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私は天才かも!

「うん、筋がいいわねっ。センスない人は初歩でも何時間も何日も掛かっちゃう人もいるくらいなのよ」


『へぇー……。それにしてもこれっていつになったら消えるんですか?』



 どこか感心したようなレイリーさんを横目に水玉を見る。掌に浮かんだままの水玉を上下左右に揺らしたり、形を変えたりしてみる。



「そうねー、作りだした時の魔素の濃さにもよるけどその感じだとまだ消えそうにないわねー」


「サチカ、後どれくらい水玉なら出せそうだ?」



 レイリーさんの言うように、作りだした時はあんまり意識してなかったけど水玉は消えそうにないし。でもなんとなーく、癒されるわーこのプヨプヨ感。遊んでる私にゼットさんが聞いてきたことで考えてみる。あの何かが無くなった感じからすると10回以上はいけそうな気がする。



『うーん、10回は確実にいけそうっす』


「魔素用量も多いようですし、水玉の他にもやってみますか?」


『やりまーす!』


「そうね、魔法にはイメージが大切だから、それが分かっちゃえば水玉と一緒で簡単に出来ちゃうわ。神言と魔法の形を良く見ててね」



 そういうとレイリーさんは様々な魔法を見せてくれた。水剣(ウォーターソード)水弾(ウォーターバレット)水矢(ウォーターアロー)など。単体の場合は初級になるんだけど、これが複数になったり広範囲に影響するものだと中級になったり、魔素の込め具合で変わるらしい。


 それにしても神言って英語じゃん。水のウォーターに作りたい形の物をくっつけた感じだからイメージしやすいな。とりあえずレイリーさんが使った魔法を試してみると出来た。あと何回か出来ると思ってふと他にも出来るかなって軽い気持ちで試してみた。



『水式 水壁(ウォーターウォール)



 縦に2m、横に5mくらいの壁をイメージするとそのまま目の前に現れる。壁だったら堅くなきゃダメだろって意識したら水玉の4回分くらいの魔素が取られた感じがする。若干の倦怠感が生まれて、魔素の残りが少ない。あと水玉なら3回くらいかな。じゃあ、最後にこれで。



『水式 水大砲(ウォーターキャノン)



 水玉3回分の魔素を込めて大きな玉を作って水壁に向かって放つ。バチャン! っていう大きな音と共に壊れたのは水大砲の方だった。やっぱり魔素の込めるのは重要だなぁー、数で勝負か質で勝負かは魔法によって使い分けられるといいし。


 こういうの考えるの好きなんだよねー、図画工作とか美術とか実際に物で作るのは下手くそで、小中高の美術、技術、家庭科の先生にも真面目にやってんのに不真面目に取られ成績悪くされたり、失敗例として紹介されたりしてさ。……全然傷付いてないんだからっ。でも創造性なら褒められるからこの世界の魔法は中々相性いいなぁー。



 腕を組んで考え込んでいたけど、魔法に夢中になってゼットさんたち忘れてた! ゼットさん達を振り返るといつの間にか演習場にいた人たちが集まってて、ゼットさんはちょっと難しそうな顔をしていて、ラリーさんはポカーンとして、レイリーさんは超キラキラした目で私を見てる。え、ちょっと怖いんですけど。


 後ずさってしまった私を逃がさないかのようにレイリーさんが私の手を取り、詰め寄ってくる。



「すっごいわ! 初見でここまで出来ちゃうなんて才能あるっ。最後の水壁や大砲なんて中級レベルよ。ねえ、カードに入ることなんてないわよ、むしろここに、セイフズに入りなさい。ラリーもそう思うでしょ。こんな子、むざむざカードなんかに渡すのっ?」


『わっ、たっ……。ちょっ、レイリーさん。脳が揺れるっ』


「ラリー聞いてるの? ボケっとしてないであんたもサチカちゃんを勧誘しなさい」



 レイリーさん、お願いだから私を見てっ。ラリーさんを見ながら私の手を前後に引っ張ってるの止めて。脳が超揺れてるんっすよ。



「……レイリー、まずはサチカさんを前後に揺らすのを止めてあげてください。それに決めるのはサチカさんですから。でも、私からもぜひセイフズに入団して欲しいです。これは恩返しとかそういうことで考慮するのではなく考えてみてください」


『……うっす、分かりました。でも一応はカードギルドに行ってみます。入って合わないなーと思ったら止めると思いますしね。ゼットさん、私カードギルドに行っていいですか?』




