐藤さんは催眠術士なんだよ!」


「話をはしょんなって前言ったよな私」


「だってだって!」


「だっては?」


「一回!」


「よくできました」


「だって!」


「だって?」


「いじめをするような人の発言なんて一番信用無いじゃん!」


「……」


 うん、まぁ、良い得て妙と言えばそうだけども。

 てかお前、いじめてるってわかってて、いじめてる本人たちに何でいじめてるのか聞きに行ったのかよ。そっちの方がすげぇわ。


「でも、ほかの3人はそんな佐藤さんの話を信じて一緒にいじめてるんだよ!」


「まぁ、話合わせなきゃ自分が……」


「つまり、佐藤さんは催眠術で他の3人を操ってるんだよ!」


「人の発言遮んな。あとまた飛んだから」


「嫌われるような人なのに信じられてるってことは、催眠術で自分を好きになるようにしてるんだよ!」


「どう見たって、誰も佐藤のこと好きじゃないだろ。取り巻きも含めて」


「……」


「……」


 キーンコーン、カーンコーン


「チャイム鳴ったよ」


「また来るね!」


「土に帰れ」


 次、移動教室だっけ。


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