第75話 サバゲー大会 トーナメント 準決勝前 嵐の前の静けさ
前回までのあらすじ:
日本代表を育てる為の秘匿クラブチーム
「監獄のクラブチーム」計画
試合を重ねてレベルアップしていく選手達
同年代ユースを圧倒的な力で粉砕
来年には自分たちと同じ目標を持つクラブチームとの戦いを控えて
後輩が入ってくるので面倒を見てほしいと頼まれる元3軍選手 彼我。
自分には無理だと監督に告げるとサバゲーを開催するからそこで優勝すれば
100万円と今回の件が免除されると言われる。
親友の中町チームを破った彼我だったが、最後の光景が頭から離れずただいま葛藤中
彼我たちのチームは中町チームを倒した勢いのまま勝ち進み準決勝へとコマを進めていた。
疲れのピークを感じているのか、椅子に座り顔を天井に向けて疲れたという表情の彼我。
(後2戦勝てば100万が手に入るな)
正直もう来年入ってくる後輩の面倒を見る事はどうでもいい。
優勝賞金100万さえ手に入れば、チームメイトと焼き肉パーティをやろうと考えていた。
10代の自分たちは大抵の事は肉でどうにかなる。
肉汁が滴り、濃厚なタレを絡ませたうまい肉と右手に握られるホカホカの白米。
これだけあれば嫌な気分は吹き飛ぶ。
(ここまで勝ち進んできたが正直、まだ中町の事を引きずっている)
撃ちたくない。撃たないと勝てない。その気持ちのせめぎあいで俺は撃った。
けど中町は引き金を引かなかった。
それを弱さだという奴もいるだろう。
だけど彼我はそうは思わなかった。
逆に撃たなかった事を後悔すると知っていながら引き金を引かなかった中町の強さ。
後悔を抱えながらでも前に進める自信。
(俺には正直そんな心の広さはない。だから撃てた・・・)
彼我は試合の合間の休憩中こんな事ばかり考えていた。
だから試合に負けるわけにはいかない。
撃ったからこそ、勝ち続けないと自分が報われない気がして負ける事が怖かった。
(よく熱血アニメとかで負けた奴の分まで背負って戦うとかいうけど、そんなんじゃないんだ。負けて自分が弱く見られるのが怖い。運よく勝てたとか言われるのが怖い。勝ち続ける事で自分の強さを証明しないと誰も”本物”だと認めてくれない。ただそれが怖い)
勝つ意味。
今まではただ単純に勝ってうれしいだけだった。
そこに後からついてくるものなんて見えていなかった。
負ければ悔しいから次努力して勝てばいい。
そんな気持ちだけだった。
親友と真剣勝負をして背負わされた物の大きさに気が付いた時、手が震えた。
想いではなく”見栄を張り続けられる自信”があるのかと?
まぶたを閉じ自問の真相心理へと深く引きずり込まれそうになった時に、天井の光が暗く変わる。
誰かが自分の顔を覗き込んでいるのだろう。
「疲れたか?」
もう一人の親友の声で目を開ける。
「まぁ多少はな」
「ふむ。そんな軟弱な自主練をしていた覚えはないが、どうやらメニューを改善する必要があるらしいな」
「ぶは!おい!そういう意味じゃねーんだよ!体力的ではなくてだな」
「精神など体力でどうにでもなる。日本には根性という良い言葉があるではないか」
この友人と話をしているといつも一つ上の言い回しで返事されるので疲れる。
「お前こそ疲れてないのかよ?ベニート」
「お前がいるからな」
「はぁ?」
「自分の背中を預けられる信頼できる奴がいる。今までの俺にはなかったものだ。弱くなったのか考えた事もあった。だが弱くても結構。心が喜んでいる。楽しいのだ」
こいつには羞恥心はないのかと、こっちが恥ずかしくなる。
あのベニートが自分をここまで評価してくれている。
確かに中町の件で、背負い込んだ物もある。
しかし、試合をしてきて楽しくなかったのかと言われれば答えはNOだ。
ベニート、倉石と友にチームプレイで勝利をする事に後ろめたさなどない。
連携は創意工夫で段々進化していき、阿吽の呼吸で非常にやりやすい。
充実感が確かにあった。
そうでないと、勝ち進んでなんて来れなかっただろう。
自分のクラブのチームメイトを自慢するわけではないが、サバゲーというゲームなどは関係なくどんな所にいっても負けない心を持つ猛者たちなのだ。
そんな奴らが真剣勝負を仕掛けてきて、ドンパチをやり合う。
心が躍った。
そんな中、あるチームだけは異色を放っていた。
勝利の余韻などなく、ただ勝ち進んできた
梯橋智明というコメンテーターが緊急参戦してきたチーム。
梯橋智明という男から感じるのただただ憎悪。
