第二話 転送中の確認事項
う、ぐ‥肌寒いなここは。
転移された、ということだろう教室は暖かかった…ならあれも夢ではないのか。
とりあえず周りを確認しないと…っ体が動かない?!まるで空気がコンクリートになったような感じだ。
ぐ…ぅ…力をかければ動かないこともない、か。
少しずつ動かして、どうにか机に伏せっている状態から頭を起こせた。
そうこうしているうちに、寝ぼけていたような意識もはっきりとしてきた。
目だけを動かして周りを見る、どうやら暗いモヤで覆われた部屋のなかのようだ。
かろうじて、もともといた教室の備品の一部とドア、クラスメイトが見えるが誰もが止まっている、他の壁や天井、床はモヤにより確認できない。
そのすべてが時が止まったかのように停止していて、なかには空中で止まっているものすら有る。
クラスメイトはパニック状態に陥っていたようで、逃げ出そうとしたのか多くがドアの近くに密集している。
あれ何か別の意味でパニック……めっちゃ嬉しそうな奴もいる、まぁ気にしないでおこう。
この様子で停止しているとなると転送されるまでにはタイムラグがあったようだ、ドアに手をかけ開けようと必死な様子で停止している者がいることから閉じ込められていたらしい。
鍵は開いているからファンタジー的な効果だろう。
よく見ると全てがまるで密度が低いかのように色が薄い、自分も同じだ。
輪郭もぼやけていて空気に溶けてしまいそうだが、人だけは表面が淡い光に覆われていて堺がはっきり決められている。
その光のおかげでモヤの中でも周りの様子が確認できている、だから人がいない方は全く見えない。
体を動かせずだだじっと見続けていると、あることに気がついた。
淡い光に覆われた内側、要するに人と身につけている衣服は色がだんだんと濃くなり輪郭もはっきりとして行くが、その他の椅子や机、ドアは逆に薄くなって輪郭もぼやけていくみたいだ。
衣服も光からはみ出た部分は同じく薄くなってる、あの表面の光によって転送するものとそうでないものを区別しているのだろうか?
ということは衣服以外は向こうへ行かないのかもしれないな、持っていければ便利なものもあったのだが……
[チュートリアル5:物の保存]
?!声だと、この声はあの俺をスカウトしようとした女性のものか。
相変わらず抑揚のない、合成音声のような特徴的な声だからすぐわかったが…チュートリアル?
["本"には物を保存する機能があります。
対象たりえるのは形が定まっていて、一つと表せるものです。
例、水はそのままでは無理ですがコップに入れた水は可能。
尚、作動時に対象周辺に転位フィールドが形成されますが、保存するには一定以上その場にとどまっている必要があります。
また一定以上の魂を持つものは対象から除害されます。
容量は五十、後から取り消し可能。
使用方法、対象に左手で触れ"インプット"と発音。
注意、保存したものは固定される。
動作確認のために試してみてください]
つまり停止しているものじゃないといけないのか。
しかし保存の意味が気になる、"本"というのもよくわからないし。
!まずい、バックの輪郭がもうだいたい消えてきている。
仕方ない、この声を疑うのはもう面倒だからやめだ。とりあえずは試してみよう。
体は…だいぶ動かせるようになってきた!
状態を起こし、横に置いてある自分のバックに触れる。
「インプット」
するとカバンが消えた。
やはり別の場所に保存されるのか、定番(ゲームに度々登場する無限収納)と同じと見て間違いないな。
「eか~開けてくれー」「にが起きているんだ」「えず、落ち着くんだ!」
止まっていた時が動きだしたかのように急に周りが騒がしくなり、さっきまで止まっていたクラスメイトも動きだした。
同時に消えかけていた物はなくなり、残った物はほぼ普段道理に戻っていた。微かに淡い光だけが残っている。
「なんだこれは!」「ここどこー!」「いったい何が!」
「体が光ってる?!」「異世界転生、きたー!」「なんなのよー」
状況にの説明を求める声があちこちで聞こえる。
異世界転生っておいおい…喜んでた奴か、いくらなんでも叫んじゃあダメだろ。
[対象の保存を確認。チュートリアル5を終了します。
保存した物の扱いはチュートリアル6、です。
……チュートリアル1~4が起動されていません。
起動しますか?]
どうやらこの声は自分にしか聞こえていないようだ、周りが全く反応していない。
しかし1~4、ね…。