 ゼットさんの前に駆け寄り、見上げる。近くで見てみると難しいと言うよりも何かを考え込んでるようだった。私の目を見て、そっと頭を撫でてくる。



「……あぁ、いいだろう。登録もおそらくすぐに許可がでるだろう。ただし、条件がある」


『条件ですか? 何ですか?』


「登録した後、依頼は俺と受けること。1人では受けない。いいな?」


『え、それってゼットさんもカードになるってことですよね? でもゼットさんってセイフズで……、カードになってもいいんですか?』



 ゼットさんが一緒に依頼を受けてくれると言うならそれよりも心強いことはないけど、ゼットさんはセイフズだからそれっていいの? ゼットさんがラリーさんを見る。ラリーさんはやれやれと言うように頷く。



「サチカさん、ゼット様は正式にセイフズに所属しているわけではないんです。むしろ客分という立場で隊員の指導や仕事を手伝って頂いていたんです。なのでゼット様がカードギルドに入ることは可能ですよ」


「……シュースター、悪いな」


「いいえ、むしろあなたのこれまでの様子を見て、サチカさんの側にいることが何よりだと思いました。ですが、滞在先はサチカさんを含めてこちらにしてもらいますよ」


「すまないな、そうして貰えると助かる」



 ゼットさんが頭を下げたのを見て、私も一緒にラリーさんに頭を下げるとラリーさんは優しく微笑んで、頷いた。というか、私は内心ゼットさんが客分ってことに驚いてた。確かにセイフズの人達にゼット様って呼ばれてるし、ほとんどというかずっと私の傍にいて助けてくれたりしてたから、仕事はしなくていいのかなって疑問に思ってた。客分って立場だったら全部納得する。



 でも新たな疑問も出てきちゃったな。じゃあゼットさんは誰からの客分なのか、どういう身分なのかとかが気になる所だけど何か理由があるんだろう。ま、私なんかが聞いていいのかわかんねーし、ゼットさんが一緒にいてくれるなら何だっていい。



「……昼を食べたら武器屋や防具屋に行き、それからカードギルドに行く。魔素の回復には一定時間の休憩が必要になるが、おそらくカードギルドに行く時には大体は回復してるだろう」


『はい、分かりました』




 一旦、部屋に戻って休んでからお昼を食べて武器屋さんや防具屋さんに向かった。その時にはゼットさんはさっきまでの服装に赤色の胸当てや革の上着を着込んで、あの銀の大剣をかついで私の隣を歩いている。ゼットさんの髪や目に合ってて、めっちゃカッコいい。


 すれ違う人の視線がゼットさんに注がれてて、女の人はうっとりと、男は憧れを込めてる。隣にいる私を見るとなんであんなのが隣に? みたいな目で見られててぶっちゃけ申しわけないわ。



 居心地の悪い視線を受けながらやっとこさ、武器屋に着く。ショーウィンドウから中の様子が見えるけど見たこともないような武器が見えてて、ちょっとテンションが上がる。中に入ると本当にたくさんの武器があった。武器屋に来ても私武器なんて使ったことないんですけど何を選ぶの?



 ゼットさんを見ると銀の刃が分厚い50cmくらいの短刀を手にとってじっと観察してる。



「サチカ、これ持ってみろ」



 その短刀をゼットさんが渡してくる。無言で片手で受け取ると手が急にぐっと下がる。途中でゼットさんが持った手を下から支えてくれたからよかったけど、超この短刀重いんですけど。



『おっも! 両手でも持てるか微妙っすよっ』


「……そうだ、これは重い。刃が厚く、鉄でも切れる代わりに重くなっているから女や力がないものには扱いにくい」



 ひょいっと片手でそれを持ち上げるゼットさんに苦笑いするしかない。その後も剣、弓、杖、斧、鎚などの武器の利点や短所、どういう者が使うのか、使い方はなどを説明して貰った。



「相手の武器を見ることも大切だ。武器を見て、どのような長所、短所があるか、相手がどのように戦うのかを想像してから闘うのとしないのとでは全く違う。分かるか?」


『はい! とっても勉強になります。でも私みたいな武器を使ったことないのはどんな武器がいいんすかね?』


「……直感だ。これだと思ったものでいい、手にとって馴染むようだったらそれにするんだ。サチカは魔法が使えるが、武器を持ってないと魔法が使えるから持ってないんだと判断されて戦いでは不利になる。だから何か武器を持っておく」



 なるほど、確かにそう思うかも。でも何も武器もなしにカードギルドに登録するわけにはいかない何かがあるのかもしれない。ゼットさん、あんまりカードギルドにいい感情持ってないみたいだし。


 そういうことなら手にとって見てみましょうか。ゼットさんに頷いて店を見て回る。さて、私の直感はどんな武器がいいのかね。




想像は力に、力は糧に、糧は生に。

(Imagine the force,the force on food,food ina the raw.)


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