第三話 舞台の裏側で
何故このタイミングなんだろうか?
しかもこんなにも急に…一刻も早く理由を聞かなければ納得いかんぞ。
拠点としている砦の中を走り指令室を目指す。
周りが戸惑っているが緊急だ、仕方あるまい。
「団長!団員全てを連れ城に戻るとはどういうことですか!」
「もう決まったことだ、とにかく急いで帰る必要がある」
「そんな馬鹿な、今ここを離れて守りはどうするのですか!
あっちも必死、見逃すはずがありません。
それに…」
「言うな。…エリネ?」
「はい、音をかき消す大気の五壁よ"サイレントボックス"…これで問題ありませんわ」
「誰がどこで聞いているかわからんからな。
お前もすこし落ち着け、説明はする」
これはエリネの魔法サイレントボックスか、私も迂闊だったな。
大きな声で機密を漏らすところであった。
「まず一にだな我々の代わりはもう来ている」
「それは…もしかして昨日来た?あれは前線部隊ではなく」
「そのとうり、さらにまだ来る予定だ。
それで本題なのだがな、エリネ、説明を」
「はい、今回の件で最も重要なことはこれが王命であることです」
「なんと!まさか王命とは。
こんな時期にこのような…ますます怪しい、偽装ではないのか?」
「偽装の可能性はほぼないでしょう、内容を見るに罠であることもほぼ確実ですが」
「だが、今の私たちが王命を無視することはできない。
罠であっても行くしかあるまい、ようやく目的達成の糸口も見えてきたところだ」
「わかりました。
それしかないのなら私も全力でことにのぞみます、罠も退けて見せましょう。」
「はっはっはっ、我ら傭兵団の最強が本気を見せるか。
そんなに心配する必要もないぞ、向こうの協力者だって増えてきているのだ。
王も今のところは敵ではない、そう大きなことはできないさ」
「最強なんて言い過ぎです、それにもう傭兵団ではなく王国の一騎士団員にすぎませんよ。
わかっていたこととはいえ、国仕えは大変ですね」
「全く、そのとうりだ。
これからも頼りにさせてもらうぞ、アシュトレト」
・・・・・・・・・・・・・・・
魔方陣の光る広い牢屋のなか、痺れて動くことのない体、倒れ付していく仲間たち、下卑た笑みを浮かべ外からこちらを見る男共。
私はなにもできない…
「貴方だけでも、どうにか…逃げ…て」
「そんな!団長、団長が諦めてどうするのですか!
嘘だ、こんな…ぐぅぅぅ、貴様らぁぁぁぁー!」
「!おお、恐ろしい。
さすがは最強の傭兵、少しとはいえ動けるとは。
だが無駄よ、レベルは下がり続ける。
痺れがとれてもここからは出られまい、いずれは他と同じように精神すらも贄に捧げられ廃人とかすのみ。
あとどれくらい持つのだろうなぁ」
私を傭兵と呼ぶな……今の私は騎士になったのだ!
くっ、とうとう痺れに逆らい、叫ぶこともできなくなったのか。
「そのとうりだ、そうそうに諦めた方がよいぞ。
お前たちは美しい、精神を失い体のみになったら可愛がってやろう。
楽しみにしているといい」
「ワハハハ、目障りな女どもの精神を召喚の生贄にし、見目の麗しい体は残る。
まさに一石二鳥というわけですな」
「ではまた後で会おうではないか、人形となった後でなぁ。
アーハッハッハ!」
このままでは済まさん、なんとしても、なんとしても!