第四話 召喚そうそうエゲツない
[全チュートリアルの終了を確認しました。
以降は項目にて再確認が可能です]
やっと全て終わったか、転送事故のせいでかなり弱体化してしまったみたいだな。
そのぶん自由に行動できるわけだから悪いことばかりじゃないけど。
何分か時間もたって周りもほとんど落ち着いてきた、泣いていたり興奮したりしているが仲のいいメンバーで集まりこれからのことを話しているようだ。
一応ハブられないように俺も適当な集団の端に混ざり、静かにしている。
もともと影が薄いタイプが他の人と関わろうとせず本を読んでばっかりいたので、何をしていようと気にされることはほぼない。
クラスでの印象はいてもいなくてもどうでもいいやつ、もしくは空気といったものだ。
そういえば先生は来ていなかった、転送の年齢制限は共通しているのだろうか。
そうこうしているともやが少しずつ晴れてきた、暗いのは相変わらずだが石で造られた部屋のなかのようだ。
[レジスト、思考誘導魔術]
うおっ…これが状態異常についてのお知らせか、思考誘導とは最初からずいぶんと危険な。
迷宮主として精神魔法耐性が付加されてなかったら序盤でおしまいだった。
魔術とは術式に起こし半自動化した魔法のことらしい、なので魔法耐性は魔術にも有効だ。
かかっていたもやが完全に消え、俺たちを中心として四方に火が灯っいく。
いまだ薄暗いがさっきまでと比べると中の様子がよく見える、自分達がいる場所は祭壇のように見える台の上だ。
見渡すと木製のドアを階段の先に見つけた。
ギイィィィ…
そのドアが今、音をたてて開いていく。
もやが晴れるにつれ騒がしくなっていた周りが一瞬で静かになり、俺を含め全員が視線をドアへ集中させる。
…入って来たのは真っ白でヒラヒラの服を来た若い女性、後ろには剣で武装した男たちが控えている。
いずれも一目で高価だとわかる格好をしていて、身分が高いことが一目でわかる。
召喚された勇者達を召喚者のお姫様とか巫女だとかが迎える、ここだけなら実にテンプレだ。
変わっているところは魔王が紛れていること、と異様なくらいクラスメイトがそいつらに見惚れていることだ。
確かに女性は並外れた容姿を持ち、男たちのなかにも格好いいのがちらほらといる、しかしそれを踏まえてもあまりにもおかしい。
「お待ちしておりました勇者様方。
この度は我が国の召喚に応じていただいたこと、大変嬉しく思います。
勇者様方は異界から来ていると聞きました、わからないこと等おありと思いますが、まずはついてきてくださいませんか?」
女性の言葉に間違いはない、けど謝罪がないということはこちらも任意だと思っているのだろうか?
「……みんな、ここはついていった方がいいと思う。
ここにいてもどうにもならない、ならば従うべきだ」
「そう、だな」「確かに…」「うん」「そうかも」
クラスのリーダーといってもいい桜坂の言葉でついていくと決まってしまった、これもおかしい。
いつも桜坂に反発するやつが何も言わないし桜坂だって伊達にまとめ役をやっていない、こんな状況ならただ相手の言うとおりするのではなく質問などをしたはずだ。
これはやはり先ほどの思考誘導が影響しているのだろう、そうとし考えられない。
思った通りえげつない効果だ…。
「それではこちらにどうぞ」
女性の案内で部屋をでて通路を歩く、その間も周りは喋りもせず女性や騎士達を見つめるだけだ。
念のために俺も同じようにしておく。
そうしていくつかの扉や階段を過ぎると、だんだん内装が豪華になってきた。
そしてここに来るまで見てきたなかでも最も大きく豪華な扉の前で止まった。
「この奥は謁見の間になります、ここで様々な話をさせていただきたいと思います。ではどうぞ」
女性がそういうと騎士達が二人がかりで扉を開く、促されるがまま中に入るとそこは体育館ほどの広さがある豪華な部屋だった。
奥にいくにつれて一段ずつ高くなっていき最上段にはいっそう豪華な椅子がある、今は誰も座っていないが明らかに王が座るものだろう。
「それではあらためまして…
私はこのロナクア王国の王女、フィシエラ・ロナクアといいます。勇者様方、どうかこの国を救ってください。
どうか、どうかお願いします」
そう言うと女性、いや王女は深く頭を下げた。