連携のなければチームワークと言うモノすら感じる事が出来ないプレイスタイルに驚かされる。
毎回、梯橋が勝手に突っ込んでいき自爆したのち、後の2人が彼を狙うプレイヤーをキルしていく。
梯橋自身は全く活躍しておらず、それでも鼻息荒くフーフー言いながらオレガヤッテヤッタとぶつぶつ言っている。
正直よく勝ち上がってこれたなとい印象だった。
そんな戦い方で準決勝まで勝ち上がってきた梯橋チームと、対戦するのは自分たちではなく、このクラブチームの支配人である初日だけ顔を見た事がある塚元チームだった。
塚元チームの印象はまさに自衛隊。
ハンドサイン、無駄のない動き。
塚元自身の圧倒的カリスマ性とリーダーシップ。
誰の目にも明らかに賭けにならない勝負だった。
まぁそんな試合を気にしても仕方がない。
彼我たちが次の試合で当たるのはBチーム監督の武田チームだった。
「この障壁をどうやって突破するか」
ベニートと話をしていて、彼我の心は次の試合に向けて切り替わっていた。
楽しそうにやり取りする2人を柱に隠れてハンカチをかみしめて悔しそうに見つめる倉石。
「くぅ~~~悔しいで!悔しすぎる!ベニートからあんな熱い言葉貰えるなんて。それでもあんま嬉しそうにしてない彼我!貴様にはベニートの隣にいる資格はない!俺もまぜて~~な」
泣きながら2人に駆け寄り倉石が作戦会議に加わる様子を遠目から中町がぼぉーと見ている。
「別にもう敵ってわけじゃないんだ。彼我の所にいきゃーいいじゃねーか?」
中町チームの荒川が声をかけるが反応がない。
「あいつも声をかけられるのを待ってるって」
ぴくぅと少しだけ中町が反応する。
(もう一押しか?)
ずっと試合後から心ここにあらずという感じの中町に荒川は声をかけ続けていた。
面倒ごとだと分かりはしているのだが、どうもこんな状況をほっとけない性分で自分が嫌になる荒川だったが乗りかかった船と尽力を尽くしていた。
「アラカワ大丈夫。ナカマチもうすぐ元気なる」
「どういうことだ?」
もう一人のチームメイトのアルビアルが奇妙な事をいう。
「お、お前まさか予知能力をもっているのか?」
「アラカワはバカなのか?」
「ちょっとしたジョーダンに決まってんだろ?でなんでなんだ?」
アルビアルがウィンクをすると立ち上がり中町の耳にそっと声をかける。
心ここにあらずだった中町の瞳に光がよみがえり、ゆっくりとアルビアルを見る。
頷くアルビアル。
「そ、そうだよね。やっぱりそうだよね!今僕が大輔には必要なはずなんだ!」
中町は急に立ち上がり、彼我の元へと走って行く。
「おい。アル?お前中町にどんな魔法をかけたんだよ」
「チョットしたことさ。彼我のソウルメイトは中町だよっていってあげたんだ。でソウルメイトからの助言は必要だってね」
「はぁ?ソウルメイト??」
「チームメイトの上を行くコトバだよ。意味なんてないんだ。ただキミは彼にとってトクベツだといっただけさ」
「なるほどな。ソウルメイト。つまり魂で結ばれた仲間か。好きとか嫌いとは単純なつながりではなく、家族みてーな切れない関係って事だな」
「まぁそういう意味ではダイスケのソウルメイトは多いんだけどね」
「あいつ人たらしだからな~」
2人が見た先には中町のほかにも何人かで彼我、ベニート、倉石を囲んで激励や作戦を一緒に考えたりなど輪が大きくなっていた。
「やべ!乗り遅れちまった!ってアル?!もういねーし!おいてくなよーー」
お久しぶりです。脩由です。
最近ようやく身体の痛みが薬とマッチして落ち着いてきております。
ただかなり強力な痛み止めのせいで、眠くて仕方ないです。
2018年の投稿はこれで納めたいと思います。
他の2作品も投稿したかったのですが、まだそこまで長時間書けるような状態ではないので
来年度は読者の皆さんに出来るだけ読んでいただける体調管理ができればと思います。
良いお年を。
追伸
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豆腐メンタルではございますが、どんな言葉でも結構です。
柔らかくお言葉を頂けると大変うれしいです。
必ず感想も読ませて頂いておりますのでよろしくお願いいたします。
正直外での仕事が出来そうにない状態なのでYouTuberもやっております。
そちらのほうも見ていただけると嬉しいです。
ぷらすあるふぁーTV
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